KUROGO株式会社

KUROGO、クリエイターコラボプラットフォーム「FEAT」で累計調達額約1億円を達成


KUROGO株式会社は、クリエイターコラボプラットフォーム「FEAT」を運営し、コンポーザー、シンガー、イラストレーター、動画クリエイターなど様々なクリエイターが自由につながり共作できる環境を提供している。
2025年7月18日には、既存投資家のQXLV、サイバーエージェント・キャピタルからの追加出資に加え、新たにみずほキャピタル、STARBASEを迎え、累計調達額約1億円を達成した。
同社は「未来あるアーティストの市場開放」をミッションに掲げ、従来的な事務所やエージェンシーに依存しない新しいクリエイター支援の仕組みを構築している。
今回は、現役シンガーソングライターでもあるKUROGO代表取締役の工藤吟氏に、事業の詳細や今後の展望について話を聞いた。
実力派4000名が集結、ゲームのギルド感覚でコラボ制作
――まずは御社の事業について詳しく聞かせてください。
工藤氏: 我々は「FEAT」というクリエイターコラボプラットフォームを運営しています。現在の登録者数は約4000名に達していて、ゲームのギルドのような感覚でチームアップして制作を行えます。
新しいプラットフォームって新人層が集まりがちなイメージがありますが、我々は真逆なんですよ。既に実績がある方々や、自分たちでIPを取れている方、事務所に所属していない自由度が高くて有望なクリエイターが多数登録してくれています。
ユーザー属性としては、ボーカロイド・プロデューサーが一番多いですが、それ以外もバランスよく分かれていて、多様性のあるプラットフォームになってきました。取引も有償と無償が大体半々で、双方向に依頼が発生している健全な状態ですね。
実際の利用方法としては、まずプロジェクトを作成して、ポートフォリオを見ながら「このアーティストいいな」という人を見つけて依頼を出します。相手から金額の提示があると、半額を着手金として支払って制作開始です。制作が始まると、チャンネルを作って会話したり、タスク管理で「誰がいつまでに何をするか」を明確化して進めていきます。制作に必要なツールは全て配備していますし、トラブル防止の支払い方式も整えています。
今回「FEAT制作部」も発足させたので、企業からのアニメーションやミュージックビデオ制作の依頼にも対応できるようになりました。現在5、6人体制で事業を行っていて、私自身も現役でシンガーソングライターをやりながら会社を経営しています。

収益モデルについては、段階的な移行を計画しています。現在FEATでの取引では15%の手数料をいただいていますが、これは将来的に廃止していく予定です。制作にとってあまり良くないですし、一度良い関係ができると他のサービスでつながろうとする動機が生まれてしまって、誰も幸せになりませんから。
今後の収益の柱としては、まず制作案件での収益があります。そして年末に予定しているディストリビューション機能(SpotifyやApple Musicなどの配信サービスへの楽曲配信)では、収益の20%をいただくシステムに移行していきます。この仕組みでは、1再生1円程度の収益があって、例えば1億再生されたら20%の2000万円が入ってくる計算です。
さらに、この機能では完全収益分配式も実現します。例えば歌手として歌をお願いする際に、「この楽曲の収益30%を渡すから歌って」という形で、収益分配での取引もできるようにする予定です。
――参入している市場のポテンシャルはいかがですか。
我々が飛び込んでいくのはコンテンツ市場で、世界で46兆円、国内だけでも5兆円程度の規模があります。インディーズでデジタルという領域に絞っても1000億円ぐらいの非常に大きい市場なんです。実際にユーザー数、取引数、取引金額ともに年間を通じて大きく伸びています。
ユーザー獲得戦略については、実は広告にはほぼ頼っていないんです。アーティストって広告を見ないので。最初は著名クリエイターに一回使ってもらって紹介してもらったり、大規模なコンテストを行うことで登録者や取引が急増しました。
現在は曲紹介チャンネルも立ち上げていて、ショート動画向けの戦略を行っています。ショート動画では「この曲いいから聞いて」と言われても聞かないじゃないですか。でも「この曲には裏があって、実はこれをモチーフにしている」と言われると興味を持ってもらえるんです。特にバズっている曲であればあるほど、裏側のストーリーを伝えることで多くの人に見てもらえています。
技術的な差別化要因としては、FEATのコミュニケーション機能が非常に優秀なことです。プロジェクトごとにチャットルームを作って会話できるのはもちろん、2GBまでの大容量ファイルを一発で送信できるので、音声データや動画ファイルなどのやり取りがスムーズです。さらに通話機能、メンバーのリクルート機能、コンテスト機能など、クリエイター関連で面白そうなことを全部詰め込んでいます。

加えて、UI/UXの強みとして、アーティストが表立って運営しているという点が大きいですね。アーティストは何ができるかよりも、周りがどうやっているか、何が面白そうなのかというところに引かれる部分があるので、そこが強みになっています。
音楽業界の"ブラックボックス"を透明化したい
――創業のきっかけについて聞かせてください。
実際に音楽事務所に所属していた経験から、業界の閉鎖的な構造に疑問を感じたことが起業のきっかけでした。もう一人の取締役である石田は、私と一緒に作曲家・編曲家として活動していて、オリコンチャートを獲得するなど20代後半で実績を出してきた作家です。彼も同じような問題意識を持っていたので、一緒に事業を立ち上げることになりました。
私たちが掲げているミッションは「未来あるアーティストの市場開放」です。事務所にいると、例えば「こういう歌手はいませんか?」と聞いても返事が遅かったり、MVを作りたいと思っても「売上予測を出してください」と言われたりするんです。ビジネスの話が先に来てしまって、本当にやりたいクリエーションができない状況が多々ありました。
特に20代という重要な時期に、本来出すべき作品を出せずに時間だけが過ぎていくストレスはすごく大きかったですね。私は自腹を切って制作することもありましたが、こうした環境を変えたいという思いが今の事業につながっています。
根本的な問題は、業界の構造が閉鎖的で、情報やネットワークがブラックボックス化していることです。事務所やエージェンシーが中間に入ることで、クリエイター同士が直接つながりにくくなっている。だからコラボしたくても時間がかかったり、やりたいことができない状況が生まれてしまうんです。
さらに、発注元と制作者の間に複数の仲介者が入ることで、クリエイターに届く報酬も減ってしまうケースが少なくありません。本来クリエイターが受け取るべき対価が、段階的に削られていく構造になってしまっています。
――しかし、時代は変わってきているということですね。
そうなんです。今はインディペンデント(独立した)アーティストの時代が来ています。2010年頃までは、スターになるにはメジャーレーベルに所属してCDを売るのが主流でしたが、今ではYouTubeやTikTok、配信サービスを使って誰でも自分の楽曲を世に出せるようになりました。実際、去年のSpotifyの売上の半分以上はインディペンデントアーティストによるものでした。
ただ、アーティスト自身が収益やキャリアを主体的にコントロールできる反面、他のクリエイターや企業とつながるためのネットワークを築くのが難しいという現実もあります。業界の構造が閉じていたり、関係性の構築に時間がかかることで、せっかくの才能やチャンスが埋もれてしまうのはもったいないと感じています。
だからこそ、インディペンデントアーティストが自由につながって共作できる環境が必要だと考えて、FEATを作りました。従来の事務所やエージェンシーに依存しない、新しいクリエイター支援の仕組みを実現したかったんです。

累計1億円調達、みずほ・STARBASEと組み事業拡大へ
――今回の資金調達と投資家とのシナジーについて教えてください。
今回の資金調達は、J-KISSで行いました。背景としては、FEATのさらなる機能拡張と制作部のための人件費、そしてディストリビューションを行うための事業連携が目的でした。
今回、みずほキャピタルとSTARBASEという新しい投資家を迎えました。みずほキャピタルはメガバンクなので、そうしたつながりや今後上場を目指していく中での環境整備というところで大きなシナジーがあります。投資家が堅い銀行系でありながら、クリエイターマーケットをしっかり勉強しようとしてくれる姿勢も魅力的でした。
STARBASEは現存するインディペンデント系事務所の中でも最大手で、誰かを囲うという形ではなく、エンタメ企業として事業を展開されています。ディストリビューションでの連携や業界に対するインパクトという部分での提携を期待しています。
――今後の事業展開と展望は。
我々は今後、大手IP企業との連携を積極的に進めていきたいと考えています。IP企業は自分たちでクリエイターを抱えているわけではない場合が多いので、そんな中で最適解を我々が提供できます。win-winになれると思うので、そういったつながりを作っていきたいですね。また、レーベルの立ち上げも予定しており、こちらも事業の重要な柱になります。
興味深いのは、建設業界などエンタメ系以外の企業からのアニメCM制作の依頼も増えていることです。こうした企業が最近アニメCMをよく使用しているのを見かけますが、当社で十分対応可能なため、そういった領域もウェルカムです。このようなエンタメ系以外でCMを作りたいという企業との連携も強化していきたいと思います。
そして今年中には、最低でも7000人以上のユーザー数を目指したいと考えています。また、制作部である程度のバーンレートに対応できるレベルまで持っていきたいですね。
中長期的には、エンタメ企業のビジネスマンとクリエイターがより広く使ってくれる状態を目指しています。プロダクションを作る際にFEATを選択肢として考えてもらえるようなプラットフォームにしていきたいです。
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