イノバセル株式会社

2024年のスタートアップによる資金調達総額は8097億円(※プレスリリース情報に基づく速報値)で前年比15.5%増となった。対前年で落ち込んだ2023年から回復し、2022年比でも増加するなど、堅調な一年だったといえる。
(株)ケップルは、スタートアップの動向を把握するうえで、資金調達と同様に重要な指標として「従業員数」に注目。2023年12月~2024年12月の国内スタートアップの従業員数を集計し、スタートアップ動向レポート「従業員数から読み解く国内スタートアップの現在地2024」としてまとめた。今回は、レポートの中からヘルスケアセクターの従業員数推移や市場動向に関する解説を紹介する。
本記事で触れるセクター別レポートの全文は、ケップルが提供するスタートアップデータベース「KEPPLE DB」のスタータープラン(初期費用・月額無料)に登録することで閲覧できる。
ヘルステック新潮流 診療DXでスタートアップ台頭
2010年代後半に、ヘルスケア分野のスタートアップの新規設立数が大きく増加している。DXの課題感が高まっていた2018年が新規設立数のピークとなっており、この時期にオンライン診療・健診結果データ化などのヘルステック分野のサービスに取り組むスタートアップが概ね出揃ったため、その後は新規設立数が落ち着いた。

注:上場したスタートアップや閉鎖企業などを含む
ヘルスケアや創薬といったライフサイエンス系スタートアップでは、評価額100億円を超える企業が続々と登場している。株式会社CureAppや株式会社MICINなどがその代表例だ。
そのほかにも、再生医療に取り組むオリヅルセラピューティクス株式会社、イノバセル株式会社、がん治療薬の開発を進めるChordia Therapeutics株式会社、株式会社AskAtといった企業も着実に成長を遂げている。なかでもChordia Therapeuticsは、2024年に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たし、大きな注目を集めていた。

注:2024年1月時点=100として指数化(セクター全企業の従業員数が対象)
世界ではヘルスケア市場が拡大 高齢化と技術革新が追い風に
世界的な高齢化やバイオテクノロジーの進化、さらにはパンデミックをきっかけとしたヘルスケアへのニーズ拡大により、同分野の市場は今後も大きく伸びていくと見込まれている。世界のヘルスケア市場は、2023年に約21.2兆ドルと推計されており、2024年から2032年にかけて年平均成長率(CAGR)9.1%で拡大し、2032年におよそ44.8兆ドルに達するという予測もある。※1
高齢者人口の増加により、心臓病、糖尿病などの慢性疾患や、アルツハイマー病などの加齢に伴う疾患への治療ニーズも高まってきた。
創薬分野では大手製薬企業に加え、多くのスタートアップが新たな治療法の研究開発に挑戦している。現在、世界の医薬品開発品目のうち、実に8割を売上高5億ドル以下のスタートアップが担っており、特にアメリカを中心に投資の活況が続いている。※2
大手企業がパイプライン拡大のため、有望な技術を持つスタートアップを買収する動きもみられる。一方で、世界経済の低迷や競争激化の影響を受け、資金調達に苦しむ企業も少なくない。実際、2023年には破産申請したバイオテクノロジー企業の数が過去最多を記録した。
また、AIやIoTなどを活用したヘルステック(=デジタルヘルス)とよばれる領域でもスタートアップが多数設立され、ユニコーン企業も誕生している。遠隔診療やAIを活用した画像診断、生活習慣病やメンタルヘルスを対象としたデジタルセラピューティクスのアプリなどが開発され、医療サービスが拡大している。この分野の市場規模は、2024年には約3360億ドルと推定され、今後CAGR13.1%で成長を続け、2034年までに約1兆ドルに達すると予想されている。※3
こうした成長を牽引する代表例のひとつが、遠隔診療の急速な普及だ。2020年のパンデミックを契機に、ビデオ通話システムを活用した遠隔診療の導入が欧米を中心に一気に拡大した。都市部から離れた地域に住む人々が手頃な価格で医療サービスを受けることができる手段として、今後は新興国においても需要が高まることが予想されている。
創薬・介護で官民支援強化 スタートアップの成長後押し

※プレスリリース情報に基づく
国内では、2024年時点で総人口に占める65歳以上の割合は約30%となっており、高齢化率は世界一となっている。※4今後も医療・介護サービスへの需要はさらに高まっていくとみられる。特に介護業界では人手不足が深刻化しており、介護施設を運営する大手企業が人材確保を目的として中小企業を買収する動きが活発化している。こうした現場の課題に対応すべく、「介護テック」とよばれる新たな分野も登場している。記録・請求業務を効率化するソフトウェアや、高齢者の状態を見守るセンサーなど、さまざまなテクノロジーを活用したサービスがスタートアップによって開発されている。政府も「介護テクノロジー導入支援事業」を開始し、介護事業者による介護ロボットやICTなどのテクノロジーの導入に対して補助金を設けることで介護業界の生産性向上を図っており、介護テック普及の一助となっている。
一方、創薬分野では大学発スタートアップを中心に、がんや難病に挑む新薬の開発が進んでいる。ただし、新薬の開発には多額の資金が必要とされるなか、国内の創薬ベンチャーへの投資額は年間250億円とアメリカの0.4%にとどまっている。※2これに対して、AMED(日本医療研究開発機構)は創薬ベンチャーエコシステムの底上げを図るべく、医薬品の実用化開発に補助金を交付する「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」を実施しており、新薬開発の加速が期待される。
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本セクターの、2024年従業員数ランキング(2023年12月から2024年12月までの期間を集計)と主要なカテゴリーに属する国内外のスタートアップの動向、掲載企業の一覧は KEPPLE DB でご覧いただけます。
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※1 SNS Insider Healthcare Market By Type (Pharmaceuticals, Healthcare Services, Medical Devices, Biotechnology, Pharmacy And Retail, Home Healthcare, Diagnostics, Health and Wellness), By Regions & Global Forecast 2024-2032
※2 日本経済新聞 創薬ベンチャー、5年計画で投資額2倍に 創薬サミット
※3 Towards Healthcare Digital Health Market to Touch USD 1,080.21 Billion by 2034
※4 総務省統計局 統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-
掲載企業
Writer

高 実那美
株式会社ケップル / Data Analysis Group / Database Division / アナリスト
新卒で全日本空輸株式会社に入社し、主にマーケティング&セールスや国際線の収入策定に従事。INSEADにてMBA取得後、シンガポールのコンサルティング会社にて、航空業界を対象に戦略策定やデューディリジェンスを行ったのち、2023年ケップルに参画。主に海外スタートアップと日本企業の提携促進や新規事業立ち上げに携わるほか、KEPPLEメディアやKEPPLE DBへの独自コンテンツの企画、発信も行う。