Cranebio株式会社

Cranebio株式会社は、シリーズBラウンドにおいて第三者割当増資による約3.9億円の資金調達を実施した。引受先は地域経済活性化支援機構、AGSコンサルティング、東北大学ベンチャーパートナーズ、あきぎんキャピタルパートナーズが運営する各ファンドである。
Cranebioは2021年4月に設立。2024年には科学誌「Life Sciences Review」にてアジア太平洋地域Genomics Solutions部門の“COMPANY OF THE YEAR”に選出された。主力事業は、DNAオリガミ技術を応用した迅速検査キットの開発と、ユニ・チャームと共同開発したフェムテック製品の展開である。DNAオリガミとは、DNA分子をナノスケールで設計・折り畳む分子工学手法であり、高度な分子認識や制御が可能となる。
DNAオリガミを用いた人工酵素「Dozyme」は、特定のウイルスや細菌由来のDNA・RNAの有無を検出し、酵素活性のON/OFF制御を可能にする。これにより、スマートフォンだけで簡易な操作による高感度な核酸増幅検査(PCRと同等レベル)を実現する。キットは全て使い捨て部材で構成されており、特殊な装置や測定人員を必要としないことが特徴だ。応用例としては、ヒトパピローマウイルス(HPV)のセルフ検査や大腸菌の迅速検査、水質や食品衛生のモニタリングが挙げられる。
フェムテック分野では、2023年に「ソフィ妊活タイミングをチェックできるおりものシート」を開発。従来、医療機関や検査機関で行われていた妊活タイミング管理・健康検査を、消費者が日常生活で手軽に実施できる製品として展開している。
代表取締役は山本大輔氏。設立以来、代表を務めており、ヘルスケア領域で「検査をより身近に、シンプルにしたい」という課題意識から事業を開始したとされる。技術開発はCTOの齋藤敬太氏が主導し、DNAオリガミ技術を応用した製品開発や外部との学術連携も積極的に進めている。
核酸検査市場はPCR技術の普及を背景に成長を続けている。Fortune Business Insightsによると、2023年時点で世界のPCR市場規模は約1.3兆円、2032年には2.7兆円に達する見込みだ。現場即時検査(POCT)への需要も高いが、従来型PCR装置やリアルタイム測定機器にはコストや専門人材の確保が課題となってきた。こうした状況を受け、米国のVisby Medicalなどがポータブル検査機器を開発する一方、装置を用いず高感度な検査を可能にする技術の確立が業界の課題となっている。
Cranebioによれば、DNAオリガミ技術を応用したセルフ検査システムは「混ぜるだけで配列特異的な発光・発色」を実現している。この方式により、EC流通やギグワーカーによる配送など既存の物流ネットワークを活用した製品展開が可能となる。食品、環境水、医療分野における応用拡大が期待される中、競合との差別化として工程の簡素化や使い切りモデルによるコスト削減が挙げられる。
今後は既存製品群のラインアップ拡充に加え、食品検査や医療検査分野での提携や事業参入を進める計画である。また、国内外における事業基盤の強化およびグローバル展開を本格化を進める方針だ。