グリッドシェアジャパン、16.8億円調達──AIで分散型電源を最適制御し“次世代エネルギー網”構築へ

グリッドシェアジャパン、16.8億円調達──AIで分散型電源を最適制御し“次世代エネルギー網”構築へ

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AIを活用した分散型電源マネジメントプラットフォーム「グリッドシェアサービス」を展開するグリッドシェアジャパン株式会社は、オムロンソーシアルソリューションズ、九州電力、中部電力ミライズ、東急不動産、Lunar Energyの5社を引受先とする第三者割当増資などにより、総額16.8億円の資金調達を実施した。

グリッドシェアジャパンは、米Lunar Energyが開発したAI分散型電源マネジメントプラットフォーム「グリッドシェアサービス」を日本国内で独占提供する企業である。グリッドシェアサービスは、AIによる高精度な予測と制御によって、蓄電池などの分散型電源機器の充電・放電を最適化する。また、電力会社が提供するデマンドレスポンス(DR)サービスと連携し、加入者の家庭用蓄電システムを自動で充放電させることで、より効率的な再生可能エネルギーの活用を実現する。2025年5月時点で4万台以上の蓄電システム(累計容量300MWh超)が同社ネットワークに接続している。

代表取締役は西尾仁志氏。グローバル商社でキャリアを積んだのち、Moixa社(英国)の日本展開をめざした出資・提携を主導し、2018年にグリッドシェアジャパンの設立に至った。2022年にはLunar社との資本・業務提携を主導し、直近では2023年6月から2025年3月までTRENDEの代表取締役として経営を牽引した。AIを活用した分散型電源マネジメントシステムの社会実装を推進し、グリッドシェアサービスの国内事業展開をリードしている。

日本の分散型電源マネジメント市場は、再生可能エネルギー導入拡大およびそれを支える制度強化を背景に著しく成長している。JEMA(一般社団法人日本電機工業会)の統計によれば、2024年度の家庭用蓄電システム出荷台数は15.8万台、出荷容量は約152.6万kWhとなり、前年比113%と高い伸びを示した。今後も定置型蓄電池や分散型リソースの導入拡大が見込まれ、政策的には2030年の再生可能エネルギー比率36〜38%目標達成を後押しする環境整備が進行中である。需給調整市場に関しては、経済産業省の発表により、2026年度から低圧小規模リソースの活用が本格的に始まり、スマートメーターなどを活用した分散型リソースの電力市場参入が計画されている。グローバル市場動向としては、分散型エネルギー資源管理システムにおいて仮想発電所(VPP)分野が最大シェアを占め、アジア太平洋地域では日本を含む企業各社が成長をけん引している。課題としては、原材料供給の安定性、電力系統の調整力確保、リサイクルやサイバーセキュリティ関連の制度整備などが挙げられ、大手電機メーカーや外資系IT企業も市場競争に加わっている。

今回調達した資金は、グリッドシェアサービスを中心とする事業の拡大および新たな協業の推進に活用される。新株主の協力により、蓄電池にとどまらず電気給湯器や電気自動車などへの対応拡大、容量市場・需給調整市場への参入、各社のビッグデータを活用した新たな電力サービスの開発、ならびにデマンドレスポンスサービスの推進などのシナジーを目指す。今後は各社の事業基盤を軸にしたネットワークとサービスの拡充を進めるとしている。

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