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3Dプリンタで土木工事の施工DXを推進、建設業界の人材不足に挑む


建設用3Dプリンタを中心とした建設業界特化型サービスを提供する株式会社Polyuseは、シリーズBラウンドにて、WiL、グロービス・キャピタル・パートナーズ、ユニバーサルマテリアルズインキュベーター、SBIインベストメント、大和ハウスベンチャーズを引受先とする第三者割当増資で、約27億円の資金調達を実施した。
Polyuseは、建設用3Dプリンタ技術を軸に、ハードウェア・自社材料・ソフトウェアの一体開発と導入支援を展開している。自社開発の国産建設用3Dプリンタ「Polyuse One」は、コンクリート構造物の印刷を通じ、省人化・工期短縮・品質安定を図る技術的特徴を持つ。2022年1月から国土交通省管轄工事に適用されるなど、これまで全国で約200件の施工実績を有する。
建設用3Dプリンタとは、建築物や構造物を迅速・効率的に造形できる特殊な3Dプリンタだ。従来工法に比べて施工スピードや品質が向上し、労働力不足の解消や安全性向上にも寄与する。また、持続可能な材料利用や廃棄物削減など、環境面でのメリットも期待されている。
代表取締役は岩本卓也氏、共同代表に大岡航氏。ともに2019年6月にPolyuseを創業した。岩本氏はコンサルティングファームで経営戦略や事業改善等の業務を経験し、創業後は経営全般とコーポレート部門を統括。大岡氏はIT企業の創業や複数のベンチャー企業の経営を経て、事業開発・技術開発をリードしてきた。両名は建設業界の現場課題を深く探索し、建設プロセスを変革するための3Dプリンタ技術の社会実装を目的として事業を推進している。
建設用3Dプリンティング市場は国内外で成長が顕著となっている。日本全体の3Dプリンティング市場については、IMARC Groupの調査によれば2024年に17億ドル規模、2033年には82億ドルへと拡大する見込みである。建設業界では、2022年に大林組が建築基準法に基づく国土交通大臣認定を取得し、3Dプリンタによる実証棟の建設を開始したことが、制度上の大きな進展となった。3Dプリンティング技術への注目の背景には、少子高齢化に起因する労働力不足、工期短縮、資材ロス削減や環境負荷の低減が求められる社会的要請がある。一方で、建設用3Dプリンタに関する法制度や品質保証の枠組みは検討途上にあり、現状では大手建設会社や一部スタートアップによる実証・試験運用が中心である。今後は、こうした先行的な実証事例を踏まえつつ、法制度上の調整と安全性検証を重ね、建築自動化技術の普及が進行するとみられる。
今回調達した資金は、建設用3Dプリンタの研究開発基盤の拡充および社会実装に向けた事業体制の強化に充てられる。2025年9月からは国産建設用3Dプリンタ「Polyuse One」の全国販売・設置を開始し、2025〜26年度で100台の設置を計画している。今後も研究開発・営業・体制強化を図り、より多くの現場で建設用3Dプリンタの活用を拡大する方針だ。
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