はじめに
ESGとは、環境(Environment)、社会(Society)、ガバナンス(Governance)の3つの要素を表し、気候変動への取り組みや人権、企業統治の整備など、社会課題に関わる要素を指す。
ESGは投資活動から始まった概念で、企業の財務情報に加えて環境や社会への配慮、企業統治の向上などを考慮する投資方法だ。近年では、企業経営においてもESGに配慮する動きがあり、ESGの考え方は投資だけでなく企業経営全般に影響を与えている。
ESGに取り組むことで、企業は環境への配慮、社会的な影響、透明性や統治の向上などを追求し、長期的な持続可能性や投資価値の向上を目指す。
三菱総合研究所(MRI)※によると、2015年末時点で662億ドルであった世界全体のESG投資額は、2021年末には9281億ドルへと拡大している。経済規模に比した額はまだ小さいが、日本でもESG投資は増えており、今後も拡大が期待される。
これらの企業が採用するESG関連の方針は、新たなスタートアップや既存企業のモデルとして、より広範な持続可能性への取り組みにつながりそうだ。
スタートアップ6選
日本GXグループ株式会社
サステナビリティトランスフォーメーションサポート事業などを運営する企業。 同社は、中小企業に対し、企業の事業活動とESGを両立するための持続可能な戦略や業務プロセスの策定を支援する。 また同社は、カーボンクレジットの調達・売却支援事業のほか、サステナビリティやJ-クレジットに関連するメディアの運営事業を行う。
2023年8月には、シードラウンドにてHAKOBUNEを引受先とするJ-KISS型新株予約権発行による、5000万円の資金調達を実施した。2023年12月には、企業の環境情報を業界横断で確認できる「GXリサーチ」を開設した。
企業HP:https://sb-ge.com/
シェルパ・アンド・カンパニー株式会社
ESG・非財務情報開示に取り組む企業向けに、情報収集・開示プロセスを効率化・可視化するプラットフォーム「SmartESG」を開発する。 SmartESGは、社内のESGデータを一元化することで、サステナビリティ活動の分析と改善を可能にし、企業のESG情報開示の業務負荷を軽減するクラウドサービスだ。
2023年6月には、エクステンションラウンドにてWiLを引受先とした第三者割当増資による総額1.5億円の資金調達を実施した。2024年1月には、東京ガスにESG情報開示支援クラウドSmartESGの提供を開始した。
株式会社ストラテジー・アドバイザーズ
上場企業の成長を支援する資本市場コンサルティングを運営する企業。 コーポレートガバナンス改革を軸に、特にダイバーシティ、人的資本経営に焦点を当てて個別企業向けのコンサルティングを提供するESGコンサルティング事業や、中期経営計画策定、株価上昇のためのIR戦略、コーポレートガバナンス戦略、アクティビスト対応、上場支援にかかわるコンサルティングを提供する。 ESGの観点から、優れたリーダーとそれを支える経営チームの成長・育成に貢献する。
2023年5月には、エアトリ、チェンジホールディングスと資本業務提携を行った。
株式会社aiESG
製品およびサービスレベルでのESG分析サービス「aiESG」などの開発・運営を行う九州大学発のベンチャー企業。aiESGは、製品やサービスレベルでのESG分析が可能なサービスだ。同社が保有するESGサプライチェーンビッグデータを用いたAI分析により、ESG指標について詳細な試算や、業界平均などとの比較ができる。温室効果ガス排出量などの指標に加えて、強制労働・児童労働・ジェンダー平等・生物多様性・大気汚染・鉱物資源など、約3,200の項目でESG負荷量が測定可能。国際基準に準拠した透明性の高いESG評価を提供する。
2023年5月には、シードラウンドにてジャフコグループ、みやびベンチャーズを引受先とした第三者割当増資による、約1.5億円の資金調達を実施した。2023年9月には、グローバルビジネス誌「Forbes ASIA」が主催する「Forbes Asia 100 To Watch 2023」に選出された。
企業HP:http://aiesg.co.jp/
株式会社パシフィックブリッジメディアアンドコンサルティング
ESGソリューションを発信するメディア「J-STORIES」を運営。J-STORIESは、日本企業が取り組む新たなイノベーションを世界に伝えるバイリンガルメディアだ。日本語と、英語を中心とした多言語で発信している。記事と動画で、海外投資家を含む世界の視聴者に向けて多角的に発信する。J-STORIESを通じてニュースを制作・配信し、持続可能な社会を目指すさまざまな事業の発展をサポートする。
2023年11月には、スタートアップ支援の伴走者として、毎日新聞社が出資する毎日みらい創造ラボと業務提携契約を締結した。
サステナブル・ラボ株式会社
非財務データバンク「ESGテラスト」を提供する。ESGテラストは、AIとビッグデータを活用し、企業のESG/SDGs貢献度を可視化した、国内最大級の非財務データバンクだ。企業の非財務情報のリサーチ・評価・資料作成をワンストップで行うことができる。プロフェッショナルファームのユーザーが、クイックかつカジュアルに非財務情報の収集・整理・分析・アウトプットを実現する。
2022年3月には、プレシリーズAラウンドにて、ジャフコ グループを引受先とした第三者割当増資による資金調達を実施した。2024年1月には、あらゆる企業の良い取り組みを照らすサステナブル企業名鑑「テラスTV」をローンチした。
企業HP:https://suslab.net/
おわりに
今回紹介した企業は、環境、社会、ガバナンスの各領域において積極的な取り組みを行い、持続可能な未来を加速させている。環境保護や社会的貢献、透明性と責任ある統治の実践を通じて、業界や地域社会全体にポジティブな影響をもたらしている。今後も、ESG関連のスタートアップの動向にはさらに注目が集まりそうだ。
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※ 三菱総合研究所「世界と日本のESG投資動向」