ジャパンM&Aインキュベーション、3億円調達でAIプラットフォーム構築へ

ジャパンM&Aインキュベーション、3億円調達でAIプラットフォーム構築へ

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企業のM&A支援、戦略コンサルティング、人材紹介の3領域を一体的に提供する株式会社ジャパンM&Aインキュベーション(以下、同社)は、グローバル・ブレインをリード投資家とする第三者割当増資を実施し、総額3億円の資金調達を行った。

2024年に設立された同社は、属人的なノウハウに依存しがちなM&Aや経営アドバイザリー領域において、生成AIを活用してプロフェッショナルの知見を体系化。「誰でも使える経営支援インフラ」の構築を目指す。調達資金は、AIを活用したプラットフォームの開発と、プロフェッショナル人材の採用強化に充てる予定だ。

現在、国内のM&A市場は、大手証券会社がグローバル展開や高額ディールに特化し、小型案件は仲介会社が効率重視で対応する構造が定着しつつある。その結果、中堅・中小の案件を専門的且つ、M&Aに留まらない形で横断的に経営を支援できるプレイヤーが限られている。この空白領域に着目し、同社は設立当初から「専門性と品質で勝負する」という明確な戦略を掲げて事業を展開してきた。

そうした背景のもと、同社の支援モデルは、M&Aの仲介や単発の人材紹介といった従来型の支援にとどまらず、戦略策定からPMI(統合支援)までを一貫して担う体制を構築している。中堅・中小案件に最適化されたこのモデルにより、M&Aの断片的な支援に留まらず、経営課題への本質的なアプローチが可能となる。

M&Aアプローチ イメージ図
M&Aという不確定要素の大きなイベントに、ピンポイントに、そして柔軟に、一貫性をもって対応可能(画像は公式HPより)

「M&A業界には、機能単位で支援を提供するプレイヤーが多く、戦略構築やPMI、経営人材の採用などが分断されている。弊社はそれを一気通貫で提供できる組織体制としています」と代表取締役CEOの由良匠氏は語る。

さらに、現在のM&A支援会社を取り巻く構造的な課題については「営業主導による提案の偏りが一部で指摘されている」とし、特に営業インセンティブに基づいた人材配置によって案件の成立を優先しすぎる傾向が強まり、買い手・売り手双方にとって最適な支援がなされにくい構造があると説明する。

こうした支援の質的課題を克服し、中堅・中小領域への支援を限られた人員で実現するうえで、生成AIの活用が重要な鍵を握る。提案段階での論点整理や契約書レビュー、DDの支援、M&A実務に必要なヒアリング項目の抽出などを効率化することで、限られた人員でも高品質なサービス提供を可能にする。

さらに、案件ごとに蓄積される知見をAIで匿名化・標準化し、他案件にも再利用可能な形で集約・展開することで、M&A業務に関する“共通知”を構築する構想だ。例えば、過去のPMI事例やアクティビスト対応の施策などをテンプレート化し、属人性を排した支援を複数案件で可能とする基盤づくりを目指している。

こうして蓄積される知見や仕組みは、一般的な事業会社だけでなくスタートアップのM&Aにも応用可能だ。同社は、調達元であるグローバル・ブレインとの資本提携を通じて、今後はスタートアップM&A領域への展開を強化していく方針である。グローバル・ブレインは約260社のスタートアップポートフォリオを有しており、EXIT支援や事業承継の実行フェーズにおいて同社の専門性が活かされる余地が大きい。「VC単独では支援しきれないスタートアップM&Aの実行面を補完することで、より強固なエコシステムを形成していきたい」としている。

由良氏は、ドイツ証券でデリバティブ商品の開発を担当した後、マッキンゼーにて製造業の全社改革など戦略コンサルティングを経験。さらに、カーライルでは投資業務に携わるなど、金融と経営支援の両面でキャリアを積み、2024年に同社を共同創業した。プロフェッショナルとして得た知見を、閉じた世界に留めず社会に還元するという信念が起業の原動力となった。同氏は、「これまで蓄積してきた知見が社会課題の解決につながるのであれば、それを仕組みに変えることにこそ意味がある」と語る。

仕組みイメージ図
「事業×資本×組織」の 企業価値創出で連動する、 3つの支援領域(画像は公式HPより)

今後は、リブランディングや社名変更を視野に入れつつ、創業来進めてきたシステムのプロトタイプを発表し、プラットフォーム構想を本格化させる予定だ。これまでの知見をもとに経営支援の標準化を図るとしている。

さらに、将来的な資金調達や上場についても柔軟に対応する姿勢を示している。テクノロジー基盤を軸に業界を変革するフェーズに移行する場合には、より大きな資本の後押しが必要になる可能性があるとし、その際には単なる出資にとどまらず、AI技術の実装や業界ネットワークに強みを持つパートナーとの連携が不可欠になると考えている。

たとえば、SaaSやプロフェッショナルサービスに実績のある事業会社や、グローバル展開を視野に入れたファンドなどとの協業を検討している。「現状のビジネスモデルを堅実に育てていく道と、AIプラットフォームを軸に業界全体を変革する挑戦の道と、両方の可能性を見極めながら進んでいきたい」としている。

同社が目指すのは、国内の中型・中小M&A市場におけるデファクトスタンダードとなることだ。プロフェッショナルが個々に蓄積してきた知見を標準化し、多くの企業が利用可能な形で共有することで、限られた人材に依存せずに高品質な経営支援が可能な社会基盤を築く。それにより、M&A支援の現場における属人的なサービスのあり方を見直し、より持続可能な業界構造への転換を目指す。

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