はじめに
旅行・観光業界は、COVID-19パンデミックの影響を強く受け、2020年以降世界中で旅行制限や封鎖が行われ、国際旅行や国内旅行の需要が減少した。ただし、最近ではワクチン接種や感染者数の減少に伴い、徐々に回復の兆しを見せている。
日本政府観光局※によると、2023年8月の訪日外客数は2019 年同月比 85.6% の 2,156,900人と回復傾向にある。
旅行・観光予約のデジタル化の強化、OTA(オンライン・トラベル・エージェント)の拡大などにより、今後も旅行者が増えることが期待されている。
スタートアップ5選
この領域の上場企業としては株式会社エイチ・アイ・エスなどが挙げられるが、今回はスタートアップ5社を紹介する。
NutmegLabs Japan株式会社
「現地体験をもっと楽しく・もっと豊かに・もっと身近に」をミッションに、予約・決済から、現場レベルの業務まで一気通貫でデジタル化を可能にする観光DXプラットフォーム「Nutmeg(ナツメグ)」を提供する。Nutmegは、ITの知識や経験がない「初心者でも使える」をテーマに、使用するクラウドサービスを構築しスマホで現場からでも使える、オールインワン型SaaSプラットフォームだ。
2023年4月には、シリーズAラウンドにて、Coral Capitalなどを引受先とする第三者割当増資により4億円の資金調達を実施した。Nutmegの導入社数は約300社を超え、京都・沖縄・ハワイなどの人気観光地での導入が加速している。
Japan Culture and Technology株式会社
日本の文化体験の予約サイト「Otonami」や、外国人向け日本文化体験予約サイト「Wabunka」などを運営する。Otonamiは、京都の世界遺産清水寺の非公開エリア特別ツアーや金継ぎ体験など、非日常の体験を予約できるサイトだ。
Wabunkaは、外国人観光客向けに、箸づくりや京都での和菓子作りなど、日本の伝統工芸や文化の体験を予約することができる。 そのほか同社では、イベントの手配やコーディネート事業などを行う。
2023年4月には、三菱UFJキャピタルを引受先とする第三者割当増資による資金調達を実施した。
企業HP:https://j-cat.co.jp/
株式会社令和トラベル
従来の海外旅行ツアーにおける業務プロセスのDX化に向けて、海外旅行予約アプリ「NEWT」を開発。これまで以上に「かんたん」に予約ができる仕組みを作り、「おトク」な価格を実現。ひとりひとりのニーズに合った「えらべる」旅をつくり、NEWTで行ってよかったと思える「あんしん」を提供することを目指す。
創業まもない2021年6月に22億5000万円の資金調達を実施。 同社の代表を務める篠塚孝哉氏は、ホテル・旅館の宿泊予約サービス「Relux」を運営するLoco Partnersの創業者。
リンクティビティ株式会社
日本国内の鉄道チケットや旅行アクティビティなどの予約プラットフォーム事業を展開する。 同社は、交通・観光事業者や自治体などの国内の観光業に携わるサプライヤーと国内外のOTAをはじめとする旅行会社を結ぶことにより商材供給を行うほか、事業者の予約販売から送金・入金に至るまでの管理運用を一元化できるシステムを展開する。
また、旅行における現地ツアー、アクティビティ予約サービスを提供するベルトラ株式会社の子会社。2023年4月には、日本のLCCとして最大規模の路線を就航するPeach Aviationと連携し、Peachをご利用のお客様へのエアポートアクセス、交通チケット・周遊パスの販売を開始した。2021年12月には、西日本電信電話を割当先とする第三者割当増資により1.5億円の資金調達を実施した。
WAmazing株式会社
訪日外国人旅行者向けオンライン旅行プラットフォームのほか、自治体向けのインバウンドに特化したコンサルティングを行う。宿泊予約や鉄道・バス切符の購入、観光ツアー情報や旅行保険の提供など、訪日リピーター向けに幅広く旅行商品を提供する。
訪日外国人へのサービス提供で培ったノウハウをもとに、自治体向けに訪日インバウンド事業を支援する。調査・分析やプロモーションなど、主に中華圏を中心としたエリアからのインバウンド支援を強みにしている。
2023年4月には、シリーズC2ndクローズにて2.4億円の資金調達を実施。創業以来の累計調達額は31.4億円となった。
おわりに
日本への観光客が増える中、旅行の予約から決済までのデジタル化も進んでいる。今回紹介した企業に限らず、観光分野のスタートアップには今後もさらに注目が集まりそうだ。
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参考:日本政府観光局「訪日外客数(2023 年 8月推計値)」