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生成AIとDXがもたらす革新の波──業務ソフトウェアスタートアップの最新動向

企業のAI活用基盤を提供する株式会社Helpfeelは、シリーズEラウンドのファーストクローズとして、第三者割当増資により総額26億円の資金調達を実施。これにより、同社の累計調達額は59億円に達した。引受先には、グローバル・ブレイン、SMBCベンチャーキャピタル・マネジメント、JPインベストメントなどが名を連ねる。
今回の調達資金は、「AIナレッジデータプラットフォーム」の展開と、それを構成する3つの新サービス「Helpfeel Agent Mode」「Helpfeel Support」「Helpfeel Analytics」の開発に充てられる。いずれも2025年10月より順次提供開始予定で、Agent ModeとSupportは同月にβ版提供が開始され、Analyticsは同プラットフォーム内で段階的に組み込まれていく見通しである。
同社はこれまで、FAQやヘルプデスクといった自己解決チャネルの構築を支援してきたが、今後はAIを活用し、顧客体験を「答えを得る」から「課題をその場で解決する」体験へと進化させる。
新サービスの「Helpfeel Agent Mode」は、有人サポートのような自然な対話で顧客の要望を引き出し、FAQで得た回答をもとに、その場で予約・購入などのアクションへとつなげるAIエージェントサービスである。
情報提示にとどまらず、業務アプリやフォームを回答内に直接埋め込むことで、シームレスな解決体験を提供する。また、回答に対する信頼度を明示する独自の「信頼できる回答」表示機能も備える。
「Helpfeel Support」は、AIによる問い合わせ管理ツールであり、問い合わせ内容の分類や担当者への振り分け、返信文面の下書き生成までを自動化する。
これにより、オペレーターは確認・送信のみで初期対応が可能となり、業務効率化と顧客対応の品質向上を両立する。さらに、対応履歴からナレッジ不足を分析し、FAQの改善提案まで行う。
「Helpfeel Analytics」は、音声やテキストログをもとに顧客の声(VoC)をAIが分析し、運用上のギャップを特定。不足しているナレッジの自動生成や改善提案を実施し、FAQの質を継続的に高める。
代表取締役CEOの洛西一周氏は、「顧客が本当に望んでいるのは、情報を見つけることではなく課題を解決すること。『答えるAI』から『解決するAI』への転換が求められている」と話し、自己解決体験の質の向上と業務全体の最適化を目指す姿勢を示した。
Helpfeelはこれまで、自然言語処理や検索アルゴリズムなど独自技術を強みに、FAQ検索SaaS「Helpfeel」やナレッジベースツール「Cosense」を提供。上場企業を含む700社以上への導入実績を持つ。今後は日本企業のAI活用を支える情報基盤としての役割を強化しつつ、北米市場への進出や将来的な上場も視野に入れる。
「私たちの技術が正しく使われることで、AIは誤解なく、強く機能する。その土台づくりこそが今、最も必要とされている」と洛西氏は語る。
グローバル市場における同領域の競合としてはServiceNowなどが存在するが、Helpfeelは「導入から運用、ナレッジの改善までを一気通貫で支援する」点で独自の強みを持つとする。洛西氏は「ServiceNowがプロダクト単体での導入に強みを持つ一方で、Helpfeelは顧客の運用設計やコンテンツ整備まで含めて伴走する。特にナレッジ整備のように手間がかかる分野では、単なるSaaS提供だけでは実効性が担保できない」と述べた。
IPOに向けた準備も進めており、「我々が手掛けている“情報インフラ”という領域は、長期的な視点と社会との対話が求められる。だからこそ、資本市場との関係を築くことは重要。IPOを一つの通過点としながら、より信頼される企業になる準備を整えている」と話す。
さらに洛西氏は、「“AI時代のSalesforce”のような存在を目指す」と語り、AIを前提とした業務プロセス全体の変革に対する強い意欲を見せる。企業の情報資産をAIにとって有効な形に再構築するだけでなく、そこから生まれる新たなビジネス成果や意思決定を支援する、包括的な情報インフラ事業へと成長させる構想を描いている。
「社内ナレッジの整備や顧客接点の最適化は、いまや一部の先進企業だけの課題ではない。誰もがAIを使う時代に、誰もが“準備された情報”を持つべき。そうした未来に向けて、私たちはあらゆる業種・業界の現場に寄り添い、インフラとして機能し続けたい」と展望を語った。
生成AI時代において、情報整備がAIのパフォーマンスを決定づける鍵となるなか、Helpfeelの取り組みは、AI活用の根幹を支える“情報インフラ”として注目される。
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