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大気中からCO2を捕捉、DAC技術で挑むカーボンニュートラルの実現

こんにちは!ケップルが運営するYouTubeチャンネル「スタセン!(スタートアップ潜入チャンネル)」制作チームです。今回は、大気中からCO₂を直接回収する「Direct Air Capture(DAC)」技術を開発するPlanet Savers株式会社を取材しました!
Planet Saversは、大気中から二酸化炭素を直接回収する「DAC(Direct Air Capture)」技術の開発に取り組んでいます。同社が吸着材として採用する「ゼオライト」は、高い吸着性能と再利用性を兼ね備えた環境負荷の少ない素材であり、低コストでのCO₂脱離、優れた耐久性、そして高速な合成が可能です。これにより、CO₂排出量の実質ゼロ(カーボンニュートラル)実現に貢献することを目指しています。
今回の動画では、東京大学アントレプレナーラボ内にある本郷オフィスに伺い、代表取締役CEOの池上 京氏にインタビューしました。同社の開発するDAC技術や今後の展望などについて詳しくお話いいただいています。本記事ではその内容の一部をご紹介します!
――御社が開発されている「DAC技術」とは?
池上氏:私たちが開発しているDAC技術は、「Direct Air Capture(大気中CO₂直接回収技術)」の略で、大気中にわずかに含まれるCO₂を回収し、気候変動の緩和に貢献する技術です。私たちは「ゼオライト」というCO₂を吸着する素材を活用し、DACの社会実装に向けて取り組んでいます。
ゼオライトはその分子構造の中にCO₂が入っていくことで吸着されます。他の吸着剤に「アミン」というものがありますが、「アミン」は化学反応によってCO₂を吸着する仕組みになっています。
一方で、ゼオライトはCO₂をその細かい穴の中に取り込むという、物理的な吸着を特徴としています。化学反応による吸着の場合、取り込んだCO₂を分離するには加熱が必要ですが、ゼオライトの場合はその必要がなく、圧力差で引き抜くことができます。
私たちがこのゼオライトを活用する上での強みは、弊社CSOの伊與木が東大で所属していた研究室にあります。この研究室は、ゼオライトの合成技術において世界のトップ3に入る実力を持っており、例えば金属を導入したり、イオン交換を行ったりすることで、ゼオライトの形状や特性を変えることができます。
これにより、CO₂を吸着しやすい形にしたり、分離しやすくしたり、処理スピードを高めたりすることが可能です。こうした高度な調整ができる研究室は、世界でも限られています。
――回収されたCO₂はどのように処理されるのでしょうか?
CO₂の処理方法には大きく分けて二通りあります。一つは、CO₂を地下に埋めるという方法です。これは、「CCS(Carbon Capture and Storage)」と呼ばれていて、海外では大規模に行われている方法です。
もう一つの方法は、「Carbon Utilization」や「Carbon Recycle」と呼ばれる、CO₂を再利用する手法です。これは、地下に埋めるのとは異なり、CO₂をそのまま有効活用するという方法です。例えば、トマトやイチゴなどを育てる植物工場やハウス栽培では、光合成を促進するために大量のCO₂を使っています。そういった施設で、今まで使われていたCO₂を回収したCO₂で代替していく、という使い方が考えられます。
また、コンクリートを製造する過程でもCO₂を活用する技術があります。CO₂を使って炭酸カルシウムを生成し、それによってセメントの使用量を減らすといった方法です。こういった技術を取り入れてもらうことで、CO₂の有効利用が進みます。
さらに、将来的に非常に重要になってくるのが、CO₂と水素を合成して合成燃料をつくるという技術です。電気自動車の普及ももちろん大事ですが、すべてをEVにするのは現状では難しい面もあります。そうした中で、合成燃料を使うという選択肢も非常に重要になってきます。
――DAC技術開発の進捗状況について教えてください。
会社を立ち上げたのは2023年の7月で、そのときに東大にあるラボサイズ装置を利用し、CO2回収に関するデータを取るところからスタートしました。昨年はスケールアップを進め、1日あたり約10キロのCO₂を回収できる装置の開発を計画し、取り組んできました。
今年は、そこから得られたデータをもとに、本格的に売れるモデルのベースとなるプロトタイプの開発に取り組んでいます。秋ごろを目標に、プロトタイプを完成させ、それを使った実証実験を行う予定です。また、この取り組みは東京都のプロジェクトにも採択されており、東京湾沿いで実証実験を行う予定です。
――今後の展望は。
今後、私たちのDAC技術を日本発の技術として、グローバルに展開していきたいと考えています。今年はまず、プロトタイプをしっかりと完成させ、来年から再来年にかけて商用レベルのデモンストレーションが可能なモデルの開発を進めていく予定です。
その先は、2030年に向けてコストを抑えながら社会実装が可能なモデルを構築し、大量生産につなげていくことを目指しています。さらに、大規模なプラントを作ることも視野に入れています。
それに向けて、今年、来年はチーム体制の拡充を図り、研究開発や事業開発の両面で取り組みを加速させていきます。私たちと一緒に挑戦してくださる方を、ビジネスサイドもエンジニア、サイエンティストも全方位で募集しています。少しでもご関心をお持ちいただけましたら、ぜひご応募いただけると嬉しいです。
動画内ではインタビュアーであるケップル若手メンバーの「スタートアップハンターBob」が、東京湾で行われた同社の実証実験現場を取材!実験実施の背景やお仕事の面白みなどについてサイエンティストの方々にもお話をお伺いしました!ぜひ動画でご視聴ください!
「スタセン!」次回は注目のアグリテック企業を取材します!ぜひお楽しみに!
Writer
「スタセン!」制作チーム
ケップルが運営するYouTubeチャンネル「スタセン!(スタートアップ潜入チャンネル)」制作チーム。注目スタートアップ企業に潜入取材し、その開発技術やサービス、企業の魅力を紹介する。
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