アスエネ株式会社

CO₂排出量の可視化クラウド「ASUENE」を提供するアスエネ株式会社は、2025年7月15日付で株式会社三井住友銀行が提供していたGHG排出量可視化クラウドサービス「Sustana」の事業承継を正式に完了した。翌16日からは三井住友銀行による「ASUENE」の紹介・媒介業務も開始され、両社の戦略的提携が本格化する。
アスエネは2019年設立。CO₂排出量の算出から削減、報告に至るまでを一貫して支援するSaaS「ASUENE」を中核に、ESG評価、カーボンクレジット取引、エネルギーマネジメントなど複数の領域に事業を拡大している。
今回の事業承継は、SMBCグループとの資本・業務提携の一環として実施されたもの。代表取締役CEOの西和田浩平氏は、「日本発でグローバルに脱炭素を推進するため、SMBCのネットワークとアスエネのソリューションを掛け合わせる」と語り、3年後に導入企業数10万社を目指すと明言した。

一方で、Sustanaを開発・運営してきた三井住友銀行の乙地大輔氏は、「システム開発力、特許数、サポート体制のすべてにおいてアスエネは圧倒的だった」と述べ、自社サービスを手放す決断に至った背景を率直に語った。また、「我々が保有する顧客基盤とアスエネの技術を組み合わせ、より高度な課題に応える」と今後の展望を示した。

統合後もSustanaは当面の間サービス提供を継続し、1年を目処にASUENEへの統合が予定されている。これにより、従来Sustanaを利用していた中堅中小企業も、Scope3やLCA対応を含むASUENEの機能へと段階的に移行していくことが可能になる。
また、アスエネが持つ3万社超の脱炭素データベースは、三井住友銀行の提案力強化にも直結する。同行はこれまで法人顧客向けにGHG排出量の可視化支援を行ってきたが、「可視化だけでなく、企業の立ち位置や次の一手を明示する提案へと進化させる」とし、データ活用の高度化を進める意向を示している。

両社はさらに、非財務データと財務情報を統合活用した新たなサステナビリティ・ファイナンス商品を開発中だ。特にアスエネが提供するESG評価機能や脱炭素スコアを活用し、融資先企業に適切な資金調達手段を提供する仕組みづくりが進んでいる。
海外展開においても提携の効果は現れている。アスエネはすでに東南アジアに複数拠点を構え、三井住友銀行グループもインドネシア現地法人を通じてASUENEの導入支援を開始している。電力由来の排出係数が高く、再エネ調達が困難な地域に対しては、省エネ導入による即効性ある改善施策の提案や、ESG観点の金融支援なども視野に入る。
SaaSと金融、両領域を担う企業による本格的な連携が始まった今、アスエネと三井住友銀行の動向は脱炭素経営に取り組む企業にとって重要なモデルケースとなる可能性がある。