アイクリスタル株式会社

AI技術を活用し製造プロセスの最適化に取り組むアイクリスタル株式会社は、2025年9月に総額4.5億円の第三者割当増資を実施した。今回のラウンドにはジャフコグループ、SBIインベストメント、ディープコアが参加している。調達資金は、新たなプラットフォーム「メタファクトリー」の開発加速や事業体制強化に充てられる予定だ。
アイクリスタルは2019年に設立され、名古屋大学での半導体製造プロセス研究を基盤に創業された。主力ソリューションはAIとデータ解析を組み合わせたプロセスインフォマティクス(PI)であり、製造装置や生産ラインから取得したデータをもとに工程設計や品質改善を支援している。十分なデータが蓄積されていない現場でも、限られたサンプルから信頼性の高いAIモデルを構築できる点が特徴だ。従来、熟練技術者の経験や勘に依存していた条件設定をデータ化・可視化することで、開発・生産期間の短縮や歩留まりの向上に貢献している。
同社のサービスには、受託解析を中心とした「Professional」、教育プログラム「アイクリスタル寺子屋」、企業のPI導入を伴走支援する「PI顧問」がある。応用領域は半導体にとどまらず、自動車、化学、ガラス、樹脂、電池など幅広い業種に拡大しており、累計100プロジェクトを突破。導入企業での現場展開も進んでいる。
代表取締役の髙石将輝氏は、共同創業者の牧野隆広氏とともに事業を牽引している。技術顧問には名古屋大学の宇治原徹教授が参画しているほか、2025年9月にはアクセンチュア製造業DX部門の元日本統括である丹羽雅彦氏が取締役に就任し、経営体制を強化した。
「メタファクトリー」は、工場や製造ライン全体を仮想空間で再現し、複数プロセス間の最適化を高速にシミュレーションする基盤だ。2023〜2024年度にはNEDOの委託事業として、名古屋大学、グローバルウェーハズ・ジャパン、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングと共同研究を実施。SiウェーハからCMOSイメージセンサー完成までの30工程を仮想接続し、従来比で約70%ノイズ特性を改善する成果を得た。部分最適から全体最適化への移行を示す取り組みとして注目されている。
教育プログラムや現場に根ざしたアプローチも評価されており、既存顧客の部門横断展開や新素材・新用途分野への拡大が進行中だ。今後もデータやAIを活用した最適化ニーズは高まると見込まれており、アイクリスタルは技術開発と事業基盤の強化を通じて、国内外の製造業におけるデジタル化の深化に寄与する姿勢を示している。










