スマートホームサービス「SpaceCore(スペースコア)」を運営する株式会社アクセルラボがシリーズBラウンドにて、第三者割当増資による7.8億円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドでの引受先は、ケネディクス株式会社。
今回の資金調達により、同社のIoTエンジンを他社サービスに提供する「alie+(アリープラス)」事業を通じて、事業領域の拡大を目指す。
スマートホームサービスで住宅設備のデータを一元管理
SpaceCoreは、住宅設備やデバイスを一元管理・制御できるスマートホームサービスだ。アクセルラボが自社開発したIoTエンジンalie+が、各メーカーの住宅設備や同社提供のデバイスをコントロールする。
SpaceCoreは不動産デベロッパー、ハウスメーカーを主な取引先として、戸建てや集合住宅などに提供。ガス給湯器や電気錠、インターフォンなど各メーカー20種類以上の住宅設備に対応している。IoTデバイスは、SpaceCore仕様に整備した海外製商品を同社が販売する。
SpaceCore導入物件の入居者であるシステム利用者数は2万1000ユーザー。SpaceCoreの導入社数は2022年時点で250社で、今期中に500社を目指す。
今回の資金調達に際して、代表取締役CEO 小暮学氏と取締役CFO 大嘉田千尋氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
伸長するスマートホームの普及率
―― これまで、スマートホーム業界にはどのような課題がありましたか?
小暮氏:日本では、当社を設立した2017年にはスマートホームはほとんど知られておらず、普及率は1%未満でした。一方、アメリカはセキュリティ需要の高さから、同時期にはすでに普及し始めており、2026年には50%を超えそうな状況です。アメリカは、ソフトウェアメーカーが牽引する形で、プロダクトが不完全でも市場に投入し、反応を見てプロダクトを成長させたからでしょう。
スマートホームのビジネスにおいて、各デバイスや設備を連携させるためのUI/UXが非常に重要です。しかし、日本のスマートホーム業界は、どちらかというと鍵やリモコンなどのデバイス作りが先行していました。単純にソフトウェアをダウンロードするだけでスマートホーム化はできません。家にスマートホームのデバイスを設置する際には、町の工務店に依頼しなければいけないような作業も導入のハードルとして残っています。
それらを一つひとつクリアしてきた結果、現在、日本でのスマートホーム普及率は10%前後まで成長しました。当社への問い合わせも含め、約3年でおよそ5倍と、想定以上に伸びているマーケットだと感じています。
―― SpaceCoreを始めようと思ったきっかけを教えてください。
小暮氏:当社の事業は、元々は不動産会社であるインヴァランスのスマートホーム事業としてスタートしました。アメリカでのスマートホーム普及の状況を知り、アプリを自社開発してインヴァランスの物件に導入したところ、入居者からの反応が非常によく、アクティブユーザー率は60%を超えました。
インヴァランスの物件と差別化するため、3年ほどで事業をスピンアウトさせ、インヴァランスの100%子会社として、2017年に当社を設立しました。2020年にはインヴァランスからも独立しています。現在は、ワンストップで設備やデバイスのインストールから購入後のサポートまで、すべて行える体制を全国に構築できました。
住宅や空間をシームレスに繋ぐ
―― 資金調達の背景や使途について教えてください。
大嘉田氏:事業の確立を目指したシリーズAを経て、2022年からは事業成長に向けた資金調達を実施しています。
使途は主に3つあります。まずは、開発資金です。スマートホーム市場における戸建ての賃貸という新しいマーケットで、ケネディクス様と一緒に事業に取り組んでいます。また、開発資金の一部は、ケネディクス様の資本提携企業との連携を含めた開発にも充当したく考えています。
次に、海外からのデバイスの仕入れ資金。大型案件がある際にも一定量の在庫を持ち、安定供給する責任を果たす目的です。そして、最も大きいのが採用です。2022年9月末で50人ほどだった従業員を、今期は80人程度まで増やす予定です。主に開発に携わるエンジニアと、導入企業やユーザーのサポートができるセールス人材の採用を目指します。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
小暮氏:スマートホームサービスの開発で培ったIoTエンジンを提供する、alie+事業を通じて、他の業界にもIoT技術を展開していきたいと考えています。人手不足のために、IoTを活用したDXで事業の付加価値を高めたい企業が増えており、介護施設やホテルなど、不動産業界以外からも問い合わせが増えています。alie+事業は、お客様のブランドとしてスマートホームを提供できるように、当社がIoTエンジンを提供するものです。当社の提供した機能がお客様自身のサービスとして提供される事例も、すでにいくつか生まれています。
当社はソフトウェアの会社なので、得意とするUI/UXの開発によって、世の中の住宅や空間をシームレスに繋ぎ込むのが使命だと考えています。
―― スマートホームを通じて、どういった社会を目指しますか。
小暮氏:当社は今年、ミッションを新たにしました。これから目指す世界観として「『空間』にテクノロジーを遍在させて『シームレスな世界』をデザインする」ことを掲げています。
当社は大量のローデータを持っています。誰が、どんな環境で、何をどのように利用しているのか。そういったデータを使い、家や暮らしだけではなく仕事や余暇に至るまで、あらゆる場所や物に私たちのテクノロジーを遍在させることで、シームレスな世界をデザインできると思っています。
株式会社アクセルラボ
株式会社アクセルラボは、不動産会社やハウスメーカー等の住宅・不動産事業者のためのスマートホームサービス『SpaceCore(スペース・コア)』を開発・提供する会社。 『SpaceCore』は、スマートホーム機器を設置し、専用アプリで家電製品や住宅設備が連動するオートメーション化や遠隔操作可能になる「スマートホーム機能」、物件のオーナーや居住者との契約事や日々のコミュニケーションが円滑におこなえる「リレーション機能」、住んでいる地域に関するさまざまな生活サービスをユーザーが利用できる「生活サービス機能」を備える。 また、2022年より「SpaceCore」のIoT制御技術を基にした自社開発IoTエンジン「alie+(アリープラス)」の事業化を行い、従来の建設・不動産領域以外へのサービスも開始。
代表者名 | 小暮学 |
設立日 | 2017年7月31日 |
住所 | 東京都新宿区新宿4丁目1番6号JR新宿ミライナタワー |