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拡大見込む肥満症薬、多様化進む創薬分野の市場動向

がんは依然として世界中で主要な死因のひとつとして存在感を放っている。一方で、その診断および治療技術は日々進化しており、新たな治療法や診断法を開発し、がん患者の予後改善に取り組む企業も増えてきた。
グローバルインフォメーションによると、がん診断の世界市場は2023年に約151.3億米ドルに達し、2032年まで年平均8.5%の成長率(CAGR)が見込まれている。特に北米は市場をリードしており、2023年には全体の35.89%を占め、がん診断分野における主要な地域となっている。※
腫瘍バイオマーカー検査、画像検査、核医学検査、生検など、多様な診断方法ががん診断の範囲を拡大し、乳がん、大腸がんなどのさまざまながんの検出精度が高まりつつある。
今後も、診断技術の高度化や高精度な検査方法の普及が進むことで、早期発見と治療の成功率がさらに向上すると見られている。本記事では、がんの診断・治療に取り組む注目のスタートアップを紹介する。
同社は、QST(量子科学技術研究開発機構、旧放射線医療総合研究所)認定ベンチャー企業だ。銅の放射性同位体※である64Cuを高品質で量産し、64Cu治療薬を合成する独自技術により、放射性医薬品の創薬支援プラットフォームを開発する。64Cuは他の放射性元素と違い、診断と治療の両方に用いることができる特徴を持つ。
2025年5月には、シリーズBファイナルクローズにて、ニッセイ・キャピタルを引受先とした第三者割当増資による、3億円の資金調達を実施した。
企業HP:https://craif.com/
尿検査により疾患の早期発見や個別化医療を実現するための技術および製品を開発する、名古屋大学発のスタートアップ企業。尿中のマイクロRNAをAIで解析することで、がんのリスクを判定するスクリーニング検査「miSignal®(マイシグナル)」を提供する。マイクロRNAは、細胞の遺伝子発現を調節する小さなRNA(リボ核酸)で、がんの発症や進行に関与することが知られている。同社は尿中のマイクロRNAを網羅的に捕捉し、AIを組みあわせて医療に応用することで、がんのリスクを数値化し、早期発見を可能とする技術を開発した。2025年6月時点で、検査導入医療機関数1000軒を突破した。ほかにも、職場でがんを早期発見し、がんによる離職リスク軽減のための、企業の健康経営サポートも行っている。
2025年6月には、シリーズCエクステンションラウンドにて、ウイング・キャピタル・パートナーズ、Nagase Future Investmentsを引受先とした資金調達を実施した。
企業HP:https://tearexo.jp/
涙で乳がんを検出する方法「TearExo法」を開発する神戸大学発スタートアップ企業。TearExo法は、ドライアイの検査に用いられる「シルマー試験紙」と呼ばれる小さくて薄い短冊状のろ紙を目じりに置き、涙をしみこませて検査を行う。涙に含まれるエクソソームを回収し、そのまま自動分析装置で分析する。
2025年5月には、TearExo®法の実用化に向けて、綜研化学株式会社を引受先とした第三者割当増資による資金調達を実施した。
マイクロRNAを標的とする自然免疫応答活用がん治療薬を開発する。ヘアピン状の核酸医薬品を利用して、がん細胞を選択し自然免疫を活性させるがん免疫治療薬(第三世代STINGアゴニスト)「TKG-001」の研究・開発を行っている。
2024年1月には、シードラウンドにて、リアルテックファンド、三菱ガス化学株式会社を引受先とした第三者割当増資およびNEDO-DTSU交付による、1.5億円の資金調達を実施した。
企業HP:https://www.survbiopharma.co.jp/
がん細胞の中で増殖する改変ウイルスを活用した、がんの治療法を研究開発する鹿児島大学発のスタートアップ企業。がん細胞で特異的に高発現する「サバイビン」を利用して、がん細胞だけを攻撃し、正常細胞は攻撃しない腫瘍溶解性ウイルス(Surv.m-CRAシリーズ)の研究・開発を行う。悪性骨腫瘍の治療薬として臨床開発を進めている「Surv.m-CRA-1」のほかに、免疫を賦活する治療用遺伝子を搭載したタイプ2の開発候補品 「Surv.m-CRA-2-G」と「Surv.m-CRA-2-IC」を保有している。
2024年4月には、同社と鹿児島大学との共同研究の課題が、小戝健一郎(鹿児島大学教授/当社取締役会長兼CSO)を 研究開発代表者として、AMEDの令和6年度「橋渡し研究プログラム(シーズF)」に採択された。
企業HP:https://b-ms.tech/
バーチャル内視鏡検査システム「AIM4CRC」の開発などを行う。AIM4CRCは、高精度な仮想的腸管洗浄AIとポリープ検出AIにより、下剤による前処置が不要のバーチャル内視鏡検査システムだ。高精度な大腸検査として、無下剤検査の臨床実装を実現することを目標とする。先端医科学技術で大腸がんの早期発見、予防を目指す。
2025年2月には、シリーズAラウンドにて、Beyond Next Ventures、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ、グローバル・ブレインなどを引受先とした9.3億円の資金調達を実施した。
企業HP:https://ferroptocure.com/
「フェロトーシス」を活用した抗がん剤や、その他疾患の治療薬を開発する。がんや神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病など)、肝炎(NASH)など様々な疾患において、その発生や悪化に関わるとされているフェロトーシスに注目し、フェロトーシスの制御メカニズムを破綻させる抗がん剤を生み出すことにより、がん患者に新しい治療法を届けることを目指す。
2023年6月には、シードラウンドにて、東京理科大学イノベーション・キャピタル、Diamond Medino Capital、みらい創造機構、ANRI、国立研究開発法人科学技術振興機構などを引受先とした第三者割当増資による資金調達を実施した。
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※グローバルインフォメーション「がんの診断市場規模」
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