ジョーシス株式会社

2024年のスタートアップによる資金調達総額は8097億円(※プレスリリース情報に基づく速報値)で前年比15.5%増となった。対前年で落ち込んだ2023年から回復し、2022年比でも増加するなど、堅調な一年だったといえる。
(株)ケップルは、スタートアップの動向を把握するうえで、資金調達と同様に重要な指標として「従業員数」に注目。2023年12月~2024年12月の国内スタートアップの従業員数を集計し、スタートアップ動向レポート「従業員数から読み解く国内スタートアップの現在地2024」としてまとめた。今回は、レポートの中から業務ソフトウェアセクターの従業員数推移や市場動向に関する解説を紹介する。
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新興SaaS企業の焦点は「ニッチ」と「専門性」へ
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注:上場したスタートアップや閉鎖企業などを含む
2010年代後半から、クラウド型SaaSの普及やリモートワークの広がりを背景にスタートアップ企業の設立が増加した。特に2018年から2021年にかけて、タスク管理、データ分析、契約管理など幅広い業務領域で新たなビジネスモデルが登場した。しかし、近年では市場の成熟が進んだ領域もあり、新規参入のハードルが高まりつつある。 加えて、投資環境の不透明感も影響し、スタートアップの新規設立数は減少傾向にある。そのため、直近で設立されたスタートアップは、宿泊施設や駐車場管理、データプライバシー、SNS運用代行など、特定業種向けの業務支援ツールやセキュリティ対策ソリューションといった、よりニッチで専門性の高い領域に特化する企業が増加している。
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注:2024年1月時点=100として指数化(セクター全企業の従業員数が対象)
評価額100億円以上の企業には、検索語句だけでなく「意図を予測する」FAQ管理ツールを提供する株式会社Helpfeel、分散しがちなExcelやスプレッドシートの情報を集約し、予算策定や予実管理などをサポートする「Loglass」を提供する株式会社ログラスなどがある。
世界のユニコーンが拓く業務支援の新潮流
世界の業務ソフトウェア市場は、2022年に約2167億ドル、2030年までにCAGR約11.5%で成長が見込まれている。成長の背景には、生成AIや機械学習の進展が挙げられる。例えばAirtableは、データベースとプロジェクト管理を組み合わせた柔軟なプラットフォームであり、生成AIによるタスク分類や管理の効率化を実現している。また、新興国でのデジタル化の進展も成長を後押しする。特にインドは象徴的な事例であり、政府主導の「Digital India」政策によって電子政府の構築やICTインフラの整備を進め、国全体のDXを後押ししている。
海外ではユニコーン企業が多数存在。そのうちの一つであるアメリカのWorkatoは、企業内のシステムと連携し、業務プロセスを自動化するプラットフォームを運営している。異なるアプリケーションやシステムをクラウド上で統合するサービスiPaaSの一例である。また、営業活動における提案資料やタスクなどを管理するセールスコンテンツ管理プラットフォームを運営するベルギーのShowpadなども存在し、営業力の強化や商談の効率化を図っている。
中小企業にも広がる業務DX──SaaS浸透が変える現場の意思決定
日本においても、業務ソフトウェア市場は成長を続けており、2023年には市場規模が5040億円に達した。この成長の背景には、紙文化やファックスが根強く残るアナログな業務慣習の見直しが進んでいることがある。業務慣習の見直しを加速させた要因として、政府によるDX化推進政策も挙げられる。たとえば、電子帳簿保存法の改正やインボイス制度の導入が実施されたことで、帳票管理や請求書処理のデジタル化が強く求められるようになった。マーケティングや顧客管理などのフロントオフィス領域でも、CRMやデータ分析ツールが導入され、企業全体のデジタル化が加速している。
対話型音声AI SaaS「IVRy」を提供することで業務プロセスの迅速化を図る株式会社IVRyは、従業員増加数が1位となった。そのほか、ジョーシス株式会社は、ITデバイスやSaaSの統合管理を通じて、業務コストの削減やセキュリティの向上を支援している。
建設業向けに業務プロセス管理を提供する燈株式会社も、プロダクト開発を促進し、従業員数を伸ばしている。
地域や企業規模を問わずDXが浸透しつつあり、中小企業においても持続的な競争力の獲得が今後の鍵となる。
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※プレスリリース情報に基づく
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本セクターの、2024年従業員数ランキング(2023年12月から2024年12月までの期間を集計)と主要なカテゴリーに属する国内外のスタートアップの動向、掲載企業の一覧は KEPPLE DB でご覧いただけます。
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Writer

高 実那美
株式会社ケップル / Data Analysis Group / Database Division / アナリスト
新卒で全日本空輸株式会社に入社し、主にマーケティング&セールスや国際線の収入策定に従事。INSEADにてMBA取得後、シンガポールのコンサルティング会社にて、航空業界を対象に戦略策定やデューディリジェンスを行ったのち、2023年ケップルに参画。主に海外スタートアップと日本企業の提携促進や新規事業立ち上げに携わるほか、KEPPLEメディアやKEPPLE DBへの独自コンテンツの企画、発信も行う。