Terra Charge株式会社

EV充電インフラ事業を展開するTerra Charge株式会社が、シリーズDラウンドの後半で104億円の資金調達を実施した。これによりシリーズDラウンド全体の調達額は204億円、累計調達額は261.4億円に達した。
Terra Chargeは2022年4月にEV充電インフラ事業へ参入し、集合住宅や宿泊施設、商業施設、オフィスビルなど多様な場所にEV充電器の設置サービスを展開している。導入企業や施設の負担を軽減するため、「初期費用・維持費0円」での設置サービスを特徴とし、設置工事から運用、専用アプリや管理クラウドの提供まで一貫して対応している。加えて、24時間365日対応のカスタマーサポート体制を整備し、設置先ごとに普通充電器・急速充電器の選択が可能となっている。
利用者向けには、専用アプリを通じた充電器の空き状況検索、料金決済、充電時間指定といった機能を提供している。2025年3月末時点での設置済み充電器は累計1.5万口を超え、2023年末時点での累計受注数は2.5万口に達している。
代表取締役社長の徳重徹氏は2010年に親会社であるTerra Motorsを創業し、アジア市場を中心に電動三輪車の普及に取り組んできた経歴を持つ。国内ではEV普及の遅れや集合住宅への充電設備設置率の低さが課題とされる中、2022年から充電インフラ事業に注力してきた。
EV充電インフラ分野は、政府のカーボンニュートラル政策や自動車メーカー各社の電動化推進を背景に成長が見込まれる。経済産業省は2030年までに国内のEV充電器設置数を30万口まで増やす目標を掲げているが、2025 年3月時点での設置口数は約6.8万口にとどまっている。EV・PHEVの新車販売割合も国内では欧米や中国と比較して低い水準であり、充電インフラの不足が普及拡大の足かせとなっている。
競合環境としては、エネチェンジ、BIPROGY、日本電気(NEC)、テスラ、チャデモアライアンスなど国内外の事業者が同分野で活動している。2023年時点で国内の急速充電器は9,800台、普通充電器は24,300台超に増加しており、市場規模は年々拡大している。世界市場においてもEV充電インフラの収益は2023年に約180億米ドル、2036年には約4,100億米ドル規模に成長すると予測されている。
今回のシリーズDラウンド後半の調達は、みずほ銀行、あおぞら銀行、三井住友信託銀行、りそな銀行などからの出資、デットファイナンスが中心となった。調達した資金は、充電インフラ網の拡大、技術開発、海外事業展開、人材採用および組織体制強化に充てられる計画である。
提携面では、全国の自治体や物件管理会社、大手民間企業との連携が進んでいる。2025年7月には都内のホテル「帝国ホテル 東京」において、普通・急速充電設備のサービス提供を開始する予定となっている。これにより、宿泊客やビジネス利用者のEVユーザーが滞在中に車両を充電できる環境が整い、ホテル側の脱炭素目標や持続可能な開発目標(SDGs)推進にもつながっている。
充電インフラの拡充はEV普及の鍵となっており、Terra Chargeはコスト面での導入障壁の引き下げや、設置・運用の一括受託、デジタルプラットフォームによる利便性向上などを進めている。今後は、政府目標の達成に向けて官民の協力や技術開発、競合他社の動向が市場拡大に影響を与えるとみられる。