購買体験を変えるショッピングアシスタント「PLUG」で描く未来像――STRACT伊藤氏
ショッピングアシストアプリ「PLUG」を運営するSTRACTがシリーズA 1st Closeラウンドにて、第三者割当増資による10.3億円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドでの引受先は、Headline Asia、Coral Capital、デライト・ベンチャーズの3社。
PLUGは、ECサイト上での商品購入を支援するアプリケーションだ。「Safari」でECサイトを閲覧する際に、見ている商品の最安値が表示されたり、ユーザーにパーソナライズされたクーポンやキャッシュバックに関するサジェストが出たりする。
2022年3月の正式リリース以降安定的にビジネスを拡大し、2024年10月末時点でのダウンロード数は130万を突破した。WAUは約45万人、提携するECサイトは1100社を超える。流通取引総額(GMV)も年間換算100億円となり、8四半期連続で過去最高を更新。
今回の資金調達に際して、代表取締役社長 伊藤輝氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
ECの購買体験を変える、自動で動くショッピングアシストアプリ
―― PLUGについて教えてください。
伊藤氏:PLUGは、iPhoneにアプリケーションをダウンロードして拡張機能をオンにするだけで自動で動作する、ショッピングアシストアプリです。2年半前に正式リリースして以降、レビュースコアは4.6をキープしており、自動で動くので離脱されることもほとんどなく支持を得ています。
従来の仕組みでは、楽天やAmazonなどのECサイト別にインターフェースが異なるためにユーザーの購買体験もバラバラでした。EコマースにおいてユーザーとECサイトの間に入り、すべてのECサイトをまとめてユーザーに最適化した提案をするのがPLUGです。「エージェント」のような役割ですね。
現在の機能は、サイトを横断して最安値を提案する「PLUGベストプライス」と、1100以上の提携ECサイトからユーザーへのクーポンやキャッシュバックを提案する「PLUGオファー」の二つです。モノを買う物販だけでなく、サービスや金融などの無形商材にも対応しています。
―― サービスとしてユニークなのはどのような点でしょうか。
通常、ECサイトで商品を見ても、購入しないで離脱してしまうユーザーがほとんどです。離脱したユーザーに対して、ECサイト側からアプローチすることは基本的にできません。しかし、PLUGはユーザー側の「エージェント」であることで、離脱後に関連サイトを見ているユーザーに対して特別な割引を提案するなどのアプローチが可能になります。
サードパーティ広告の規制が進む「Cookieレス」の時代、ターゲティング広告などのソリューションだけに頼ることはできなくなりました。PLUGはユーザーデータを持ちながらも、そのデータを外部の第三者に渡すことはしていません。私たちがユーザーのことを一番知っていて、直接価値あるコンテンツを届けられる。第三者にデータを渡す必要がないのです。
2000億円調達できる事業に 目指すはインフラの社会実装
―― 創業のきっかけを教えてください。
STRACTの設立は2017年です。私が個人で作っていたAndroidの音楽プレーヤーアプリケーションがヒットしたことで法人になり、そこからSTRACTに引き継ぎました。
私は幼少期からソフトウェアを開発しており、モバイルアプリケーションの開発経験は15年になります。便利な技術は使われてこそです。「誰でも直感的に使えるもの」にこだわりを持って開発をしてきました。
高校生の時に「インターフェース」という言葉を知り、大学で本格的に学ぶことを決めます。iOSの「フリック入力」を開発した慶応義塾大学の増井俊之先生の元で、インタフェースについて研究しました。その後設立したSTRACTでも「インタフェースの力でテクノロジーの恩恵を全ての人へ」というミッションを掲げ、誰でも直感的に使えるソリューションの提供を目指しています。
―― PLUGはどのように構想したのでしょうか。
私たちは、単純なEコマースのサービスを作りたいわけではありません。100年以上グローバルに存続する会社を作りたい。「次のインフラ」を作って社会実装できる存在になるしかないと思っています。
次代のインフラになるであろうと思っているのが衛星通信です。私たちは技術そのものを開発するのではなく、インターフェースの力で誰でも使えるように社会実装していきたい。そのためには2000億円以上の資金が必要になります。それほどの資金を調達するには上場するのが主な選択肢ですが、ソフトウェア・アプリケーション領域で3000億円以上の時価総額をキープしている企業は数えるほどです。
その中で目を付けたのが、Eコマースやインターネット広告といった市場でした。すでに顕在化する大きな市場を、モバイル・パーソナライズといった体験で塗り替えることができないかと考えたのです。こうした観点から、PLUGの開発は始まりました。
まずはEコマース領域から入っていますが、重要なのは「ユーザーエージェント」であること。今後は後払いや商品の保険加入など、大きな市場をユーザーという軸で縦に切り取りながら事業拡大していくことも構想しています。
―― 今回の調達資金の使途を教えてください。
主に研究開発費用と計算機資源、マーケティングに投資します。ユーザーデータがPLUGの資産です。それが素晴らしい体験を生むことにつながります。そのための膨大な計算やデータ収集に大きく投資していきます。採用も積極的に進めます。
―― 今後の意気込みをお願いします。
我々の事業モデルはAmazonや楽天、ZOZOTOWN、メルカリなどに匹敵するサイズに成長するポテンシャルのある、コンシューマーサービスとしてEコマース市場に正面から切り込む事業です。今後のBtoCビジネスの代表企業として注目いただけたらうれしいです。