目次
はじめに
2023年は新型コロナウイルス対策の規制が解かれ、多くのスタートアップイベントが活気を取り戻した一年だった。数年ぶりにリアル開催を実施するイベントも多く見受けられた。
全国各地で開催されたピッチコンテストは、多様なスタートアップが注目を浴びる機会となった。参加者たちは革新的なビジネスアイデアを競い合い、日本のスタートアップシーンにおいて多様性と創造性が重視される一年となったのではないだろうか。
今回は、2023年のピッチコンテストで優勝したスタートアップを10社取り上げる。
スタートアップ10選
株式会社ALGO ARTIS
「Startup CTO of the year2023」にて優勝。
AIを活用した運用計画の自動最適化ソリューション「Optium」を提供する。Optiumは、生産や配船などの複雑な運用計画に特化した計画最適化ソリューションだ。独自のAIにより自動で最適化することで、収益改善やCO2排出量の削減、計画作成における属人化の解消を実現する。同社は、世界的コンテストでの実績を持つアルゴリズムエンジニアのチームを強みに、現場の運用や課題に対して柔軟に対応することで、複雑な条件を考慮した計画を数分で作成するソリューションを提供する。
2023年9月には、UTEC、みやこキャピタル、ココナラスキルパートナーズ、Sony Innovation Fund、多田尚弘 氏、DIMENSION、横河デジタル等を引受先とした第三者割当増資と、商工組合中央金庫、日本政策金融公庫等を借入先とした融資による合計約6.9億円の資金調達を実施した。
株式会社Magic Shields
「GET IN THE RING OSAKA 2023 - Health Tech - ヘビー級」にて優勝。
高齢者の転倒による骨折を減らす、転んだ時に柔らかい床「ころやわ」を販売する。ころやわは、医療機関や介護施設内における転倒による骨折リスクを軽減する、転んだときに柔らかい床だ。普段の歩行時は硬く安定し、転倒した時には床が柔らかくなることで、転倒しても怪我をしないことをコンセプトとしている。
2023年5月には、Carbide Ventures、ディープコアを引受先とした第三者割当増資による、2.3億円の資金調達を実施した。
株式会社Sportip
「B Dash Camp 2023 Fall in Fukuoka」にて優勝。
ジム・接骨院・病院の指導者向けのアプリ「Sportip Pro」を提供する、筑波大学発のベンチャー企業。 Sportip Proは、ジムや整骨院などのアセスメントをAIで効率化・高度化することで売上アップ・コストカットを支援するAIアプリ。スマートフォン・タブレットで撮影するだけで個人の身体の歪みや部位の問題点・将来のリスクが分かり、対策の提案まで1秒で提案する。
2020年には、MV1号投資事業有限責任組合、ディープコア、Deportare Partnersを引受先とした第三者割当増資による、数千万円の資金調達を実施した。
アイリス株式会社
「スタートアップワールドカップ2023」にて優勝。
病院や医師向けの人工知能技術(AI)関連医療機器を開発している。インフルエンザを感染初期から高い確度で判定できるシステムは、内視鏡型のカメラで喉の奥を撮影し、AIで画像を解析することで、兆候を判断する。日々の診断で蓄積されたデータを活用し、将来の研究を通じてAIの性能を向上させ、より多くの病気の判定ができることを目指す。創業者の沖山翔氏は2010年に東京大学医学部を卒業後、救命救急医、医療ベンチャーのメドレーを経てアイリスを創業した。
2024年1月には、JSR Active Innovation Fundを引受先とした第三者割当による資金調達を実施した。
企業HP:https://aillis.jp/
Global Vascular株式会社
「Cross Point Venture Pitch 2023」にて優勝。
下肢虚血治療に関する高度管理医療機器「下肢閉塞性動脈疾患用ステントデリバリーシステム」の開発を行う。動脈硬化に伴う血管の閉塞や狭小化などで虚血となり、足の痛みや足が腐ってしまう病態を治療するため、ステントの膝下領域への実用化を中心とした研究開発を行っている。 ステントとは、血管を内側から広げて固定する金属の筒状の医療機器のこと。
2023年12月にはシリーズAラウンドにて、第三者割当増資による11.7億円の資金調達を実施した。
株式会社NearMe
「Japan Mobility Show 2023ピッチコンテスト&アワード」にて優勝。
独自のAIを活用した最適なルーティングで、出発地から目的地までの移動をドアツードアで結ぶタクシーのシェアサービス を提供している。同じ方向に行きたい人を見つけ相乗りできるサービスで、お得に乗車することができる。 自宅やホテルと全国の空港をつなぐ送迎シャトルサービス「NearMe Airpot」や定額の貸切ハイヤー・タクシーの「NearMe Limo」がある。
2023年3月には、シリーズBラウンドにて第一生命保険、大林組、三井不動産などを引受先とした第三者割当増資および、株式会社日本政策金融公庫からの借入により、約7億円の資金調達を実施した。
企業HP:https://nearme.jp/
iSurgery株式会社
「Healthcare Startup Pitch Competition」にて優勝。
胸部X線写真から骨密度を推測するAI医療機器を開発している。健康診断などで撮影する機会が多い胸部レントゲン画像を使って、AIによる骨密度の計算、骨粗しょう症リスクの判定を行うプロダクトである。これにより、患者側は骨粗しょう症の早期発見が可能となり、病院側は高額な検査装置が不要になる、などのメリットがある。
2022年9月には、ディープコア、STATION Ai、STATION Ai Central Japan 1号ファンドを引受先とした第三者割当増資による8000万円の資金調達を実施した。2024年1月には、ライフサイエンス領域の画像解析に強みを持つエルピクセルと販売提携をした。
EF Polymer株式会社
「Farmnote Summit 2023」にて優勝。
果物の皮や搾りかすなどの廃棄物の作物残渣から農業資材の有機ポリマー「EFポリマー」の開発・販売を行う。 EFポリマーは、果物の皮などの作物の食べられない部分が原料であり、自重の約50倍の吸水性を持つ。農業において、土に混ぜると土壌の水分の吸収力が上がり、保水力が高まることで収穫量アップにつながるという。また、本来廃棄される原料を使うことで、廃棄の過程で排出されるCO2削減になる。「粉末タイプ」と「粒状タイプ」を取り揃える。
2024年1月には、沖縄県の企業約50社と合同で、ウクライナの生産者に対する支援を実施した。
株式会社ドライバーテクノロジーズ
「LAUNCHPAD SEED 2023 Winter」にて優勝。
物流業界における配送案件と配送リソースに関するマッチングプラットフォーム「Logee! for ECMall」などを運営する。 Logee! for ECMallは、衣料品や日用品などを中心とした特化型ECモールと、同社の持つ運送会社・倉庫会社とのネットワークのマッチングプラットフォームだ。 同社は、アスクル株式会社や株式会社一休などをグループ会社に持つZホールディングス株式会社傘下のZ Venture Capital株式会社のグループ会社である。
2023年11月には、第三者割当増資による約1億円の資金調達を実施した。
アイラト株式会社
「StartupGo!Go! x 10th The Pitch」にて優勝。
AIで放射線治療を支援する、「AIVOT(アイボット)」を開発。治療計画を作成する際に、従来は人が行っていた作業をAIで代替することで、現場の負担を軽減することができる。がんの三大治療法の一つである放射線治療は、患者負担が極めて少なく超高齢化社会のがん治療法として重要性がますます高まっている。同サービスは、腫瘍や正常組織の輪郭抽出、治療計画立案、安全性検証を全自動で行い、従来6時間かかっていた業務時間を20分に短縮し、放射線治療計画を提供する。
2024年2月には、シードラウンドにてCentral Japan Seed Fund、九州オープンイノベーション2号投資事業有限責任組合、Midvillageを引受先とした第三者割当増資による、8000万円の資金調達を実施した。
2024年5月には、肺がんの定位放射線治療を世界的にリードする山梨大学医学部附属病院放射線治療科と共同で、肺がん定位放射線治療計画用AIの開発・臨床的有用性の検証を開始した。
企業HP:https://airato.jp/