上質な旅が伝統を支える──“体験”を軸に描くJ-CATのインバウンド戦略


インバウンド・観光領域の事業を展開する株式会社羅針盤が、シリーズBラウンドでの7.5億円の第三者割当増資とみずほ銀行からの7億円の融資を合わせ、総額14.5億円の資金調達を実施した。今回のラウンドの引受先には、オリエンタルランド・イノベーションズ(既存株主)、エムスリー、GMS、ごうぎんキャピタル、静岡キャピタルが名を連ねた。融資を含めた累計調達額は約28億円となる。
同時に、交通領域のキャブステーションとアウテックの完全子会社化を実施。旅行者が求める宿泊・移動・体験のソリューションを一気通貫で提供できる体制の構築を目指す。
2022年12月の設立以降、M&Aを重ねながら事業領域を拡大してきた羅針盤にとって、今回は8件目のM&Aとなる。代表取締役の佐々木文人氏に、資金調達およびM&Aの背景や今後の展望について聞いた。
──現在の事業内容について教えてください。
佐々木氏:当社は2022年12月、水際対策が緩和されたタイミングで設立しました。観光が新しい時代を迎えるにあたって、私たちが行く先を示したいという思いから「羅針盤」という社名にしています。

「旅の目的地を創出する」というビジョンを掲げ、ホテル事業・エクスペリエンス事業・地域プロデュース事業の3つの軸でビジネスを展開しています。ホテル事業では、オーナーから物件を預かり内装プロデュース・予約受付・清掃等のサービスを一気通貫で運営しています。エクスペリエンス事業では外国人向けツアー企画・運営や着物レンタルを行い、地域プロデュース事業では自治体からの受託でインバウンドの受け入れ環境整備などを手がけています。
──今回の資金調達とM&Aの背景について教えてください。
資金の使途としては、キャブステーションとアウテックへのM&A実行費用です。
「旅の目的地を創出する」というビジョンを考えた時に、これまで交通・移動という領域が欠けているピースでした。今回それが加わることで、目指す姿へ向けて加速ができると判断し、M&Aに踏み切りました。両者のハイヤー事業アセットや、全国のバス・タクシー事業者とのネットワークを当社のたようなコンテンツと組み合わせることで、旅行者が求める宿泊、移動、体験を一気通貫で提供できる体制を構築します。
──事業シナジーとしてどのような展開を描いていますか。
エクスペリエンス事業と組み合わせ、東京から離れたエリアへのツアーを企画しゲストを送客する、あるいはホテル事業と連携して空港からの送迎をセットにするといった相互送客や新商品の開発など、シナジーを模索していければと考えています。
例えば、東京からの日帰り圏内では、日光や箱根には多くのインバウンド旅行者が訪れますが、それ以外のエリアは海外のゲストにとってアクセスしづらかったり、魅力が十分に伝わっていなかったりする場所が多くある。そこに対してどう商品を作るかに挑戦したいと思っています。

──インバウンド市場の伸び代についてはどのようにご覧になりますか。
2025年のインバウンド消費額は9.5兆円規模でしたが、政府は2030年までにこれを15兆円まで伸ばすことを目標としています。
現在の消費額の内訳を見ると、宿泊・交通・飲食・ショッピングの4分野が約95%を占め、体験・娯楽等のサービスは約5%にとどまっています。欧米の観光に力を入れている国では、体験・娯楽が消費全体の10%を超えることもある。
この差の要因は、日本のサービス供給側が未成熟であることだと思っています。インバウンドが本格的に伸びてきたのはここ15〜20年のことで、サービス供給側の整備が需要に追いついていない。2030年に消費額15兆円という目標の中で体験分野が10%を占めれば1.5兆円規模になる計算で、ここはまだまだ伸びしろが大きい領域です。
政府も今年、国際観光旅客税を1000円から3000円に引き上げ、地域資源のコンテンツ化促進への予算を増やしています。ここには、人口減少による消費の落ち込みをインバウンドによって補填したいという思惑もあると思います。
私たちとしては、その流れをうまく活かしながら、これまで蓄積してきたノウハウを地域に還元していきたいと思っています。報告書を書いて終わりではなく、ホテル運営、エクスペリエンス、交通など、インバウンド顧客体験の入り口から出口まで知っているからこそ、地域に実のある形で貢献できると考えています。地域プロデュースと他事業の両輪を回すことで、日本全国を旅の目的地にしていきます。
──今後の展開についてお聞かせください。
3つの事業領域(ホテル運営、エクスピリエンス、地域プロデュース)を精力的に推進していきます。
早期にIPOを実現したいと思っていますが、「旅の目的地を創出する」というビジョンに向け、上場はゴールではなく、第二のスタート地点というイメージです。
観光業は自社だけで完結するものではなく、地域との連携や優秀な人材の力が不可欠です。ツアーでも交通サービスでも、人がゲストとの重要な接点になる。IPOによって信頼度や知名度を高め、優秀な人材に仲間として加わっていただくことがサービスレベルの向上に直結します。
──どのような人材を求めていますか。
3つのバリュー「スピード最優先」「挑戦を楽しむ」「尊重と信頼」に共感いただける方に、仲間に加わっていただきたいです。
インバウンド市場にはまだ正解がありません。試行錯誤の中で失敗もしながら、より早く成功を見つけに行ける方に合っている領域だと思います。私たちは日本の観光をリードする存在を目指しているので、安定を求める方よりは、「一緒に新しい景色を見に行こう」という方の方が向いています。また、観光は地域やパートナーとの連携があってこそ成り立つので、関わる人全員へのリスペクトを持って動ける方を求めています。
「地域を活性化させたい」「日本の魅力を世界に届けたい」「英語を活かしたい」という方には、特にはまる仕事だと思います。
そうした仲間とともに、宿泊・移動・体験を一気通貫で磨き上げ、日本全国を旅の目的地にしていきたいです。

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