訴訟・仲裁ファンドのTrailblazeが2.8億円調達、クロスボーダー紛争対応力の底上げへ

訴訟・仲裁ファンドのTrailblazeが2.8億円調達、クロスボーダー紛争対応力の底上げへ

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訴訟・仲裁ファンドを運用する株式会社Trailblaze Asset Managementが、グロービス、グローブアドバイザーズベンチャーズ、弁護士ドットコム、複数のファミリーオフィスや個人投資家を引受先とする総額約2.8億円の第三者割当増資を実施した。

Trailblaze Asset Management(以下、Trailblaze)は2023年10月に設立され、アジア太平洋と米国を視野に、プライベートクレジットおよびスペシャルシチュエーション投資にフォーカスした資産運用サービスを展開している。主力プロダクトは、日本で初めて訴訟・仲裁案件への資金提供を目的とした「Trailblaze Litigation Fund I Cayman LP.」であり、米国やシンガポールなどで現地企業や日系企業の訴訟、国際仲裁案件に対するいわゆるリティゲーションファイナンスを手掛けている。訴訟・仲裁ファンドは日本国内では稀な存在であり、主に海外勢が担ってきた市場である。Trailblazeは、日系企業によるクロスボーダー紛争への対応力の底上げを目指している。

Trailblazeの代表を務める米田尚輝氏は、CEO & Managing Partnerとして創業から経営を担う。米田氏は米国で法務関連プロジェクトやファンド設立などの経験を積み、特に民事訴訟の経済格差是正や権利保護におけるファンドの社会的意義に早くから注目してきた。21歳で同分野の経営を担っている点も特筆される。現時点で他の創業メンバーや追加の経営陣の情報は公開されていない。

世界的にオルタナティブ投資、とりわけ訴訟ファイナンス市場は拡大傾向にある。調査会社Research and Marketsのレポートによると、グローバルな訴訟ファイナンス市場は2022年に180 億ドルを超え、今後も成長すると予測されている。一方で日本市場におけるサードパーティファンディング(TPF)は、法的・慣習的な障壁の存在から先行事例が限られてきた。しかし近年、企業の国際展開に伴いクロスボーダーでの紛争が増加し、資金力の差が訴訟アクセスの壁となる問題が指摘されている。

この分野の競合としては、英国のBurford Capital、米国のOmni BridgewayやHarbour Litigation Fundingなど海外大手が存在するが、日本国内ではTrailblazeのような独立系や法律事務所系によるファンド組成はこれまで例が少なかった。Trailblazeによれば、今後は単一案件への資金提供だけでなく、複数案件を組み合わせたポートフォリオ戦略や、テクノロジーを活用した判決予測モデルの開発など、リスク管理・案件選定体制の強化にも注力する方針だ。

今回調達した資金の使途は、人材採用、旗艦ファンドの規模拡大、パートナー企業とのジョイントベンチャーや共同運用ファンドの設立などが中心となる。また、既存の訴訟・仲裁ファンドに加え、他のプライベートクレジット領域へも事業領域を広げていく計画がある。

Trailblazeは9月に「日系企業による訴訟・仲裁ファイナンス活用方法」と題したセミナーを開催する予定で、米クイン・エマニュエルや桃尾・松尾・難波法律事務所の弁護士を招き、日系企業や法律家向けに具体的な活用事例や法的要件について情報提供を行うとしている。こうした取り組みは、日本企業の海外進出に伴う訴訟・仲裁リスクの高まりを背景に、リスクマネジメントの高度化が求められている状況を反映している。

オルタナティブ投資や訴訟ファイナンス市場は、今後の国内法制や産業構造の変化による成長余地を残しつつ、規制や情報開示、ガバナンスに対する社会的要請も高まることが予想される。Trailblazeを含む新興プレーヤーは、グローバルで進むベストプラクティスの導入と、日本市場特有の法制度、商慣習への適応という課題を同時に抱えている。

リスク・リターン特性が従来の資産クラスと異なる訴訟ファイナンスは、今後さらに多様な投資家層の関心を集めるとみられるが、市場拡大のためには制度設計や情報開示の高度化など、継続的な環境整備が不可欠となる。

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