ゼオライト触媒技術開発のiPEACE223、約3億円を調達──バイオプロピレン実用化加速

ゼオライト触媒技術開発のiPEACE223、約3億円を調達──バイオプロピレン実用化加速

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ゼオライト触媒技術の実用化を担う株式会社iPEACE223が、プレシリーズA2ラウンドで、CE型新株予約権による約3億円の資金調達を実施した。

今回のラウンドには三菱重工業、ジクシス、ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター(UMI)が出資した。

ゼオライト触媒技術を活用したバイオプロピレンの実用化を進める動きであり、脱炭素社会の要請を背景に、石油由来原料からの切り替えを模索する業界動向の中で注目されている。

iPEACE223は2023年8月に設立された東京工業大学(現 東京科学大学)発のベンチャー企業だ。エチレンからプロピレンを製造できるゼオライト触媒技術の実用化に向けて、バイオエタノールを原料としたプロピレン(化学品原料)やプロパン(燃料)などの製造に取り組んでいる。具体的には、これらの生成を可能にする触媒の開発と、その触媒を活用したプラントのプロセス設計を行う。従来、エチレンやプロピレンはCO₂排出量の多い石油化学原料から製造されてきたが、原料そのものをバイオマス由来に切り替えることで、製造過程におけるCO₂排出量の削減を目指している。

代表取締役の瀬戸山亨氏は、三菱ケミカルでゼオライト触媒技術の研究開発や特許化に従事した経験を持つ。iPEACE223は、三菱ケミカルで開発された技術の実施許諾を受けて設立されており、技術移転型のスタートアップとして位置付けられる。また、東京工業大学でゼオライトの合成と触媒応用を専門とする横井教授がCSO(最高科学責任者)として参画している点も特徴で、学術知見と事業化ノウハウの双方を持つ体制となっている。

プロピレンは、ポリプロピレン樹脂など幅広い化学製品の基礎原料であり、世界的に需要が高い。2022年時点で世界のプロピレン生産量は1億トンを超えている。一方で、現行の石油化学プラントによる生産はCO₂排出量が多く、環境負荷の高さが課題となっている。こうした中、再生可能資源を用いたグリーンプロピレンの開発が、国内外で進められているが、高効率かつ低コストでの生産技術は限られている状況にある。

欧州を中心にカーボンフットプリント(CFP)の可視化やサステナブル原料比率の義務化が進み、グリーンケミカル市場は今後数年で大きな成長が予想されている。こうした規制や市場の変化を背景に、バイオプロピレン開発の動きが加速している。

バイオプロピレンの競合技術としては、他社による高温・高圧条件下での合成プロセスや、多段階プロセスを経由する手法などが挙げられる。iPEACE223は 、自社のゼオライト触媒はエチレンから直接プロピレンを製造でき、低温・常圧で反応が進行する点が特徴とされる。また、プロピレン以外の不純物の生成も抑制する。

今回調達した資金は、神奈川県川崎市のテクノハブイノベーション川崎(THINK)内に設置するベンチプラントの建設および実証運転に用いられる予定である。2025年中の稼働開始を目標としており、プラント設計や建設面では三菱重工業、原料調達やLPGのマーケティング面ではジクシスが協力する。今後は、バイオエタノールを原料とした、バイオプロピレン製造技術の実用化に向けた取り組みを加速させ、脱炭素社会の実現に貢献する。

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