海上インフラの次世代制御に挑む──Oceanic ConstellationsがA2ラウンドで12億円を調達


小型SAR衛星コンステレーションを展開するICEYE Japan株式会社は、General Catalystをリード投資家とし、A.P. Moller Holding(デンマーク)、Bpifrance(フランス)、Vinci(BGK Group)、RIO 2 ASI(ポーランド)、Solidium、Ilmarinen、European Tech Collective、Keva、Lifeline Ventures、Tesi、Varma Mutual Pension Insurance Company、Peter Sarlin(いずれもフィンランド)を引受先とするシリーズEラウンドで、1.5億ユーロの新たな資金調達に加え、5000万ユーロのセカンダリー取引を完了したと発表した。
ICEYEはフィンランドを拠点とする、合成開口レーダー(SAR)技術を用いた小型衛星のーディングカンパニー。同社は2014年に創業し、SAR(合成開口レーダー)衛星コンステレーションを運用。昼夜・天候を問わず地表の変化を把握できるリアルタイム性の高い客観データを提供している。SARは雲・煙・暗闇を透過して観測できるため、防衛・情報、セキュリティ、災害対応・復興、保険、海事監視、金融など、多様な分野で迅速な意思決定を支える継続的モニタリングを可能にする。
第4世代プラットフォームにより、高水準の16cm解像度の商用SAR画像を提供。衛星機能を地上からソフトウェア更新で追加できる「ソフトウェア型衛星」への移行も進めている。また、欧州および同盟国向けに主権型システムの構築実績を持ち、これまでにポーランド軍、ポルトガル空軍、オランダ空軍、ギリシャ国家宇宙プログラム、フィンランド国防軍などと契約を締結。NATO Allied Command OperationsともSARデータ提供契約を結んでいる。
これまでに62基の衛星を打ち上げており、来年からは週1基ペースの量産体制を整備する計画だ。
また、独自の「Scan Wide」「Detect & Classify」などの新サービスも展開し、日・欧を含む複数国の主権的宇宙インフラ構築に寄与している。
CEOはラファル・モドジェフスキ氏。モドジェフスキ氏は2012年にペッカ・ラウリラとともにプロジェクトとしてICEYEを立ち上げ、2014年に会社として共同創業した。合成開口レーダー(SAR)エンジニアリングの深い専門性を背景に、ICEYEの事業成長と、野心的なビジョンの実現を牽引している。
ラファル・モドジェフスキ氏は、「今回の資金調達により、当社の世界最先端SAR衛星コンステレーションの拡充、次世代センシング能力の強化、そしてリスク把握と迅速な対応を支えるデータインテリジェンスサービスへの投資をさらに進めていくことが可能になります。欧州諸国やその同盟国にとって、宇宙インテリジェンスをより主体的にコントロールできるようになること、そして産業規模で提供できるパートナーを得ることを意味します」とコメントしている。(一部抜粋)
合成開口レーダー(SAR)衛星市場は、地球観測、防衛、安全保障、災害対応など幅広い分野を対象に着実な成長基調を示している。Fortune Business Insightsの調査によれば、世界のSAR画像市場規模は2025年に15億8970万米ドル、2032年には27億9930万米ドルに拡大する見通しであり、この期間において安定した成長率が続くとみられる。主要な事業者としてICEYEやMaxar Technologiesが挙げられ、広域かつ高解像度のデータ提供能力向上をめぐり競争が激化している。特に防衛用途を中心とした需要増加が市場全体を下支えしており、民間部門でも活用範囲の拡大が進行中である。また、クラウドプラットフォームの普及や衛星運用コストの低下によってデータ流通が容易になり、新規参入やプレーヤーの多様化も進んでいる。北米をはじめとする主要地域では依然として高い需要が維持されており、アジア太平洋や欧州市場でも衛星関連投資への関心が強まっている。
今回調達した資金は、各国の主権衛星システムおよびデータインテリジェンスサービスの展開の加速に活用される。今後は週1基ペースで衛星量産体制を構築し、前例のない速度と規模で同盟国の宇宙能力強化を図る意向を示している。
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