株式会社FullDepth

産業用水中ドローンの開発・計測ソリューションを展開する株式会社FullDepthは、三井住友海上キャピタル、あおぞら企業投資、Beyond Next Ventures、DRONE FUND、ミライドア、ジェームス文護氏、ゼンリンフューチャーパートナーズ、JMTCキャピタル、菊池功氏などを引受先とするシリーズDラウンドで、総額9.5億円の資金調達を実施した。
FullDepthは産業用水中ドローンの企画・開発・製造および販売を行う企業であり、自社開発の産業用水中ドローンDiveUnitシリーズを中心に、水中インフラや河川・港湾・ダムといった社会インフラ施設での点検・調査サービスを提供している。遠隔操作型(ROV)の機体に加え、収集した高精度な水中計測データの解析や、利便性に配慮したデジタル処理技術と組み合わせたソリューションを展開する。DiveUnitは国産機として現場オペレーション人数を最小限に抑える設計となっており、国内外のインフラ保全や海洋産業での導入が進んでいる。
代表取締役CEOは吉⾧智⽒。筑波大学第一学群社会学類卒。共同創業者で取締役CSOの伊藤昌平氏とは大学時代の音楽仲間であり、釣り仲間でもある。国内大手ベンチャーキャピタルを経て個人事業を営んでいた2015年、伊藤氏から事業計画の相談を受けたことをきっかけに、深海に潜るドローン・ロボットの実用化に取り組み始める。2016年3月にFullDepthの取締役に就任し、2019年9月より代表取締役COO、2022年9月から代表取締役CEOを務めている。
国内の産業用水中ドローン市場は、この数年で急速な拡大を示している。インプレス総合研究所によれば、2021年度の市場規模(販売金額)は23億円、2022年度には前年比25%増の29億円となり、2025年度には62億円まで拡大すると予測されている。用途は社会インフラ点検(港湾・ダム・上下水道)や海洋調査、環境モニタリング、オフショア施設検査など多岐にわたる。国土交通省は技術実証や人材育成、制度整備を強化しつつ、水中ドローンの導入促進と活用領域の拡大を政策として掲げている。一方で、現場ごとに異なる環境条件や操作・データ解析面の専門人材不足が普及の課題となっている。こうした背景のもと、自律航行機能やAIによる異常検知といった技術革新が進んでおり、製品性能や運用ノウハウの獲得が競争力の基盤として重視されつつある。グローバル市場でも成長が見込まれており、国内外事業者間の競争が激化している。
今回調達した資金を、水中インフラ分野のデジタル化推進および次世代水中ドローン(AUV:自律型無人潜水機)の研究開発に重点的に投資する方針である。具体的には、水中計測データの収集・解析能力向上や、水中デジタル技術によるサービス範囲の拡大を目指す。加えて、遠隔操作型(ROV)からAI活用による自律型無人潜水機(AUV)への進化を目的に、基盤技術の開発を進める。これにより、複雑かつ広範な水中領域での点検・調査の自動化や、国内外の社会インフラ維持管理・海洋産業へ貢献することを目指すとしている。









