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気候変動に耐える農業へ──WAKU、グルタチオン資材で1.8億円を調達

気候変動の影響が加速度的に顕在化するなかで、脱炭素をめぐる議論はもはや一部の環境領域にとどまらず、あらゆる産業の構造そのものを問い直すテーマになりつつある。2050年までにカーボンニュートラルを達成するには、世界全体のクリーンエネルギーへの年間投資額を2030年までに3倍以上に増やし、約4兆ドルにする必要があるとされている。※
こうした背景のもと、世界各国で「気候変動に正面から立ち向かう技術や仕組み=クライメートテック」に挑むスタートアップの存在感が急速に高まっている。エネルギー転換を支える新型蓄電池や再生可能エネルギーの高度制御技術、炭素除去(Carbon Removal)やカーボンクレジットの信頼性を担保するモニタリング技術、気象データとAIを組み合わせたアグリテックやレジリエンスソリューション──その対象領域は拡張を続けている。
日本でも2023年に経済産業省が「クライメートテック・スタートアップ支援策」を本格化させ、脱炭素・グリーントランスフォーメーション(GX)を推進する動きが進んでいる。研究開発から社会実装までを担うスタートアップには、単なる技術力だけでなく、規制や国際ルールに対応する戦略性が求められる局面にある。
本記事では、気候変動の緩和・適応の両面から産業構造を変革しようとするクライメートテック・スタートアップの最前線を追う。
企業HP:https://wakuwakudriven.com/
植物由来の成分「グルタチオン」を活用したバイオスティミュラント(生育促進資材)の開発、製造、販売を手掛けている。グルタチオンは生体内で抗酸化作用を持つ物質として知られ、植物が持つ光合成活性やストレス耐性の向上に寄与する点が注目されている。WAKUのグルタチオン農業資材は、地球温暖化や異常気象の影響による農作物の高温障害や収量減、品質低下といった課題への対応策として開発されている。
2025年7月には、プレシリーズAラウンドにおいて、ANOBAKA、慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)、朝日メディアラボベンチャーズ、ちゅうぎんキャピタルパートナーズ、AgVenture Lab、個人投資家を引受先とした第三者割当増資による、総額1.8億円の資金調達を実施した。
企業HP:https://planetsavers.earth/
大気中から二酸化炭素を直接回収する「DAC(Direct Air Capture)」技術の開発に取り組む。同社が吸着材として採用する「ゼオライト」は、高い吸着性能と再利用性を兼ね備えた環境負荷の少ない素材であり、低コストでのCO2脱離、優れた耐久性、そして高速な合成が可能。CO2排出量の実質ゼロ(カーボンニュートラル)実現に貢献することを目指す。
2025年3月には、脱炭素特化の懸賞型研究開発事業「TOKYO PRIZE Carbon Reduction」で受賞した。
カーボンニュートラル社会の実現を支援するエネルギー・環境テック企業。自社開発のクラウドサービス「booost」により、企業や自治体のGHG排出量の可視化・削減、再エネの最適運用、ESG対応の高度化などを支援する。再エネデータの統合管理や、Scope1〜3の排出量算定にも対応し、脱炭素経営を推進するソリューションを提供している。
2025年8月には、素材・部品・製造工程ごとの精緻なデータをBOM(部品構成表)構造で連携し、グループ連結かつサプライチェーン全体で製品単位の排出量の算定が可能となる「製造業」特化型のソリューション、「booost Manufacturing」を、正式にローンチした。
Web3・ブロックチェーン技術を活用し、日本発で気候変動対策を革新するクライメートテック企業。グローバルなDAO KlimaDAOの技術基盤を用い、国内で初となるJ‑クレジットのトークン化・取引プラットフォーム「KlimaDAO JAPAN MARKET」を開発している。
2024年11月には、みずほFG・オプテージ・PBADAOらと共同で実証実験を開始し、将来的に企業・自治体に加え個人も参加可能な民主化された市場を目指す。
2025年1月には、専門コンサルティング部門「Klima Research Institute」を設立した。これにより、気候金融・ブロックチェーン活用支援も提供する。
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※IEA(国際エネルギー機関)「2050年までにネットゼロ世界のエネルギーセクターのためのロードマップ」
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