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現地体験のデジタル化、観光事業者を支えるNutmegが追い求める新たな旅の魅力
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観光事業者向けSaaSを提供するNutmegLabs Japan株式会社(以下:Nutmeg)が、プレシリーズBラウンドで5億円の資金調達実施を発表した。本ラウンドの引受先はALL STAR SAAS FUNDとCoral Capital、Carbide Ventures、Rice Capital。
Nutmegが提供するのは、アクティビティや観光スポットなどの現地における体験を提供するタビナカ事業者向けのサービスだ。これまで提供していたオンライン予約サイト構築や決済といった機能に加え、近頃はCRM(顧客管理)やデジタルマップといった機能を追加した。代表取締役の中口 貴志氏は「タビマエからタビナカまで包括できるオールインワンプロダクトに進化した」と話す。
現在の導入企業数はシリーズA調達時から倍増し、国内を中心に約600社。これまでツアーやアクティビティ系の事業者が主要顧客だったが、機能拡充に伴ってテーマパークやリゾートホテル、交通インフラ関連の事業者の導入が進み、顧客層が広がった。
例えばデジタルマップは、顧客の滞在時間拡大や収益最大化に貢献する機能として、昨年8月にリリースした。旅行時にはオンラインで観光施設のチケットを購入しながらも、現地では紙のパンフレットやアナログな案内に頼らざるを得ないケースは少なくない。デジタルマップはGoogleマップやGPSと連携し、目的地までのルート案内や施設内の待ち時間情報などを表示。事業者はチケット購入やアクティビティの予約、MA機能と連携した販促施策の実施につなげられる。
複合型エンターテインメントパーク「長井海の手公園 ソレイユの丘」は、2023年4月にリニューアルオープンを実施。増加する来園者の利便性やエンゲージメント向上の一環としてNutmegを導入した。予約サイトを通じたチケットの事前販売に加え、入園後は公式マップ上で各アクティビティや施設情報を確認できるようにした。施設やエリア内の顧客の体験を向上するデジタルマップのリリースで「サービス提供できる顧客の幅が広がった(中口氏)」という。
2024年の訪日外客数が約3686万人と過去最多を記録するなど、日本におけるインバウンドの観光需要は高まり続けている。一方で国内の観光業界は、人手不足やデジタル化の遅れなど課題も多い。今の観光業界を中口氏は「天国と地獄」と表現し、需要拡大に対応するDX推進の重要性を強調した。
「インバウンド需要が高まっているものの人手は不足し、インフレによる物価高も止まる気配がない。需要に対して供給が追い付かない現状をどうにかしなければ、今後乗り切ることができない」(中口氏)
Nutmegのプラットフォームは、OTA(オンライン旅行代理店)と比較して事業者がより直接的に顧客との接点を持てる点が強みだ。一般的にOTA経由での予約では、事業者が顧客データを十分に把握できないことが多いが、Nutmegのシステムを利用することで自社サイトを通じた予約管理が可能となり、データドリブンなマーケティング施策を実施しやすくなる。
旅行における単一の領域ではなく、決済やCRM、デジタルマップなどの機能を複合的に組み合わせて活用できるNutmegは導入実績も着実に積みあがっている。Nutmegは2023年5月のシリーズA以降、約1年半で取扱高(流通額)を350%以上増加させた。既存顧客からの収益を維持できているかを測るNRRは140%を超えている。NRRは、100%を上回ると顧客の維持やアップセル/クロスセルが機能していると評価される。徐々に利用する機能を増やす事例が多く、顧客から「使うほどダシが出るようなサービス」と言われることもあるという。
今回のラウンドには既存投資家のALL STAR SAAS FUNDとCoral Capitalに加え、新規投資家としてCarbide Ventures General PartnerとRice Capitalが参加した(Rice Capital代表パートナーの福山 太郎氏は、2023年に個人でNutmegに出資している)。
調達資金は営業体制の強化に充当し、宿泊施設や自治体などへサービス提供を拡大する予定だ。ミドル・エンタープライズの事業者におけるマーケットシェア拡大を急ぐ。業務委託などを含めて40名程度の人員を抱えるNutmegだが、今年中に最大40名程度の採用を予定しているという。
また、AIを活用したプロダクトのリリースも準備を進めており、デジタルマップ上で動作するAIコンシェルジュ機能を近く提供予定だ。多言語対応のチャットボットに留まらず、ユーザーの行動に応じてパーソナライズされたおすすめ情報を提示するなど、事業者のサービスクオリティ向上に貢献する。
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