ショートドラマ×ECで挑む新市場──ニジュウロクド、5000万円調達で生成AI体制を強化

ショートドラマ×ECで挑む新市場──ニジュウロクド、5000万円調達で生成AI体制を強化

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株式会社ニジュウロクドは、動画とコマースを組み合わせたコンテンツコマース分野の事業拡大に向け、ファンコミュニケーションズを引受先とするシードラウンドで5000万円の資金調達を実施した。調達資金は生成AIを活用したショート動画制作体制の強化や、認知から購買までを一貫して支援するビジネスモデルの推進に充てる計画である。

2020年6月に設立されたニジュウロクドは、ショートドラマの制作・配信を主軸に、タレントのマネジメント、デジタルマーケティング、越境ECなど幅広いデジタル・エンターテインメント事業を展開している。2024年7月には、LINEミニアプリを活用したショートドラマ配信サービス「SNACKドラマ」を立ち上げ、第1作「デリバリー配達員の逆転人生」を公開した。

「SNACKドラマ」は、1話約90秒の短尺コンテンツをLINEのミニアプリ経由で提供するサービスである。ユーザーはアプリをダウンロードすることなく、手軽にショートドラマを視聴できる仕様となっている。サービス公開前にSNSで展開したティザー動画は、1週間で200万回以上再生されるなど、初期段階から高い関心を集めている。収益モデルとしては、冒頭数話を無料で提供し、以降のエピソードを1話88円で販売する課金方式を採用している。

ニジュウロクドは、ショートドラマの制作スタジオとタレント事務所機能を兼ね備えた複合事業モデルを構築している。自社でタレントの育成・マネジメントを行い、デジタル広告やプロモーションと組み合わせて活用する。また、日本と中国の合同制作体制を取り入れ、ライブコマースやコミュニティコマースなど海外で先行する手法も積極的に導入している。

代表取締役の宮澤一博氏は、創業者でもあり、日本と中国の両国での生活経験を背景に、両国の文化や言語に精通している。大学在学中にはSNSメディア事業を起業し、その後売却した経験を持つ。中国で進展するショートドラマや動画コマースの潮流にいち早く着目し、国内市場向けに独自のビジネスモデルを展開している。

ショート動画やライブコマースを活用したコンテンツコマース分野は、グローバルで拡大傾向にあり、日本国内でも成長が続いている。中国では「抖音(中国版TikTok)」をはじめとするプラットフォーム上で、動画視聴とECが密接に連動した新たなビジネスモデルが確立している。インフルエンサーやKOLによるライブコマースも経済圏として定着しつつある。YHリサーチ社の調査によれば、2029年にはショートドラマの世界市場規模が約8.8兆円、国内市場も2026年には1500億円に達する見込みとされる。

一方で、動画視聴から購買にシームレスにつなげる“コンテンツコマース”モデルを確立している事業者は国内でまだ少なく、SNS内で購買体験を完結させる導線の整備など、日本市場特有の課題も残る。

ニジュウロクドは、2024年7月の新サービス開始までに、PR型ショートドラマで1600万回のオーガニック再生、TikTok経由で月間800件のコンバージョン、不動産査定の送客1000件(CPA50%減)など、既存クライアント向け施策でも一定の成果を上げている。

今回の資金調達後は生成AIを活用したショート動画制作の効率化や、TikTokドラマ・ライブ配信・KOL連携などのPDCAノウハウをSaaS化し、D2Cブランドの支援では商品開発から販売までワンストップで提供する「クローズドループ型」支援モデルの構築を進める方針である。

同社は、今回の資金調達の背景について「動画とコマースが融合する市場が急拡大する中で、低コストかつ柔軟な動画制作やライブ販売体制に対するブランドのニーズが高まっている」と説明している。今後は、生成AIを活用した制作体制の整備を進め、再現性の高い支援モデルを構築する計画だ。

日本国内では、ショートドラマやライブコマース、SNSとECを組み合わせた“コンテンツ起点コマース”の事例はまだ限られている。ニジュウロクドのような複合型事業モデルが今後どのように市場に浸透していくか、引き続き動向が注目される。

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