日本発、世界で戦う専門家知見のプラットフォーム──事業エリア拡大を本格化

日本発、世界で戦う専門家知見のプラットフォーム──事業エリア拡大を本格化

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KEPPLE編集部

目次

  1. 専門家知見へのアクセス機会を創出するプラットフォーム
  2. ベトナムでの情報収集に苦労した経験を糧に起業
  3. 事業エリア拡大を本格化、世界で勝てるビジネスに

専門家と企業のマッチングサービスを提供するアーチーズが、第三者割当増資による4.1億円(累計6.4億円)の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回のラウンドでの引受先は、KUSABI、VISIONAL、SMBCベンチャーキャピタル、グローブアドバイザーズベンチャーズと国内外7名のエンジェル投資家など。

今回の資金調達により、事業エリア拡大とサービスラインナップの拡充を目指す。

専門家知見へのアクセス機会を創出するプラットフォーム

アーチーズが提供するのは、アジア圏の専門家と企業をマッチングするサービス。企業向けに、各地域を拠点とする特定領域の専門家とのオンラインインタビューのアポイント調整を支援する。インタビューの実施やレポート作成の代行も引き受ける。

同社サービスに登録する専門家は10万人を超えるという。主な顧客はコンサルティングファームや投資会社。これまでに世界各国の300社以上を支援した。

特定テーマに沿ったインタビュー内容の書き起こしを閲覧できる、「エキスパートナレッジバンク(以下:ナレッジバンク)」の提供も2023年から開始した。すべての書き起こし記事を閲覧できる月額課金プランのほか、記事ごとに課金するプランから選べる。

米国や欧州では、アーチーズのような専門家知見の提供を支援する先行ビジネスがある。この領域で存在感を放つ米AlphaSenseは6月、競合の米Tegus買収を発表した。同時に実施した資金調達を経て評価額は40億ドルとなるなど、海外では事業者の統合も進んでいる。

アーチーズは2019年の設立以降、ベトナムやシンガポールなどアジア圏の5つの都市に拠点を構える。今後は国内市場の拡大を図りながらも、事業エリアを欧米やアフリカにまで広げる狙いだ。

今回の資金調達に際して、代表取締役の加藤 洋気氏に今後の展望などについて話を伺った。

ベトナムでの情報収集に苦労した経験を糧に起業

―― 御社はどのような課題の解決に取り組んでいるのでしょうか?

加藤氏:企業は新規事業開発やM&A、海外展開などを行う際に、専門家にヒアリングをしながら意思決定に必要な情報を収集します。自社で実施する場合もあれば、コンサルティング会社に外注することもあります。大手のコンサルティングファームであれば、日本拠点だけでも年間1万件ほどのインタビューを実施するそうです。

コンサルティングファームも、20-30年前では一日中手紙の作成や電話をして大学教授や企業OBなどの専門家にアポを取り、クライアント向けのレポートを作成することがほとんどだったと聞きます。元BCGの日本代表の方が以前「コンサルタントの仕事のほとんどはアポ取りや人探しだった」と仰っていたことが印象的でした。事業会社の場合はいまだに自社の人脈のみを活用して、ヒアリングをするのが基本的な情報収集の手法だと思います

当社は10万人以上の専門家データベースの中から、特定テーマに沿った専門家とのインタビューをアレンジしています。一部のインタビュー内容は生成AIを活用して要約し、サービス上で閲覧できるため、実際にインタビューせずとも専門家の知見にアクセスできます。こうした「知見提供の仕組みを作る」ことが我々のサービスの骨子となっているのです。

スタートアップスカウト

―― 創業のきっかけを教えてください。

元々YCP Solidianceというコンサルティング会社に勤めていました。海外拠点の立ち上げでベトナムに移り住んだ時期があり、その際の経験が創業の一つのきっかけになっています。

ベトナムではPEファンド向けに、投資先のデューデリジェンスやバリューアップの支援をしていました。成長している東南アジアのマーケットの面白さを感じた一方で、現地企業や市場の情報収集にはかなり苦労しました。

英語が主言語ではないためにデスクトップリサーチも困難で、誰に話を聞くべきかもわかりません。適切な情報収集ができなければ、企業や事業への投資も博打のようになってしまいます。この経験から、誰でも専門知識にアクセスできるようなサービスが必要だと思うようになりました。

また、スポットコンサルサービスを提供するビザスク創業者の端羽さんは大学のゼミの先輩です。欧米で先行する事業モデルを日本に持ち帰った成功例として、ビザスクを身近に見ていたことも自身の起業を後押しするきっかけになりました。起業するにあたって、日本企業として海外で事業を成功させることを強く意識して取り組んでいます。

事業エリア拡大を本格化、世界で勝てるビジネスに

―― 資金調達の背景や目的について教えてください。

今回ラウンドで経済情報プラットフォームを提供するユーザーベースに株主となっていただいたのと同様に、人材サービス運営のVISIONALに戦略投資家として参画いただくことで、当社が持つ人材データベースとの事業シナジーを生むことが大きな目的です。

また、当社事業は企業投資をするビジネスと非常に親和性が高い特徴があります。コンサルティングファームや投資会社の情報網に強い投資家との関係を深めることは、今後の事業拡大で非常に重要です。将来的なIPOも視野に入れる中で、知見やノウハウが豊富な投資家に参画いただけたと思います。

―― 今後の展望を教えてください。

これまでの事業運営を通じて、専門家のマッチング事業は黒字化し、大きな投資をしなくても成長できるフェーズに入っています。今回の調達資金は、ナレッジバンク事業等の新規事業に向けた投資として充当する予定です。ナレッジバンクはこれまで、β版として日本に関するコンテンツに絞って提供していましたが、専門家インタビューのマッチングはすでにアジア全域で展開してますので、書き起こしコンテンツもグローバルに拡充して参ります。

中期的にはIPOも計画しています。AlphaSenseのTegus買収のように、米国では知見シェアリング事業者の一極集中が始まっています。欧米中心にコンテンツを提供する彼らがアジアへの進出を加速してくる可能性もある。我々も世界で戦うために、アジアに加えて欧米やアフリカ地域をカバーすると共に、AIを活用してコンテンツの検索・要約・分析等の機能を増強しながら、知見プラットフォームとして拡大しなければいけません。

また、知見のシェアリング方法の多様化という観点で、インタビューやその書き起こしのみならず、派遣や採用という人材領域にも入り込むことで、専門家の知見をお客様に届けることも検討しております。

我々はテクノロジーと個々人の知見でビジネスを盛り上ることはもちろん、日本企業としてグローバルで成功することを目標にしています。皆さんにも、世界で戦える日本企業の面白さと可能性を感じていただけると思いますので、ぜひ応援いただけると嬉しいです。

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