Patentix株式会社

スタートアップ Patentix株式会社は、シリーズAラウンドで総額約7億1900万円の資金調達を実施し、調達後の累計資金は10億5900万円となった。
本ラウンドには、Abies Ventures Fund II投資事業有限責任組合、東レインターナショナル、稲畑産業、NextG投資事業有限責任組合(KSP)、アイシン、木村商事、京信イノベーションC3号投資事業有限責任組合モバイル・インターネットキャピタル、デンソー、三菱電機などが参加した。
今回調達した資金は、研究開発の加速、製造およびサンプル出荷体制の強化、人材採用、市場展開に活用される予定である。
Patentixは2022年12月、立命館大学発のスタートアップとして設立された。事業の中心は、二酸化ゲルマニウム(GeO2)を用いた次世代パワー半導体の研究開発・製造・販売である。二酸化ゲルマニウムは超ワイドバンドギャップ(UWBG)半導体材料の一つとして注目されており、低損失化・高耐圧化・小型化に寄与する可能性がある。
同社は2023年、立命館大学の研究成果を基にSiC基板上へのルチル型GeO2薄膜の形成に成功し、さらに翌年にはショットキーバリアダイオード(SBD)の動作を確認したと発表している。こうした技術成果をもとに、日電精密工業と協力し、有償サンプルの製造・出荷体制の構築を進めている。
代表取締役社長の衣斐豊祐氏は、岩谷国際特許事務所や佐川急便(SGホールディングス転籍)で特許・商標業務に従事。京都大学発FLOSFIA、東京大学発Gaianixxを経て、2022年12月に立命館大学発ベンチャーPatentixの社長に就任。同大学客員教授も務める。衣斐氏は、「今回得た資金を元に、開発スピードと事業展開をトップギアに入れ、GeO2パワー半導体の実用化を一気に進めます。」と述べている。(一部抜粋)
EV普及やAIデータセンターの電力需要増大、CO2削減ニーズやエネルギーコスト上昇への対応、小型電源装置の需要拡大を背景に、UWBG半導体の実用化が期待されている。中でもGeO₂半導体は、p型・n型の両立やコスト競争力に強みを持ち、近年注目を集めている。
Patentixは2022年12月の創業以来、GeO2半導体の社会実装に向けた研究を進め、n型ドーピングの確認やショットキーバリアダイオードの実証などの成果を報告してきた。今回のシリーズA調達を機に、研究開発・製造・社会実装の体制を整え、GeO2パワー半導体を実用化フェーズへ移行。電力・車載から宇宙用途まで幅広い市場で競争力を持つ製品提供を目指すとしている。
パワー半導体は、電力制御や変換を担う重要部品であり、家電、自動車、産業機器、送配電網、データセンターなど幅広い分野で利用されている。シリコン(Si)に加え、SiCやGaNなどの材料が普及しつつある中、PatentixはGeO2という新材料による国産スタートアップ発の技術革新を世界市場に打ち出していく構えだ。