CrestecBio株式会社

脳と臓器を護る高分子医薬の創薬を目指すCrestecBio株式会社は、リアルテックファンド4号投資事業有限責任組合を引受先とするシードラウンド1st closeで、総額1.5億円の第三者割当増資による資金調達を実施した。
CrestecBioは筑波大学発の創薬スタートアップで、高分子医薬品※を用いた神経保護薬および臓器保護薬の研究・開発を行っている。主力の開発品は、粒径20〜30nmのミセル構造を持つ高分子薬剤「CTB211」であり、活性酸素種の除去作用を生かし、急性期脳卒中治療や臓器移植時の再灌流障害に伴う神経・組織損傷の抑制を目指している。筑波大学での学術知見と高分子製剤技術を基盤とし、希少・難治疾患も視野に入れたパイプライン拡充に取り組む。また、非臨床試験段階ながら今後臨床試験入りを目指して開発を推進中である。
脳卒中は、日本で年間約30万人、アメリカで年間約80万人が発症するとされ、日本では死因の第3位、世界では第2位となる重大な疾患である。特に虚血性脳卒中に対する再開通治療(血栓回収療法)は、2015年以降急速に普及し、高い治療効果が示されている。
しかし、この治療を受けても50%以上の患者が要支援・要介護、寝たきり、あるいは死亡に至るなど、依然として転帰不良が大きな課題として残る。主因とされるのが、再開通後に発生する活性酸素種(ROS)による脳虚血再灌流障害で、脳梗塞・脳浮腫の増悪や頭蓋内出血を引き起こすにもかかわらず、現時点で有効性が認められた国の承認薬は存在しない。
こうした背景のもと、CTB211は、ROSを消去することで神経細胞の保護効果が期待されている。非臨床試験においても、その有効性が確認されている。
代表取締役CEOは丸島愛樹氏。救急・脳神経外科領域で臨床経験を積み、ドイツ帰国後、虚血性脳卒中による再灌流障害の研究開発に従事。筑波大学医学医療系で准教授も務めている。東京大学IPC第5回1st Round、つくばStartup Incubation Program 2021など、複数の起業家育成プログラムにおいて事業計画を策定し、2021年12月にCrestecBioを創業した。
バイオ医薬品分野は近年、世界市場において引き続き高成長を示している。特に2024年時点の世界市場規模は約422.5億米ドルとされ、2034年には921.5億米ドルへ達すると予測している(Global Market Insighs)。経済産業省の資料によれば2019年から2026年にかけてバイオ医薬品の年平均成長率は9.6%と報告されており、従来型医薬品を大きく上回る伸長が見込まれる。国内市場においてもバイオ医薬品の存在感は増しており、抗体医薬品、核酸医薬、細胞治療・遺伝子治療などの先端領域で新規モダリティの市場形成が進む様相にある。特に核酸医薬の分野では、2021年の約30億ドル市場が2028年に約230億ドルへ拡大するというJST(科学技術振興機構)による予測も示されている。一方、バイオ医薬品産業の競争力強化や供給リスク対応の観点から、CMO/CDMO等の製造基盤拡充は依然として重要な課題であり、国内製造体制や人材育成などの支援策が政策的にも継続されている。
CrestecBioは、今回調達した資金を主に、同社が注力する虚血性脳卒中向け神経保護薬「CTB211」の臨床試験開始に向けた非臨床試験、および治験薬製造準備など事業開発パイプラインの加速に充当する方針である。今後もシードラウンド2nd closeによる追加資金調達を2026年3月末までに予定し、パイプライン拡大および幅広い疾患領域への応用探索も実施する計画である。
※高分子医薬:ミセルを形成することにより粒子様の形態をとる高分子ポリマーによる医薬品。ポリマーの持つミセル形成能によって10〜100nmの粒子となることで、血中滞留性、組織滞留性、安全性が向上し、効率よく活性酸素種(ROS)を除去する。さらには化学構造の工夫により特定の臓器や細胞へのターゲティングも可能となる。









