株式会社SmartHR

2024年のスタートアップによる資金調達総額は8097億円(※プレスリリース情報に基づく速報値)で前年比15.5%増となった。対前年で落ち込んだ2023年から回復し、2022年比でも増加するなど、堅調な一年だったといえる。
(株)ケップルは、スタートアップの動向を把握するうえで、資金調達と同様に重要な指標として「従業員数」に注目。2023年12月~2024年12月の国内スタートアップの従業員数を集計し、スタートアップ動向レポート「従業員数から読み解く国内スタートアップの現在地2024」としてまとめた。今回は、レポートの中からHRセクターの従業員数推移や市場動向に関する解説を紹介する。
本記事で触れるセクター別レポートの全文は、ケップルが提供するスタートアップデータベース「KEPPLE DB」のスタータープラン(初期費用・月額無料)に登録することで閲覧できる。
業務の非効率に挑むHRスタートアップの台頭
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2014年以降スタートアップの新規設立数が大きく増加した。少子高齢化で人材不足が深刻化する中、非効率的な作業を効率化する労務やタレントマネジメント分野のSaaSを開発するスタートアップが多数誕生している。労務分野では株式会社SmartHR、jinjer株式会社、タレントマネジメント分野では株式会社HRBrain、株式会社サイダスなどが評価額100億円以上となった。
2018年に働き方改革が行われて以降、単発アルバイトや副業を支援するスタートアップなども多く誕生、労働者の多様な働き方やキャリアをサポートしている。特にHRテックは人事領域の課題をAIやクラウドなどの活用で解決し、効率化する手段として注目を集めており、スタートアップを中心に様々なサービスが開発されている。
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人事業務自動化と新たな働き方を支える海外HRテック
世界の人材ビジネスの市場規模は、2023年の約7600億ドルからCAGR13.1%で成長し、2031年には約2兆ドルに達すると予想されている※1。中でも世界のHRテックの市場規模は、2024年の約405億ドルからCAGR9.2%で成長し、2032年までに約818億ドルに達すると予測されている※2。人事管理業務における自動化システムの導入が進んでいることが追い風だ。特に生成AIの登場により、人事業務の自動化が加速している。
アメリカのERIN TechnologiesやイギリスのWorkable Technologyは、リファラル採用に関する一連の作業を自動化・管理するサービスを運営。リファラル採用は既存の従業員が自社に適していると考えられる人材を紹介するシステムであり、企業が適切な候補者を採用し、定着率向上につながる手法として注目を集めている。
労務分野では、給与計算、ITデバイス、経費などを一元管理するプラットフォームを運営するアメリカのRippling People CenterではシリーズFで2億ドルの資金調達を実施した。同社の評価額は135億ドルとなったことが発表されている。また、同じくアメリカのデカコーンであるGustoも、勤怠管理や給与計算を行うソフトウェアを運営している。
海外では、貯蓄の少ない人々が給料日前に現金が足りなくなり、手数料の高いローンを組み、かえって生活が苦しくなるという問題がある。このような人々への生活支援策の一環として、より安価で安全な給与の前払いサービスを運営するスタートアップが登場している。イギリスでは、Wagestreamが給与の前払いや金融教育を提供するアプリを運営。2024年には1750万ポンドの資金調達を実施したことを発表した。
国内では、クラウド型HRサービスが企業成長を後押し
国内の人材ビジネスの市場規模は、2022年度からCAGR3.3%で推移し、2030年度には19兆3173億円に達すると予測される。労働力人口は減少傾向だが、人材不足を背景とした人材需要の高まりにより市場は緩やかな成長傾向が続くと予想されている。
HRテック企業では、従来は自社のサーバーを用いたオンプレミス型のシステムが一般的だったが、近年は低コストなクラウド型のサービスが普及している。例えば、従業員増加数が上位となった株式会社SmartHRは、労務管理機能に加え人事評価、人材配置などを支援するタレントマネジメント機能を搭載することで事業領域を拡大している。
また、スキマバイトアプリ「タイミー」を運営する株式会社タイミーは、2024年7月に東京証券取引所グロース市場へ新規上場した。さらに、エンジニア採用に特化した採用サービスなども普及。AIを活用し、エンジニアと企業をマッチングする転職サービス「Findy」を運営するファインディ株式会社も従業員増加数が上位となった。
2017年以降経済産業省はIT導入補助金制度を施行しており、対象のITツールを新たに導入する中小企業や小規模事業者向けに補助が行われている。IT導入支援事業者として多くのHR分野のスタートアップが採択されており、HRテック普及への追い風となっている。
各セクターの詳細レポートが見られるのは「KEPPLE DB」だけ
本セクターの、2024年従業員数ランキング(2023年12月から2024年12月までの期間を集計)と主要なカテゴリーに属する国内外のスタートアップの動向、掲載企業の一覧は KEPPLE DB でご覧いただけます。
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※1 GlobeNewswire 「Staffing and Recruitment Market Worth $2,031.34 Billion, Globally, by 2031 - Exclusive Report by The Insight Partners」
※2 FORTUNE BUSINESS INSIGHT 「人事 (HR) テクノロジー市場規模2024~2032年」
Writer

高 実那美
株式会社ケップル / Data Analysis Group / Database Division / アナリスト
新卒で全日本空輸株式会社に入社し、主にマーケティング&セールスや国際線の収入策定に従事。INSEADにてMBA取得後、シンガポールのコンサルティング会社にて、航空業界を対象に戦略策定やデューディリジェンスを行ったのち、2023年ケップルに参画。主に海外スタートアップと日本企業の提携促進や新規事業立ち上げに携わるほか、KEPPLEメディアやKEPPLE DBへの独自コンテンツの企画、発信も行う。
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