京都フュージョニアリング、シリーズCで93.8億円調達──核融合発電プラント技術の社会実装を加速

京都フュージョニアリング、シリーズCで93.8億円調達──核融合発電プラント技術の社会実装を加速

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京都フュージョニアリング株式会社が、シリーズCラウンドおよび融資を合わせて総額93.8億円の資金調達を実施した。

今回の調達には、京セラベンチャー・イノベーションファンド1号、JERA、三井住友信託銀行などからのエクイティ出資(14.5億円)と、日本政策金融公庫、国際協力銀行、三菱UFJ銀行など5行による融資枠(53億円)が含まれる。シリーズCラウンドの総額は過去分を含めて40.8億円、これまでの累計調達額は162.6億円となった。

京都フュージョニアリングは2019年、京都大学を中心とする国内核融合研究の知見をもとに設立された。核融合発電の実現に不可欠な周辺機器やプラントシステムの開発・エンジニアリングを主な事業領域とする。具体的には、高温プラズマを生成する「ジャイロトロンシステム」、燃料供給・回収のための「フュージョン燃料サイクルシステム」、炉心から発生する熱を電力へ変換する「フュージョン熱サイクルシステム」など、核融合発電所の各炉型式に共通して必要とされる基幹技術を手がけている。

製造は自社で設計・品質管理を担い、日本各地の精密加工企業と連携するファブレス体制を採用している。この体制により、研究機関での実証開発から産業規模での社会実装に至るまで、開発スピードと柔軟性を確保している。

同社の代表取締役CEOを務める小西哲之氏は、40年以上にわたり核融合工学の研究に携わり、国際熱核融合実験炉プロジェクト(ITER)にも研究者として参画した経歴を持つ。チームには、長年の核融合研究者や若手技術者など多様な専門家が集まり、累積で800年分相当の研究経験を有している。

核融合発電を巡る動向として、米国や欧州、中国などでは国家戦略に位置付けた技術開発と商業化の動きが加速している。米国のCommonwealth Fusion Systemsが商用炉建設に向けて大規模投資を集めるなど、官民連携による開発競争が激化している。一方、日本国内では2023年に「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」が策定され、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて2030年代での発電実証が目標に掲げられている。だが、官民投資総額は欧米と比較して限定的であり、資金やサプライチェーン構築の面が課題となっている。

京都フュージョニアリングによれば、核融合発電市場は2040年に118兆円規模へ拡大する可能性があるとされている(デロイトトーマツコンサルティング推計)。この巨大市場を見据え、信頼性や安全性の高い装置・プラントの開発、サプライチェーンや規制の整備が今後の主要課題となる。2024年には、産官学が連携する業界団体「一般社団法人フュージョンエネルギー産業協議会(J-Fusion)」が設立され、標準化や政策立案に向けた動きがみられるなど、業界の基盤整備も進みつつある。

今回調達した資金は、京都・久御山町で建設中の発電試験プラント「UNITY-1」や、カナダでの燃料循環実証設備「UNITY-2」の開発加速、「FAST」プロジェクト推進、グローバル人材の採用および運転資金の確保に充当される予定である。技術開発面では、液体金属ループを用いた熱サイクル実証の「UNITY-1」、カナダ原子力研究所と連携した燃料循環統合試験「UNITY-2」が進行中だ。さらに、2030年代の発電実証を視野に、大学・研究機関と連携した「FAST」プロジェクトを展開している。ジャイロトロンシステムは英国や米国など複数国で採用されており、その性能向上に関しても国際的な評価を得ている。

日本国内では、ヘリカルフュージョン(東京)、エクスフュージョン(大阪)などが異なる炉型で核融合炉の開発を進めている。京都フュージョニアリングは、炉型を問わず共通して必要とされるプラント・インフラ周辺の基幹技術に特化し、装置の受注から組み立て、品質保証、事業化コンサルティングまで含めたシステムインテグレーターとしての事業展開を図っている。この点が、国内外の他の核融合スタートアップとの差別化要因となっている。

核融合発電の商業化には、技術的な課題や経済性、社会的合意形成といった複数の障壁が残る。今後10年での試験炉稼働や発電実証が重要な転換点となる中、調達した資金と人的リソース、国内外の連携体制をどのように活用し、技術開発を進めるかが注目される。

画像は京都フュージョニアリングHPより

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