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自然を身近に感じるセカンドホーム、国内拠点倍増目指すSANUの展望

シェア別荘サービス「SANU 2nd Home」を提供する株式会社SanuがシリーズBラウンドにおいて総額64.5億円の資金調達を実施した。今回の調達は、エクイティによる35億円、サステナビリティローン19.5億円、ソーシャルローン10億円、さらに国内24行からの一般融資を組み合わせた形となっている。
同社は2019年創業のスタートアップで、自然環境を活かしたシェア別荘サービス「SANU 2nd Home」を運営している。このサービスは、ゲスト宿泊、個人・法人向けのサブスクリプション、共同オーナー型、1棟所有・運用型といった複数の利用形態を用意し、多様なニーズに対応してきた。現在は31拠点・189室を展開しており、2028年度までに100拠点以上に拡大する計画だ。特徴的なのは、共通設計による木造モジュール建築を採用し、デジタルオペレーティングシステムによって効率的な管理と環境負荷低減を両立している点である。サブスクリプションや共同所有のモデルを通じて、都市生活者が自然と接点を持つ新たな選択肢を提供している。
代表取締役CEOの福島弦氏は、McKinsey & Companyでクリーンエネルギー分野の企業・政府関連事業に従事した後、ラグビーワールドカップ2019日本大会の運営に参画。その後、2019年には、本間貴裕氏とともにSANUを創業した。
新型コロナウイルス感染症以降、テレワークの普及やワーケーション需要の高まりを背景に、都市と地方、生活と自然の間の垣根が低くなっている。国内のシェア別荘市場は今後も成長する見通しだ。この分野では、HafHのような宿泊サブスクリプションサービスや、ANDPADといった不動産オペレーションテック企業が競合している。各社が提供するサービス内容や建築手法で差別化を図り、利用者の多様なライフスタイルに応えている。
今回の資金調達には、グロービス・キャピタル・パートナーズやJAFCOをはじめとするベンチャーキャピタルが出資し、サステナビリティローン・ソーシャルローンについてはみずほ銀行などの大手地方銀行が参加している。サステナビリティローンとは、環境や社会課題の解決に資する事業に特定したローンのことである。
資金は、以下の4つの重点領域に充てられる予定である。
1. 全国100拠点への事業拡大
現在の31拠点から、2028年度までに100拠点体制へと拡張し、都市生活者と地域との往来を促進する新たな生活インフラとしての機能を強化する。
新たな拠点展開にあわせ、共同所有モデルの販売物件を拡大。都市を暮らしのベースとしながら、定期的に自然に“通う”ライフスタイルを志向するユーザーのニーズに応える。
共通設計による木造建築に対して、デザイン・機能・環境性能など多面的なアップデートを進行。加えて、設計から製造までのプロセスをデジタル化・工場生産化する「SANU FACTORY」によって、安定した量産体制を構築する。
統一されたソフトウェア基盤によりシームレスなUX(ユーザー体験)を実現するほか、建築構造やIoTデバイスの制御を通じて運営の効率化と維持管理のデジタル化を図る。
スタートアップの資金調達環境は2024年時点で世界的な投資冷却や金利上昇の影響が及び、難易度が高まっている。この環境下での大規模調達は、成長性や社会的意義に対する投資家や金融機関からの評価が一定程度得られたことを示している。今後、拠点の拡大ペース、建築や運営の効率化、需給バランス、サービス品質の維持が事業の持続性にとって重要な課題となる。
SANUが掲げる全国100拠点体制や維持管理のデジタル化が計画通りに進行するか、また、環境や地域経済への波及効果がどの程度実現するかが、今後の事業成長を左右する指標となる。他社との競争や新たな連携の動きも含め、シェア別荘市場は今後も変化が続くとみられる。
画像はSanu HPより
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