自律型エージェント時代へ──JAPAN AI、19億円調達で業務AIを加速

建設業界向けの生成AIエージェントを開発する株式会社KENCOPAが、シードラウンドで総額2億円の資金調達を実施した。今回のラウンドにはAngel BridgeやArchetype Ventures、有安伸宏氏などが参加している。
KENCOPAは2024年3月設立。建設業に特化したAIエージェント事業と共同開発事業の2軸で事業を展開している。主力サービスの「Kencopa」は、建設現場における情報集約やAIによる業務支援を目的としたプロダクトで、チャットベースでの指示入力によって外部ツールとの連携や各種書類作成を自動化できる。また、未経験の施工法や専門知識についてもAIがサポートする設計となっている。現在一部機能は開発段階だが、大手ゼネコンや地域の建設会社で既に導入が進んでいる。
建設業界は長年にわたり人手不足や属人化、煩雑な書類業務、知識の継承問題など複数の構造課題を抱えてきた。技能労働者数は減少傾向であり、業界の高齢化と人材供給制約が鮮明となっている。加えて、いわゆる「2024年問題」と呼ばれる労働時間規制の強化もあり、現場の負荷増大が懸念されている。こうした環境下で、建設DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の動きが強まっているが、現場には紙書類や写真、口頭指示など非構造化データが多く、既存ITサービスのみでは十分ではないと指摘されるケースもある。
KENCOPAは現場の実態に即したシステム設計を特徴とし、現地調査や実際の現場同行を通じてニーズを抽出している。AIエージェントは帳票作成や情報整理、ナレッジ検索等の自動化に重点を置いており、現場業務の省力化を目指している。競合としては、アンドパッドなど施工管理SaaSの他、OpenAIのChatGPTをベースにした業界特化型生成AIサービスが複数存在するが、KENCOPAのプロダクトは建設業特有の知見や現場データの活用に重点を置いている点が特徴である。
代表取締役CEOの安村荘佑氏は、大学卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーで製造・建設・通信分野のB2B業界案件に従事した経験を持つ。2024年、現取締役COOの中田寿太郎氏らと共にKENCOPAを創業。安村氏は、コンサルティング業務を通じて建設現場の人手不足や長時間労働の実情を知り、業界課題への問題意識を深めたという。創業後は複数の現場ヒアリングや同行を重ねてプロダクト開発を進めている。
今回の資金調達により、さらなるプロダクト機能拡張や人材確保、導入企業拡大を目指す方針だ。実際、KENCOPAは大阪産業局の関西スタートアップ支援プログラム「起動」第三期や、総務省主催の「ICTスタートアップリーグ2025」にも採択されており、公的支援も活用している。
今後は生成AIエージェントの開発強化に加え、施工管理業務の自動化や現場ナレッジのデジタル化、熟練技術の海外輸出といった事業領域の拡大も視野に入れている。建設業界では技術のデジタル継承や人材供給制約が大きな課題となっているが、KENCOPAはAI・ITを活用した業務効率化による持続可能性向上を志向している。
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