(業界レポート)メンタルヘルスにおけるカウンセリング市場、コロナで事業は拡大傾向

(業界レポート)メンタルヘルスにおけるカウンセリング市場、コロナで事業は拡大傾向

    メンタルヘルスは大きな市場

    世界の人口の10.7%が何かしらのメンタルヘルスの不調があるといわれている。その中でも、不安障害(人口の3.8%)やうつ(人口の3.4%)を抱えている人が目立つ(※1)。

    上記の割合だけでも多い印象を受けるが、新型コロナウイルスの感染拡大が更なる悪影響をもたらしている。OECDの調査によると、うつ病やうつ状態の日本人の割合は、2013年時点では7.9%だったが、コロナ後の2020年には17.3%と増えた。日本に限らず、他の先進国でもうつ病やうつ状態の人が、コロナを経て2-3倍増えている(※2)。

    メンタルヘルスの問題を放置するとどのような問題があるのだろうか?まず、医療コストが増大してしまう。「うつ病の疾病費用研究」の論文(※3)によると、2005年の日本におけるうつ病による社会損失は2兆円にものぼるといわれている。医療費の増大などによる財政逼迫が続く中では、メンタルヘルス不調への対処は緊急を要する課題といえる。企業にとっては、不調者が増えることによる生産性の下落、人事の事務負荷の増大、休職・退職の発生に伴う採用コスト増加などのマイナス面が大きい。

    メンタルヘルスの主要領域

    メンタルヘルスの領域は非常に広い。最近注目された市場ということもあり、上場企業はまだ多くはない。日本では、職場におけるメンタル疾患の早期発見・対応を行うアドバンテッジリスクマネジメント(8789)が自社ウェブサイトに「メンタルヘルス業界唯一の上場企業」と記載している。同社は、東証一部に上場しており、4月15日時点での時価総額は97億円である。また、産業医のサポートを手掛けるメンタルヘルステクノロジーズが3月28日にマザーズに上場し、初値は公開価格を40%上回る好調な出だしだった。

    アプリやソフトウェアなどを中心にメンタルヘルスのサービスを展開しているカテゴリーでは、主に瞑想・コミュニティ・デジタルセラピー・カウンセリングが挙げられる。瞑想領域における最大手は、20億ドルの企業価値がある米国のCalmであろう。瞑想プログラムや入眠コンテンツを提供するアプリを月15ドルで提供している。日本でも2020年からサービスの提供を開始しており、禅に基づいた瞑想アプリを提供する国内スタートアップのInTripなどとともに新たな市場を開拓している。

    カウンセリング企業は、専門家からのアドバイスを受けるためのマッチングプラットフォームを提供している。この領域は、今回のメイントピックであるため、後半で詳しく記載したい。

    同じメンタルヘルスの悩みを持つ者同士で会話ができるツールがコミュニティである。プロに相談ができるカウンセリング市場の方が先に立ち上がっているが、カウンセリングだけでは解決できないニーズを今後捉えることができると考えられる。

    デジタルセラピーは、薬物療法や行動療法を併用してメンタルヘルスの改善を試みるものである。日本では、VRを用いたデジタルセラピーをBiPSEEやJolly Goodが提供している。


    メンタルヘルスカウンセリング市場

    今回は、メンタルヘルス領域の中でも、カウンセリングに着目する。日本のメンタルヘルスのカウンセリング市場の規模は、300-350億円といわれているが、1兆円程度の占い市場などに比べるとかなり小さい(※4)。市場がまだ小さい理由としては、患者側とカウンセラー側の双方に固有の問題があることが一因として挙げられる。

    患者側から見ると、精神疾患を抱えていてもカウンセリングのサービスを利用する人が少ない。世界同様、日本でも人口の10%強が何かしらの精神疾患を抱えているといわれているが、そのうち精神疾患の治療のため通院しているのは、28%程度である。裏を返せば、精神疾患を抱えているにも関わらず、通院していない日本人は約950万人もいるということになる。長野県精神保健福祉センターが未治療・受診中断の精神疾患患者に未治療・受診中断の理由の聞き取りを行ったところ、「本人が病気を認めない」や「本人の受診(服薬)への抵抗」という理由が大半だった(※5)。精神疾患に対する社会のイメージや受診に対するネガティブな印象などが通院を妨げている可能性がある。

    カウンセラー側から見ると、精神専門家医は日本に1.1万人いるが、既に業務過多になっており、診察を更に増やすのは困難といわれている。一方、臨床心理士の資格を持つ人は3.8万人いるが、そのうち半数以上は非常勤もしくは勤務しておらず、稼働を増やせる人が多い(※6)。カウンセリングの担い手としての臨床心理士を上手く活用できていない実態が浮き彫りになっている。他にも、カウンセラーとして、保健師や産業医を思い浮かべるかもしれない。しかし、保健師や産業医はメンタルヘルスケアの専門家ではないため、適切なカウンセリングを行うのは難しい。

    国内企業事例

    上記のようなメンタルヘルスカウンセリング市場における課題に取り組む企業を紹介したい。2016年に創業した株式会社313は、オンラインカウンセリングプラットフォーム「MySherpa」を提供している。BtoBモデルが主体であり、顧客である法人は、従業員数に基づく月額定額プランを払う仕組みになっている。契約企業の従業員は、MySherpa上でカウンセリングの予約をすることで、無料で何回でもオンラインカウンセリングが利用可能となる。これは、カウンセリングのハードルを下げる効果がある。また、カウンセリングが行われるたびにカウンセラーに支払いが行われるため、臨床心理士の稼働や収入を増加させられる。メンタル不調者と臨床心理士双方にとって、必要なサービスといえる。

    株式会社313

    株式会社313は、メンタルヘルスの悩みに対応する法人向けサービスおよび個人向けサービスを運営している企業。 法人向けサービスでは、Webでのストレスチェック、産業医・顧問医紹介、従業員の健康増進支援のための研修やセミナーを実施。 個人向けサービスでは、医師・公認心理師・臨床心理士によるオンライン・対面によるカウンセリングが受けられる。

    代表者名松本良平
    設立日2016年7月1日
    住所

    〒541-0043

    大阪府大阪市中央区高麗橋4丁目5番12号

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    スタートアップの詳細データはKEPPLE DBKEPPLE DB

    MySherpaの競合優位性

    日本では、メンタルヘルスケアのカウンセリングマッチングを提供する会社が数多くある。最大手は、BtoCモデル(患者と直接契約)が中心のCotreeであるといわれている。Cotreeは、外部からの資金調達を発表していないため、事業規模は不明だが、専業の上場企業がまだ存在しないことを踏まえると、どの企業にも市場のリーダーになる可能性が残されていると考えられる。

    その中でのMySherpaの競合優位性は、①国内唯一の精神科専門医が監修するツールであること、②心理療法と精神医学における有資格者のカウンセラーのみが登録していること、③オンラインによる対話カウンセリングを提供していることが挙げられる。

    ①について、精神科専門医である代表取締役の松本良平氏の知見を反映させることで、カウンセラー・患者の双方に対して医学的な見解をベースにしたサポートを提供可能にしている。また、カウンセリング時に医療サポートが必要と判明した場合は、専門医への紹介をスムーズにできる。

    について、カウンセリングの質を担保できるというメリットがある。競合の多くは、資格を持たないアマチュアもカウンセリングを担っており、カウンセラーによってサービスの質のばらつきがあると考えられる。

    ③について、同社は、カウンセリングの際に生じる表情、口調などの非言語的なコミュニケーションが、治療では効果的と考えているため、オンラインによる対話カウンセリングを行っている。これは、チャット相談が主体のトークCARE(LINE提供)、東京メンタルヘルス・スクエア、メンタルケアーズや、電話相談が主体のエキサイト相談、ボイスマルシェなどと異なるアプローチである。

    海外先行事例

    海外における大手の1社として、2021年にナスダックに上場したTalkspaceが挙げられる。時価総額は、2.4億ドルとナスダック企業の中では、小粒ではあるものの、この2年で売上が73%の年平均成長率で伸びているなど、急速に上昇している。



    同社は、BtoBとBtoCの両方のモデルを提供している。BtoB事業に本格参入したのは、2019年からだが、2021年の売上に占める比率は34%と急速に伸びており、BtoBが同社の成長を牽引している。クライアントには、GoogleやAccentureなどの大手企業が含まれる。TalkspaceのBtoBモデルでの成功を見ると、同じくBtoBを手がける株式会社313の潜在性が高いことが示唆される。

    注)
    (※1)
    https://ourworldindata.org/mental-health
    (※2)
    https://www.oecd.org/coronavirus/policy-responses/tackling-the-mental-health-impact-of-the-covid-19-crisis-an-integrated-whole-of-society-response-0ccafa0b/
    (※3)
    https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1160020107.pdf
    (※4)
    https://note.com/kaz_hirayama/n/nf95dccc8cf72
    (※5)
    https://www.pref.nagano.lg.jp/seishin/tosho/documents/paper2012carepat.pdf
    (※6)
    https://job-medley.com/tips/detail/216/

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