JAPAN AI株式会社

JAPAN AI株式会社は、2025年8月1日付でシリーズBラウンドにおいて総額19億円の資金調達を実施した。主要な引受先にはジャフコグループ、ニッセイ・キャピタル、FCE、りそなキャピタルが名を連ねる。
JAPAN AIは2023年4月に設立されたスタートアップで、人工知能の研究開発やAI関連のコンサルティングサービスを展開している。主力プロダクトの「JAPAN AI AGENT」は、営業、マーケティング、カスタマーサクセス、人事、経理など企業の主要業務を支援する自律型AIエージェントである。従来型のチャットボットとは異なり、企業ごとに異なる実務フローに合わせて複数段階のタスク実行が可能な点が特徴である。
このAIエージェントは自然言語での指示を受けて業務を自律的に処理できるほか、利用企業が現場のニーズに合わせてエージェントをカスタマイズできる。複数の大規模言語モデル(LLM)を活用し、各社のデータや業務アプリケーションと連携することで、既存IT環境との親和性を高めている。導入企業向けにはサポート体制も整備しており、生成AIツールの導入時に課題となりがちな「現場での運用・定着」にも対応している。
代表取締役社長の工藤智昭氏は、JAPAN AIの戦略的パートナーであるジーニー(マーケティングSaaS事業を提供)の代表取締役も務める。工藤氏はジーニー在籍時に1万社以上の業務支援経験を有し、日本企業が抱える人手不足や生産性の低さ、ノウハウの継承の難しさといった課題を実感したという。こうした現場の課題解決を目指し、AIの活用に取り組むためにJAPAN AIの設立に至った。設立当初からAIエージェントの構想を持ち続け、「JAPAN AI AGENT」の開発へとつなげている。
AIエージェント分野は、グローバルで拡大が続く市場の1つと位置付けられる。OpenAIはAI技術の進化段階の一つとして「自律型エージェント」を位置づけており、指示に従って独立して行動できるAIシステムが業務自動化の有力な手段となりつつある。市場調査会社MarketsandMarketsによれば、AIエージェントの世界市場規模は2030年に471億ドルに達すると見込まれている。近年は従来のQ&A型チャットボットから、より高度なタスク処理が可能な自律型AIエージェントへの移行が進んでいる。
一方、日本企業のAI導入率は他国に比べて依然として低い水準にとどまる。国内企業のAI導入率は、導入済が24%(2024 年Reuters/Nikkei)、言語系生成AI41.2%が導入・導入準備(2025 年JUAS)となっている。少子高齢化や人手不足が深刻化する中、DXや業務自動化の必要性は高まっており、業界特化型や現場主導型のAIツールへの関心が高まっている。
今回の資金調達により、JAPAN AIは開発体制の拡充や「JAPAN AI AGENT」の新機能開発、ジーニーグループのマーケティングSaaSとの連携強化に取り組む方針である。業務ごとの細分化や多様なユースケースへの自動対応、高度なセキュリティやデータ連携といった機能面での強化も予定されている。また、優秀な人材の採用や戦略的パートナーとの協業による事業拡大も見込まれる。
AIエージェント分野では、参入プレイヤーの増加とともに、現場での導入・定着や継続的な生産性向上など、実効性の検証が今後の課題となっている。JAPAN AIは自律型ワークフローエージェントの開発に加え、画像生成AIや各種プロンプトエンジンといった生成系AIの多角化にも取り組んでいる。技術進化と社会実装のバランス、現場ニーズへの適応、競合他社との差異化などが今後も問われる状況である。