廃棄・放散される未利用エネルギー
工場排熱、地下鉄や地下街の冷暖房排熱、地面の振動、潮流の変動など、使われていないがそこにあるエネルギーを未利用エネルギーという。そして、ここから電力を得ようとする研究や試みが各地で行われている。
このような未利用エネルギーで発電を行うには、振動や熱、光、風、電磁波などを電力に変換するエネルギーハーベスティング技術が必要となる。エネルギーハーベスティング技術とは、周囲の環境から微小なエネルギーを収集し電力に変換する技術で、「環境発電技術」とも呼ばれている。現状では、大きな電力を未利用エネルギーで生み出すことは難しく、小型デバイスの電力源に利用されている例が多い。しかしながらIoTや環境技術の発展とともに着実にその市場規模は拡大している。
2023年のエネルギーハーベスティング技術を搭載したデバイスの世界市場規模は、出荷数量ベースで約13億742万5000台に達したと推計されている。さらに2032年には、約153億4240万台にものぼると予測されている※。特に乾電池やバッテリーといった従来の一次電池を置き換える新たな選択肢として注目を集めている。
今回はそんな未利用エネルギーを活用しているスタートアップ企業を4社紹介する。
スタートアップ4選
株式会社OPTMASS
企業HP:https://optmass.jp/
太陽光の44%を占める赤外光から発電する「透明太陽電池」の販売を行う京都大学発のスタートアップ。透明太陽電池はガラスのような構造を持ち、窓ガラスとして活用することで、景観や採光を損なわずに設置できる。また、インクやコーティング、フィルムへの応用ができる無色透明に近い熱線遮蔽ナノ粒子も開発している。
2024年5月には、日本政策金融公庫(略称:日本公庫)、京都信用金庫、京都中央信用金庫及び、京都信用保証協会の協調融資により6000万円の資金調達を実施した。
仙台スマートマシーンズ株式会社
企業HP:http://www.ssmcoltd.co.jp/
圧電材料を使ったマイクロ発電デバイスの開発などを行う。振動によって発電した電力を利用することによって、電力や配線を全く使わないデバイス動作を可能にする。
実例として、道路状況のモニタリング等に利用されており、自動車のサスペンションに設置することで路面状況や保守点検の判断を行うことができる。電力や配線を必要としない強みを活かして、地震による建造物の損傷検知やタイヤ内センサへの展開などを目指している。
株式会社モッタイナイ・エナジー
企業HP:http://mottainai-energy.com/
熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換する熱電発電に関する横断的な製品販売を行う。産業技術総合研究所の熱電変換グループの成果を基盤として事業を展開している。
低コスト熱電変換材料、高効率熱電変換モジュール、拡張性の高い低コスト熱電発電ユニット、高精度の評価装置の販売などを通じて、熱電設備全体への部品供給を実現し、熱電発電の市場創出を掲げる。
Alchemist Material株式会社
企業HP:https://www.alchemist-material.com/
プラスチックや木材、ダンボールなどの廃棄物を水素エネルギーに変換する水素製造装置の開発を行う。同社の装置で作られた水素は、発電や水素ステーションで現地利用され、輸送コストを抑えている。また、物流のリサイクルデータを蓄積することで、ゴミクレジットやリサイクル証明の発行を支援している。
2022年12月にレオス・キャピタルパートナーズを引受先とした資金調達を実施した。
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※矢野経済研究所 「エネルギーハーベスティングデバイス世界市場に関する調査を実施(2024年)