夜間休日の緊急対応を支援、在宅医療の行き届く社会へ

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KEPPLE編集部

在宅医療機関向けオンコール代行サービスを提供する株式会社on call が、プレシリーズAラウンドにて、第三者割当増資による1.5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回のラウンドでの引受先は、インクルージョン・ジャパン、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、FFGベンチャービジネスパートナーズの4社。

今回の資金調達により、サービス提供エリアの拡大および往診最適化システムの開発を目指す。

在宅医療機関の人手不足を支援するオンコール代行サービス

同社が提供する「ON CALL」は、在宅医療機関向けのオンコール代行サービスだ。夜間休日に医療機関やその患者からの連絡を受け、必要に応じてドクターチームが医療機関の非常勤医師として往診を行う。

on callイメージ
往診は基本的に、医師とディレクター(看護師または救急救命士)の2名体制で行う。複数のドクターチームが常時待機しているため、往診までの時間を従来の30〜60%にまで削減することが可能だ。

在籍する医師は、緊急・重症な状態にある患者を対象に医療を提供する、急性期病院の若手医師を中心に採用している点が特徴だ。独自の審査基準を満たした医師とディレクターの2名体制で現地トラブルを最小限にすることで、提供する医療の質を担保する。

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往診案件の管理には、自社開発のシステムを活用している。医療機関は、ON CALLが患者に対してどのような医療を提供したのかタイムリーに把握できるほか、ON CALLにかかわる労務書類の申請にも利用可能だ。

今後は医師向けの往診最適化アプリシステム開発を強化し、医師の持続可能な働き方の実現や、効率的な往診を支援する。

2022年4月に東京23区を対象にサービス提供を開始。対応件数は3000件を突破した。今後は名古屋や福岡など、他の都市部へもサービス提供エリアを拡大する予定だ。

今回の資金調達に際して、代表取締役CEOの符 毅欣氏に今後の展望などについて詳しく話を伺った。

患者の希望に合わせた医療を提供

―― 在宅医療の現状や課題について教えてください。

符氏:高齢化が進む中、患者さんは自宅や介護施設で最期を迎えたいという希望から、在宅医療の需要が増加しています。病院以外で、病院と同等の医療が受けられるようになってきたことも一つの要因です。また、長期で入院し続けるよりも在宅で医療を受けていただく方が、医療費を抑えることができます。国の医療計画としても、医療費削減につながる在宅医療を推し進めたい考えがあります。

実際に、定期的に医師が患者宅を訪問する訪問診療の件数は増加しています。一方で、緊急時に訪問する往診の件数はこれまで大きく変わっていません。緊急時に対応する体制が不十分なためです。夜間や休日対応も必要な上に、そもそも患者さんが医療機関を訪れる外来診療と比較して、一人の医師が担当できる患者数に制限があります。

クリニックの課題
地域単位で高齢者が増える中で、医療従事者の確保はクリニックが抱える大きな課題です。当直医師や夜間のコールスタッフ採用が困難なうえ、過剰労働も避けなければいけません。過剰労働が続くと結果的に離職率が高まり、採用や教育にかかるコストが増加してしまいます。

スタートアップスカウト

―― どのようなきっかけから、on callを創業したのでしょうか?

元々は、泌尿器科を専門に医師として病院で勤務していました。臨床医としての研修中に在宅医療に携わる機会があり、高齢社会で均一かつ高品質な医療をどのように届けるか、という点に強い関心を持ったことは創業のきっかけの一つです。また、以前から人がどのような環境で最期を迎えることが幸福なのかについても興味がありました。

長野県で泌尿器科医として勤務していた際には、在宅医療を提供するかかりつけ医がいても、夜間休日の対応が満足にできない状態を目の当たりにしました。患者さんやその家族が調整を繰り返して退院できたにもかかわらず、夜間休日に十分な緊急対応ができないことで、妥当性がなくても病院に戻ってしまうんです。

こうした問題に直面し、開業医として自分の身の周りに限定して解決することもできましたが、社会全体に課題解決の仕組みを広げたいという思いからon callを立ち上げました。

医師にも働きやすさを

―― 資金調達の背景や使途について教えてください。

2022年4月に東京23区でサービス提供を開始してから、対応件数は2023年11月時点で3000件を突破しました。 医師・看護師・救急救命士などのスタッフも200名を超え、さらなるエリア拡大のために資金調達を行いました。まずは東京以外の首都圏へ広げ、福岡や名古屋などの五大都市圏へ拡大していく予定です。

また、地域在宅医療への参画や柔軟な働き方による勤務を可能にするための往診最適化システムの開発(特許出願中)を進め、2024年6月ごろには医師向けアプリのリリースも予定しています。

アプリシステムイメージ
往診の依頼が発生すると、付近にいる医師に対してシステムが自動で通知を送ります。コールセンターからの依頼を確認して、対応可否を判断した上で対応する仕組みです。

日本の高齢者医療のインフラは、持続可能でなければいけません。自分のタイミングで働ける仕組みを提供することで、多くの医師の在宅医療への参画を促したいと考えています。

―― 今後の長期的な展望を教えてください。

5年以内には、対応エリアを各県の県庁所在地レベルにまで拡大する予定です。対応想定患者数は2023年11月時点の約5000名から約30万名に増加させ、13000名の医師確保を目指しています。

また、医療の質を担保することはサービス提供において非常に重要です。今後は医療機関と医師間の情報可視化や、医師による診療へのフィードバックができるような機能を開発していきます。医師の日常業務や在宅医療への考え方、医療機関がどのように地域患者を診ているのかなどをお互いが確認できる仕組みを構築することで、患者に信頼される地域に根差した診療を提供していきたいと思います。

株式会社on call

株式会社on callは、在宅医療支援サービス『ON CALL』を開発する企業。 同社は、人員不足などを理由に在宅医療の対応ができないクリニックに代わって、同社が医師・看護師を紹介・代診するサービスである。同サービスでは、クリニック診療時間外の呼び出しなどに対して、サービスに登録している医師や看護師が、在宅診療の対応にあたる。『ON CALL』を患者とクリニックが導入することにより、患者は安心して在宅医療が受けられ、クリニックは時間外診療のアウトソーシングができる。

代表者名符毅欣
設立日2021年4月27日
住所東京都港区新橋4丁目31番3号第三名和ビル1F-9F
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