核医学スタートアップのAMS企画、1.9億円を調達——セラノスティクスの社会実装を加速

核医学スタートアップのAMS企画、1.9億円を調達——セラノスティクスの社会実装を加速

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核医学領域で事業を展開するAMS企画株式会社が、プレシリーズAラウンドで1.9億円の資金調達を実施した。既存株主のみらい創造インベストメンツに加え、新たにビジョンインキュベイトやその他投資家を引受先とした第三者割当増資となり、累計調達額は約3億円に達した。

AMS企画は2019年2月、北海道大学発の認定スタートアップとして設立された。核医学の診断と治療を統合する「セラノスティクス」技術の社会実装を事業の主軸とし、医療と研究現場における技術導入を進めている。主な事業内容は、セラノスティクス用PET診断薬(68Ga-PSMA-11など)の開発・導入、RI(放射性同位元素)治療薬(例:アスタチン211)の研究、国際治験プロジェクトへの参画、そして放射性廃棄物管理装置(RI排水処理装置)の開発と提供である。核医学治療にともなう排水の放射能管理や安全性の向上といった課題に対応する技術開発も進めている。

代表取締役の菅原雄一郎氏は、創業者として設立時から核医学領域に注力してきた。菅原氏は北海道大学発スタートアップの流れを汲みつつ、放射性同位元素利用に関する実務的・社会的課題の事業化を推進している。スタートアップとアカデミアの連携による先端医療技術の社会実装を目指し、事業テーマの選定や経営判断を自らの課題認識に基づいて行っている。

核医学分野は近年、診断・治療の精度向上や個別化医療への期待を背景に、グローバルで市場拡大が続いている。世界の放射性医薬品市場は2023年時点で約67億ドル規模とされ、今後2028年まで年率約8%での成長が見込まれている。日本国内でも前立腺がんや神経内分泌腫瘍など一部疾患においてPET診断薬やリガンド療法の利用が拡大しつつある。一方、規制や放射性廃棄物管理といった制度上の制約が厳しく、新技術や医薬品の導入、医療機関への普及には課題も多い。業界内では日本メジフィジックスなどの大手企業に加え、アカデミア発のスタートアップや専業デベロッパーが臨床開発や装置開発で競合し、オープンイノベーションも進行している。

今回の資金調達ラウンドは、既存株主のみらい創造インベストメンツと新株主のビジョンインキュベイトなどの参画によって成立した。企業によると、調達資金は68Ga-PSMA-11を含むPET診断薬の国内導入、RI排水処理装置の製品化と医療機関への導入支援、アスタチン211を用いた新規RI治療薬の研究、人材採用の拡大などに充てられる。物質開発と装置エンジニアリングの両面で開発成果を国内外の臨床現場へ届けることが、当面の目標とされている。

また、同社が展開する核種吸着システム「BSL-177」は東京電力グループと共同開発中であり、今後の核医学分野や放射性物質管理技術の国際展開も視野に入れている。このような事業構造は、医療機関や研究現場の課題解決、規制対応力の強化に取り組むスタートアップとしての特徴を示している。

投資家側では、みらい創造インベストメンツとビジョンインキュベイトが出資した。これにより、医療機関や大学、事業会社との協業やパートナーシップ形成、体制強化・人材拡充が進む見通しとなっている。

AMS企画は、核医学技術の国内導入促進に加えて、国際市場へ向けた新規開発や共同プロジェクト(臨床治験、規制対応など)への展開を進めている。累計3億円規模の調達を背景に、技術開発の実用化や人材・資本・パートナーシップの拡充を通じた成長戦略の実現を目指している。

画像はAMS企画HPより

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