はじめに
新型コロナウイルス感染拡大の影響で通販需要などが増加し、物流・運送業界では運送需要が高まった。これにより、以前から存在していた人手不足の問題が一層深刻化しており、特にドライバー不足が進行している。さらに既存のドライバーの高齢化や、業務効率化・自動化の遅れ、長時間労働といった労働環境も問題となっている。
国土交通省が2020年7月に発表した「物流を取り巻く動向について」※によると、運輸業界は約38兆円の産業であり、そのうち約24兆円を物流業界が占めている。また、物流業界では、全産業の雇用者数の約4%が働いているとされる。
物流・運送業界は、消費者が快適な生活を送るために欠かせない存在であると同時に、EC市場やインターネットサービスの成長により今後ますます拡大すると予想される。AIやDX導入が、課題解決において重要な役割を果たすことが期待されている。
スタートアップ5選
株式会社enstem
生体データを活用してドライバーの事故率削減を目指す「Nobi for Driver」を提供する。心拍数や血圧などの生体データを、ドライバーが装着する専用のスマートウォッチで取得し、危険な兆候がないか常にモニタリングする。そのほか、個人向けの生体データによる健康管理の「Nobi」や、組織パフォーマンスの向上に貢献する「Nobi for Team」を提供している。
2023年7月には、シリーズAラウンドにてインクルージョン・ジャパンを引受先とした第三者割当増資による、1.3億円の資金調達を実施した。Nobi for Driverは2022年6月にリリースし、2023年7月時点で導入社数は約120社、利用者数1500名を超える。
株式会社enstem
設立:
2019年
企業HP:
株式会社Logpose Technologies
運送事業者向け配車プラットフォーム「AI配車アシスタント LOG」を開発・運営する。AI配車アシスタント LOGは、ドライバーの勤務時間や配送場所、車格などの制約条件にマッチした配車・配送計画を自動作成することができる。条件を入力後、AIが瞬時に計算し数十秒から数分程度で結果を出力することが可能。また、カレンダー機能によりトラックへの荷物の積み置きや、日をまたいだ運送などのスケジュール管理ができる。
2023年1月には、プレシリーズAラウンドにてジェネシア・ベンチャーズを引受先とした第三者割当増資による、8000万円の資金調達を実施した。2022年5月には、マイクロソフト社が提供する、スタートアップ支援プログラム「Microsoft for Startups」に採択された。
株式会社Logpose Technologies
設立:
2018年
企業HP:
CBcloud株式会社
荷主と配送パートナーを直接つなぐプラットフォーム「PickGo」を運営する。 宅配業者や運送業者の業務を支援するシステム「SmaRyu」や、買い物代行サービス 「PickGo 買い物代行」も提供する。日本航空、JALエービーシーとの提携により、出発空港にて預けた荷物を羽田空港到着後、当日中にホテルまで配送するサービス「手荷物当日配送サービス」も開始した。
2021年12月には、シリーズCラウンドにて、国内および海外の機関投資家や事業会社を引受先とする第三者割当増資及び大手金融機関からの融資により、総額約60億円の資金調達を実施した。2023年4月には、PickGo登録数が、軽貨物配送パートナー5万人、一般貨物運送会社パートナーが2,000社となった。
CBcloud株式会社
設立:
2013年
企業HP:
アセンド株式会社
運送事業者向けの業務管理クラウドサービス「ロジックス」を提供する。ロジックスは、配車計画の作成、段階に応じてステークホルダーごとに必要な書類の出力作業や請求書の作成ができ、管理業務と経営を一気通貫でDXするサービス。
2021年12月には、プレシリーズAのエクステンションラウンドにて、ベンチャーキャピタルファンドを引受先とした第三者割当増資による、5000万円の資金調達を実施した。また、2023年4月には、ロジックスに業務管理機能が追加された。デジタルタコグラフ等から取り込まれるドライバーの労務情報が配車表と連動し、コンプライアンスを遵守した配車計画の作成・労務管理を、容易に行うことが可能となった。
アセンド株式会社
設立:
2020年
企業HP:
株式会社traevo
物流サプライチェーン向け業界横断型動態管理プラットフォーム「traevo」を運営する。 traevoは、車両に搭載しているデジタルタコグラフや動態管理サービスから、車両の動態(車両の位置や作業ステータス)情報を車載機器メーカー、サービスを問わず一元的に集約・管理できる。
荷主・物流事業者・着荷主は関係車両の位置やステータスを共有・管理ができ、物流品質向上、安全確保、労働時間最適化などの改善が可能。さらに、災害時の状況把握や支援物資輸送、CO2排出量算出などの活用も目指す。
2022年4月には、鈴与を引受先とする第三者割当増資による資金調達を実施した。2022年9月には、デジタル庁主催の「good digital award」のスタートアップ部門で優秀賞を受賞。
株式会社traevo
設立:
2022年
企業HP:
おわりに
今回紹介した企業は、AIやDXなどによる自動化や業務効率化を加速させている。今後も、物流・運送業界関連のスタートアップの動向にはさらに注目が集まりそうだ。
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参考:国土交通省 「物流を取り巻く動向について」