株式会社UMIAILE

こんにちは!ケップルが運営するYouTubeチャンネル「スタセン!(スタートアップ潜入チャンネル)」制作チームです。今回は、自律航行する小型無人ボート『UMIAILE ASV』を用いて、海洋データの観測・分析に取り組む株式会社UMIAILEを取材しました!
Honda発のスタートアップが挑む、海洋観測の革新
UMIAILEは、Hondaの新事業創出プログラム「IGNITION」から生まれたスタートアップです。小型無人ボート「UMIAILE ASV」を開発し、独自の自律型小型モビリティを群で運用することで、リアルタイムかつ高密度なデータ収集をしています。地殻変動観測、環境アセスメント、安全保障に加え、洋上風力発電の事前調査や漁業支援など、民間分野への活用も目指しています。

今回の動画では、墨田区にある同社オフィスに伺い、代表取締役CEOの板井 亮佑氏にインタビューしました。同社の開発する技術の強みや今後の展望などについて詳しくお話いただきました。本記事ではその内容の一部をご紹介します!
海を「見える化」する——UMIAILEのASV
――事業概要について教えてください。
板井氏:私たちは「海の見える化」を掲げ、海洋ロボットの開発を行っています。現在はASV(小型無人ボート)の研究開発を進めており、海洋観測の無人化を目指しています。
漁業や防災・減災、安全保障など、これまで有人で行ってきた海上業務を無人化することで、より効率的な観測を可能にしていきたいと考えています。

――開発プロダクトの活用方法は?
特に今力を入れているのは防災分野で、取り組みは大きく2つあります。1つは、大地震に備えて海底地殻変動を観測し、地震の発生メカニズムの解明や予測精度の向上につなげること。もう1つは激甚化する台風への対応で、発生過程や進路予測の精度向上に寄与するための基礎データの観測です。
また、安全保障の観点では、近年高まっている他国の脅威に対して、どのように海域の安全を守るかという点で、我々の技術が貢献できるのではないかと考えています。
漁業に関しては「漁群探知」的な使い方が主になります。実はこの無人ボートを使った事業を最初に考えたときから、漁業分野での活用は取り組みたかったことのひとつです。
今の日本の漁業では、「昔はよく獲れていた魚が獲れなくなっている」という変化が起きています。そうした中で、漁師さんが船を出しても魚が見つからず、そのまま空振りで帰ってくるという課題があると聞いています。
無人ボートを先に出して、「どこにどのような魚がいるか」を事前に把握できれば、狙いを定めて漁に出られます。そうすることで、効率化や燃料・人手の最適化にもつながるのではないかと考えています。
「高度0mの人工衛星」をつくる──海から地球規模の課題解決へ挑む
――創業の背景を教えてください。
創業メンバーは私を含め、全員Honda出身です。Hondaには「新規事業創出プログラムIGNITION」という制度があり、特徴的なのは社内で事業を立ち上げるのではなく、Hondaの外でスタートアップとして独立させる仕組みになっている点です。
私自身、Honda在籍時にこのアイデアを持ち込み、社内の厳しい審査を経て、今年の1月にHonda発のスタートアップとして創業しました。
Hondaでは、車やバイク、船外機、芝刈り機、耕運機といった多様なモビリティを扱うほか、近年はロケットやジェット機などにも取り組んでいます。私はその中で、約10年間ロボット関連の設計に携わってきました。量産開発の経験は少ないですが、次の量産につながる研究開発に注力してきたことが、現在の事業づくりのベースになっています。
――開発技術の強みとは?
強みのひとつは「サイズ感」です。部屋の中では大きく見えるかもしれませんが、全長は約3メートルで、船舶と比べると非常に小型です。海に浮かべると、豆粒のように小さく見えるサイズです。この小型化には大きな利点があります。数を作りやすく、現場での運用もしやすいです。複数台を効率的に展開できる点で、オペレーション上も優れています。
さらに、船体の構造にも工夫があります。長時間海上にとどまることを想定し、軽量で沈みにくい構造を実現するために、船体のコア材には発泡材を採用しています。何かあった場合でも沈まないよう、安全面にも配慮した設計です。
一方で、小型ゆえにスピードが出にくいという課題もあります。そこで私たちは、水中翼を採用しています。水中にある翼の揚力で船体を持ち上げ、水の抵抗を減らして推進効率を高める仕組みです。
もう一つの特徴は、天面に搭載したソーラーパネルです。太陽光を電力に変えてプロペラを動かすことで、観測や移動に必要なエネルギーをすべて自給自足できる設計を目指しています。最終的には、一度海に出たら数ヶ月間連続で活動ができるようなシステムを目指して開発しています。

――今後、どのように技術開発を進めていくのでしょうか?
この小型で無人という特長を活かして、最大の強みは「数をたくさん出せること」だと考えています。私たちはこれを「高度0mの人工衛星をつくる」と表現しており、将来的には、宇宙の軌道上に多数の人工衛星が存在するのと同じように、海面上にも無人のプラットフォームが当たり前に存在している状態を目指しています。
そして、それぞれが単体ではなく複数で連携しながら、これまで見えなかった“海の中の世界”を見える化していく。これが私たちの描く将来像です。その実現に向けては、一機をつくる技術だけでなく、いかに効率的に量産できるかが非常に重要なポイントだと考えています。現在はまさに、その量産体制の構築に向けた技術開発に取り組んでいるところです。
さらに、UMIAILEのASVによる海の見える化を通じて、たとえば地震による被害を事前に察知し、被災者を1人でも減らすことができたらと思っています。また、漁業の効率化で食料問題の改善に寄与し、安全保障の観点では平和な世界を実現する。こうした地球規模の社会課題の解決につなげていきたいと考えています。

動画では採用情報についてもメッセージをご紹介!
同社は、現在積極的に採用活動を行っているということで、代表の板井氏より最後に採用に関するメッセージも伺っています。ぜひ動画でご視聴ください!(動画ページはこちら)
「スタセン!」では今後も注目スタートアップを取材していきます。次回もぜひお楽しみに!
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「スタセン!」制作チーム
「スタセン!」制作チーム
ケップルが運営するYouTubeチャンネル「スタセン!(スタートアップ潜入チャンネル)」制作チーム。注目スタートアップ企業に潜入取材し、その開発技術やサービス、企業の魅力を紹介する。









