サステナビリティ経営を支える──シェルパ・アンド・カンパニー、シリーズBで10億円調達

サステナビリティ経営を支える──シェルパ・アンド・カンパニー、シリーズBで10億円調達

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サステナビリティ経営支援サービスを展開するシェルパ・アンド・カンパニー株式会が、2025年8月にシリーズBラウンド(ファーストクローズ)で、第三者割当増資による総額10億円の資金調達を実施した。今回の調達では、WiLがリードインベスターを務め、既存投資家のグローバル・ブレインに加え、ANAホールディングスやキヤノンマーケティングジャパンのコーポレートベンチャーキャピタルも新たに出資した。顧客企業による出資が目立ち、事業連携やプロダクト開発への期待が背景にある。これにより累計調達額は約15億円に達した。

シェルパ・アンド・カンパニーは2019年9月に設立されたスタートアップで、創業者であり現代表の杉本淳氏がCEOを務める。杉本氏は事業会社およびコンサルティング領域の経験を持ち、企業のサステナビリティ経営支援に特化した事業を立ち上げた。

同社の主力サービスは、ESG(環境・社会・ガバナンス)情報の開示・管理を支援するSaaS型クラウド「SmartESG」だ。2022年11月の正式リリース以降、国内外の大手企業を中心に導入が進み、2025年8月時点で導入企業の累計時価総額は200兆円を超えているという(同社調べ)。「SmartESG」は、複雑化・多様化するサステナビリティ情報の収集、整理、開示、分析を一元管理できる点が特徴となっている。

事業の柱は、①ESG情報開示支援クラウド「SmartESG」、②ESG・サステナビリティ分野の情報発信メディア「ESG Journal Japan」の運営、③ESG領域のコンサルティングサービス「ESG Advisory」の3つである。さらに、KPIデータの統合管理を行う「SmartESG KPIコンソリデーション」、AIによるアンケート自動回答の「SmartESG Answer Ease」、調査業務の効率化を図る「SmartESGアセスメント」など、各種機能拡張にも取り組んでいる。これらのサービスは、企業の非財務情報を経営判断や外部開示に適した形で管理・活用するニーズに応えるものだ。

ESG・サステナビリティ市場はグローバルに拡大を続けている。2025年の世界ESG投資市場は約35兆ドル、2034年には約167兆ドルに拡大する見通しだ。各国でサステナビリティ報告書の義務化や、上場企業に対する情報開示要請が進むなか、日本でも東京証券取引所による開示基準強化が進行。人的資本やサプライチェーン全体の情報管理も企業経営における重要な要素となっている。一方で、情報開示基準や指標の乱立により、企業現場での情報収集・開示・管理業務が煩雑化し、開示項目の判断に課題を抱える企業も多い。

こうした背景から、ESG情報開示支援市場には大手ITベンダーやスタートアップが参入している。国内ではテクノロジーを活用したクラウド型ESGプラットフォームの競合が複数存在し、上場企業との連携やコンサルティングサービス、評価機関ガイドラインへの対応などを特徴としている。

今回の資金調達では、顧客企業や大手事業会社が投資家として加わっている点が特徴だ。ANAホールディングスは自社での「SmartESG」利用実績を踏まえ、ESG経営推進と事業連携の観点から出資。キヤノンマーケティングジャパンも、ドキュメント電子化サービスと「SmartESG」の構造化技術の協業を見据えて参画している。

シェルパ・アンド・カンパニーによると、今回調達した資金は「SmartESG」の高度化、顧客対応体制の強化、海外展開基盤の整備に充てる計画だ。「SmartESGアセスメント」などの新機能を通じて、大手企業の回答業務の自動化や評価機関への対応、AIによる業務負担軽減、サプライチェーン調査の標準化・一元管理といった課題に取り組む。

ESG情報開示に関する基準や規制動向は流動的で、グローバル基準(TCFD、TNFD、TISFDなど)への対応や、日本国内の制度改定動向への迅速な適応が求められる。サステナビリティ経営そのものが、投資家や消費者など多様なステークホルダーの要請とバランスを取りながら進化する中、企業の情報開示やガバナンス対応の実効性が問われている。

今後、シェルパ・アンド・カンパニーは、国内外での事業展開を加速させ、持続可能な社会の実現を目指す。

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