医療DX×生成AIのカルタノバ、シードで約2億円調達──感染症・AMR対策を加速

医療DX×生成AIのカルタノバ、シードで約2億円調達──感染症・AMR対策を加速

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医療DX×生成AIで、世界の医療課題に挑むカルタノバ株式会社は、事業会社、個人投資家を引受先とするシードラウンドで、総額約2億円の資金調達を実施した。

カルタノバは医療のデジタルトランスフォーメーションと生成AIを活用し、感染症や薬剤耐性(AMR)※1対策のための意思決定支援ソリューションを開発している。主力は臨床現場で感染症診療や抗菌薬の最適使用を支援するAIアプリ「NOVA ID」であり、患者ごとの症例記録と診断補助、サーベイランスデータの可視化など多機能を組み合わせている。世界各地の感染症データ、抗菌薬耐性データ、臨床情報を統合し、日本国内でのシステム実装のみならず、ウクライナ等海外の医療連携ネットワークとも結びつきを強化しつつある。

代表取締役CEOは神代和明氏。感染症および公衆衛生を専門とする医師であり、世界保健機関(WHO)や厚生労働省での実務経験を有する。内科・感染症・予防医学(米国)、内科(日本)の専門医資格を取得している。

現在、AMRはサイレントパンデミック※2として、2050年には世界で年間最大1000万人の関連死、2兆ドル超の経済損失が懸念されており、G7やWHOでも最優先課題に位置づけられている。日本においても年間8000人超の関連死が推計され、AMR対策アクションプランにより抗菌薬使用量は減少したものの、専門人材の不足、使用状況の把握、データ基盤整備における地域格差といった課題は依然として残る。その解決には、デジタル技術を活用した個別最適化が不可欠である。一方、米国がWHO脱退方針を打ち出すなど、国際社会主導のAMR対策への影響も懸念される中、日本のAMRアクションプランでは、データ収集・サーベイランス・分析評価、国際協力が重要な柱とされており、デジタル技術の活用が強く求められている。

本ラウンドで調達した資金は、国立健康危機管理研究機構(JIHS)との共同研究や、「NOVA ID」の開発・検証、国内外の現場への実装促進を中心に充当する予定である。特にウクライナなどの支援地域で先行運用を行う計画で、厚生労働省の感染症・AMR監視システムであるJANIS(院内感染対策サーベイランス事業)の枠組みを活用し、感染症監視から臨床現場での意思決定支援までを一体化した統合システムの共同研究を進める。

さらに、災害・紛争地を含む現場での抗菌薬適正使用(AMS)や感染予防管理(IPC)の高度化、耐性菌の越境拡散リスク低減を目指すとしている。

※1 AMR(Antimicrobial Resistance/薬剤耐性):細菌が抗菌薬に対して抵抗性を獲得し、従来の薬が効きにくくなる現象。世界的に重大な公衆衛生課題とされる。
※2 サイレントパンデミック:症状が表れにくく気づかれにくい一方で、世界的に深刻な影響を及ぼす感染症危機を指す概念。

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