MetCom株式会社

次世代の3D測位・航法・時刻(PNT)サービスを手がけるMetCom株式会社は、DRONE FUND、アイティフォー、ゼンリンフューチャーパートナーズを引受先とする総額10億円の資金調達を発表した。今回の調達により、会社設立以降の累計調達額は約22億円となる。
MetComは、地上波方式による次世代3D測位・航法・時刻(PNT)サービスを展開するスタートアップである。独自のMetropolitan Beacon System(MBS)を活用し、従来のGPS・GNSS(衛星測位システム)が適用できない屋内や地下を含む都市全域で、シームレスかつ高精度な3次元位置情報の提供を実現する。GNSSと比較して最大10万倍の信号受信強度を持ち、信頼性、精度、妨害耐性などの観点で国際的な評価も受けている。
現代社会では、位置情報の取得をはじめ、交通・通信・電力・金融・防衛など、あらゆる社会基盤がGPSを含むGNSSに深く依存している。しかし、衛星信号は微弱で、高層ビル街や屋内では受信しにくい上、妨害やなりすまし、太陽フレアといった自然現象による脆弱性も顕在化している。
MetComは、こうした課題の解決に向け、衛星システムを補完・代替し、屋内外を問わずシームレスに利用可能な高信頼の地上波「3D PNTシステム」を、日本で初めて社会インフラとして構築している。JAXAの「みちびき」と連携した検証実績もあり、ドローンやエアモビリティが安全に空を飛び回る世界の実現が加速することも期待されている。
代表取締役CEOは近義起氏。長年モバイル事業に携わり、技術部門をリードしてきた経歴を持つ。創業期の経営参画やCTOとしての経験を活かし、FPGAやスマートアンテナ技術の商用基地局への導入など、業界の技術革新に貢献。短期間で大規模マイクロセルネットワークを構築し、世界初のモバイルデータ無制限定額サービスを実現した実績を持つ。チップセット開発からネットワーク設計、基地局・コアネットワーク開発まで、モバイル技術全般に精通している。
日本におけるPNTインフラは、準天頂衛星システム「みちびき」により支えられており、2025年度までに7機体制の構築、将来に向けて11機体制への拡張計画が進められている(内閣府)。経済産業省によると、PNTを含む宇宙産業全体の市場規模は2020年時点で4兆円に達し、2030年代初頭には8兆円規模への拡大が目標として掲げられている。また、3D計測市場も堅調な成長が見込まれており、2024年には約6億5060万米ドル、2033年には12億460万米ドル規模への到達が予測されている。自動車、航空宇宙、半導体などの分野で技術需要が拡大する中、ドローンや地下空間といった非GNSS環境への対応が産業課題として挙げられる。加えて、国際市場への展開促進や関連技術の小型化・可搬化、市場参入のハードル低下など、業界全体としての変化も進行している。
今回の資金調達は、日本の将来に不可欠となる地上波PNTシステムの構築と、サービス提供の本格運用に向けた準備を進めるために実施された。調達した資金は、地上波基地局ネットワークの建設および運営費用に充当する。今後も資金調達活動を継続し、地上波測位システムとサービスの安定運用開始に向けた基盤強化を進める方針である。









