現地体験のデジタル化、観光事業者を支えるNutmegが追い求める新たな旅の魅力

現地体験のデジタル化、観光事業者を支えるNutmegが追い求める新たな旅の魅力

  • #観光
  • #旅行

Startup Spotlight

Supported by

written by

KEPPLE編集部


旅行・レジャーにおける現地体験事業者向けに観光DXプラットフォームを提供するNutmegLabs Japanの親会社であるNutmegLabs, Inc.がシリーズAラウンドにて、第三者割当増資による総額約4億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回のラウンドでの引受先は、ALL STAR SAAS FUND、Coral Capitalなど。

今回の資金調達により、プロダクト開発を強化しながら日本国内の事業展開を加速する。

現地体験事業者の人手不足を解消

Nutmegは観光業界の中でも、アクティビティや観光スポットなどの現地における体験を提供する、いわゆるタビナカの事業者向けSaaSだ。ツアーやアクティビティの予約・決済に限らず、現地体験における観光客と事業者のタッチポイントをデジタル化することに注力しているのが大きな特徴だ。

サービスイメージ
2021年1月にサービスを開始し、300社以上の日本やハワイの事業者が導入している。

今回の資金調達に際して、代表取締役CEO 中⼝ 貴志氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。

増える需要に対応できずひっ迫する現場

―― これまで、観光客による現地体験にはどのような課題がありましたか?

 中⼝氏:観光業界は予約や決済に限らず、現地での体験が非常に重要です。これまでは現地でのチケット購入や手続きが一般的であり、事前予約が必要ないケースも多くありました。事業者からするとそれでも売上は立つため、業界全体としてデジタル化への関心が低かったのです。一方で観光客の立場では、何かアクティビティや観光スポットを訪れる際には、予約がしづらいことや、事前に予約しているにもかかわらず現地では並ばなければいけないなど、観光中に感じるペインは多いです。

業界の課題
そうした状況がコロナ禍で一変しました。コロナ禍の影響で観光業界から人が減り、回復傾向にある現在でもコロナ以前と比べると、まだまだ人材は戻ってきていません。観光業界が回復する中で海外からの観光客も増え、需要が高まっていますが、人手不足により需要を賄うことができていません。観光客の受け入れは国策として徐々に進んでいますが、現場では観光客を受け入れる余裕がないのです。その結果、需要があるにもかかわらず、観光業界全体としての回復が遅くなっています。

これまで観光業界では紙やエクセルベースでの運営が多く、効率化や自動化があまり進んできませんでした。システム化されていたとしても、古いWindowsサーバーでしか動かないようなシステムもあり、これでは人手不足解消のためのデジタル化とは言えません。こうした状況は中小企業に限らず、大手企業でも同様の状況であることは少なくありません。観光客もコロナ禍の影響で密を気にして、列に並ばなければいけないような現地体験はそもそも選択肢に入れない、というような意識変化も起きています。こうした状況から、事業者にはクラウドベースで業務効率化できるようなソリューションが求められています。

スタートアップスカウト

―― Nutmegを始めようと思ったきっかけを教えてください。

元々オンライン旅行会社であるベルトラで新規事業の立ち上げなどに携わっていました。その中で、予約や決済の機能を備えたBtoBのeチケットプラットフォームにも関わりました。私自身、旅行が大好きでよくさまざまな場所に行きますが、そのたびに現地で行列に並ばなければいけないなど、タビナカにおけるペインをたくさん感じていて、もっと良くしたいと思い、NutmegLabsを創業しました。

創業当初は、現地体験業界のBtoB向け流通サービス、いわゆるサイトコントローラーと呼ばれるサービスを提供していました。そこからコロナ禍で海外旅行が減りましたが、しばらくしてアメリカでは国内旅行が解禁され、ハワイへの観光客がものすごく増えたんです。ハワイでも日本と同じく現地体験業界はデジタル化されておらず、コロナ禍で売り上げも下がる中、一緒に事業者と手を取り合いながらNutmegを提供してきました。日本でも徐々に国内旅行が可能になり始めた頃から、Nutmegを提供しています。

データを活かしてより思い出に残る旅を提供

―― 資金調達の背景や使途について教えてください。

日本国内における事業拡大のために資金調達を行いました。日本ではここからさらなる需要の拡大が進む見込みで、まだ国内にNutmegと類似のサービスやプレイヤーも多くはないため、競合が少ないうちに国内の市場に注力します。具体的にはセールスの採用を進め、これまでインバウンド中心だった営業を強化します。現在日本拠点では10名ほどの組織ですが、セールスとカスタマーサクセスの採用を中心に、今年中には30名程度まで拡大する予定です。

―― 今後の長期的な展望を教えてください。

海外展開は積極的に考えています。すでに代表的な観光地であるハワイではNutmegの導入が進んでいます。ハワイでも日本と同じように事業者へのサービス提供を進めることで、アメリカ本土へも進出します。同じようにアメリカでも成功できれば、そこから先はそのほか多くの国へ展開していく予定です。すでに日本だけでなくハワイでも事業展開しており、ある程度成功例が出ているのはスタートアップとして非常に優位性があると感じています。海外投資家との関係も深いALL STAR SAAS FUNDやCoral Capitalから出資いただいたのはこうした背景もあります。

これまでの旅行では、「どこへ行きたいか、そのうえで何をするか」という考え方をすることが多いですが、「何がしたいか」を決めたうえで、「どこに行くと素敵な体験ができるのか」など、さまざまな計画を立てることがあるべき姿だと思っています。我々はNutmegを通じて、あらゆるタビナカのデータを収集しています。このデータが集まるほど、当社から理想的な旅の在り方を提案していけると思います。そのためにテーマパークや観光船などの事業者へのサービス提供をしっかりと行います。

今後の展望
データは徐々に集まってきていますので、Nutmegユーザー向けには、データを可視化するようなダッシュボード機能を今年提供していく予定です。事業者のサービスを購買する観光客の属性や集客の多い時間帯などを可視化することで、混雑状況の予測など、より効率的な運営に役立てていただくことが可能です。加えて、フィンテック領域も組み合わせて機能拡張をしていきます。例えばテーマパークであれば、パーク内で利用可能なポイントが含まれたチケットを販売することで、事業者にとっては単価向上につながり、さらにポイントを用いた購買データも取得できます。

現在の日本では訪日外国人の受け入れが増えています。国策としてインバウンドの受け入れを達成するため、しっかりとリソースを投下していき、事業者側の受け入れ体制を整えていくことに貢献したいと思います。

NutmegLabs Japan株式会社

NutmegLabs Japan株式会社は、旅行会社やDMO(観光地域づくり法人)向けのオンライン販売支援事業を運営する企業。 同社は、旅行業界向けに、オンライン販売サイトや業務ソリューションなどの提案を行い、デジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する。販売に関するソリューションでは、オンライン販売サイトをはじめ、アプリ開発やサービスの多言語化、地理検索なども取り扱う。 同社は、アメリカのサンフランシスコに本社を持つ。

代表者名中口貴志
設立日2018年4月23日
住所東京都中央区日本橋1丁目13番1号日鉄日本橋ビル3階
記事一覧
スタートアップの詳細データはKEPPLE DB
KEPPLE DB

Tag
Share
notelinkedInfacebooklinetwitter

Startup Spotlight

supported by

「スタートアップスカウト」は、ストックオプション付与を想定したハイクラス人材特化の採用支援サービスです。スタートアップ業界に精通した当社エージェントのほか、ストックオプションに詳しい公認会計士やアナリストが伴走します。

https://startup-scout.kepple.co.jp/
スタートアップスカウト

新着記事

notelinkedInfacebooklinetwitter
notelinkedInfacebooklinetwitter

STARTUP NEWSLETTER

スタートアップの資金調達情報を漏れなくキャッチアップしたい方へ。
1週間分の資金調達情報を毎週お届けします

※登録することでプライバシーポリシーに同意したものとします

※配信はいつでも停止できます

STARTUP NEWSLETTER

投資家向けサービス

スタートアップ向けサービス