株式会社LINEAイノベーション

核融合発電技術の開発を手がける株式会社LINEAイノベーションが、シリーズAラウンドで総額17.5億円の資金調達を実施した。
LINEAイノベーションは2023年に設立された。事業の中核は、軽水素とホウ素11(p-11B)を燃料とする、非熱的な先進燃料核融合発電技術の研究開発および実用化である。従来の核融合発電はプラズマを超高温まで加熱し反応を維持する方式が主流だが、LINEAイノベーションは「FRC(磁場反転配位)」と呼ばれる手法で高密度ターゲットプラズマを閉じ込め、ミラー磁場中で高エネルギービームイオンと反応させる方式を採用している。p-11B反応は中性子をほとんど発生しない点が特徴であり、放射性廃棄物の低減や設備材料の劣化抑制、燃料供給の安定性といった観点で優位性があるとされる。
代表取締役CEOの野尻悠太氏は、みずほ証券での投資銀行業務を経て、宇宙スタートアップのアクセルスペースにてCFO・COOを歴任。資金調達、事業開発、衛星開発プロジェクトなどを幅広く担当し、同社の成長に貢献。その後、JDSCのCFOを務めた後、PEファンドの投資先である株式会社ナレルグループにCFOとして参画し、上場を主導した。2023年にLINEAイノベーションの創業に携わり、2024年8月より代表取締役CEOに就任した。
核融合発電は、太陽で起きている核融合反応を地球上で再現し、持続的に大量のエネルギーを生み出す技術として期待されている。実用化を目指す国際大型プロジェクトとしては、フランスを中心に進む国際熱核融合実験炉(ITER)が知られている。
国内の核融合スタートアップとしては、EX-Fusion、京都フュージョンエネルギーなどが存在するが、p-11B反応に特化した事業を展開する企業は限られる。海外では米国のTAE Technologiesなどが先進核融合技術の開発を進めており、グローバルに競争が活発化しつつある。市場調査会社によると、核融合エネルギーの商業化は2030年から40年代以降と予測されており、2050年には市場規模が数兆円規模に達するとの見方もある。
今回の資金調達には、ANRI、慶應イノベーション・イニシアティブ、みずほキャピタル、ニッセイ・キャピタル、Spiral Innovation Partners、SMBCベンチャーキャピタル、常陽キャピタルON & BOARD、個人投資家などが参加した。加えて、建設業の大林組や総合電機の三菱電機も出資している。今回の出資を通じて研究開発段階から将来的なプラント建設・事業化までを見据えた関係構築を進めている。
調達した資金を用いて、FRCミラーハイブリッド方式によるp-11B核融合反応実証に向けた研究開発を加速する方針だ。具体的には、研究開発チームの拡充を図り、重要要素技術の開発を推進するとともに、開発予定の反応実験装置を利用した反応実証実験に取り組む。2030年代初頭までに発電実証を完了し、商業化への移行を目標とする。将来的には、p-11B核融合炉の供給を通じて、安全・クリーンで持続可能な新しいエネルギー社会の実現を目指すという。