【2023年10月更新】オーラルケア市場の歯科矯正におけるパラダイムシフト

【2023年10月更新】オーラルケア市場の歯科矯正におけるパラダイムシフト

谷口 毅

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オーラルケア市場

お口の中を清潔に保つことを目的としたオーラルケアは成長が続く巨大市場である。2022年の世界のオーラルケア市場は、337億ドルであり、2030年まで毎年5.4%成長するとみられる※1

オーラルケアは、用途別に治療、美容、予防の3つに分けられる。また、歯科診療と製品に大別できる。日本の歯科診療医療費は約3兆円※2、オーラルケア関連製品は約4000億円※3の市場であり、歯科診療がオーラルケア製品の約7.5倍も大きい。歯科診療の単価が高いことによるためと思われる。

歯科診療カテゴリー

歯科診療では、虫歯治療が圧倒的に大きいマーケットだと思われる。WHOによると、先進国では、医療予算の5~10%が虫歯治療に使われている※4。直近の日本の虫歯人口は289万人※5だが、予防意識の高まりなどを背景に、未成年者を中心に日本の虫歯人口は緩やかな減少が続く。一方、美容や予防は新しい領域のため、歯科にとって成長が見込める市場といえる。

製品では、予防が大きなカテゴリーだと推測され、歯磨きは900億円の市場である※3。消費者が歯科医療費を削減するため、低単価な製品で予防に取り組む構図が見られる。

歯科矯正

今回は、歯科矯正に焦点をあてる。歯科矯正は、嚙み合わせを良くする治療の側面と歯並び改善という美容の側面が含まれる。歯科矯正に注目すべき理由は、①市場の大きさ、②日本での高い成長期待、③スタートアップが業界を変革しているからである。

歯並びに問題がある不正咬合は、世界中のどこでも多くみられる症状である。口腔内病変の中における不正咬合の有病率は、虫歯と歯周病に次いで3番目に高い※6。日本では、歯並びを気にするものの、治療を行わない人が一定数いる。日本で歯科医に歯並びを相談したことがある人は2割強で、7割前後の人が相談しているアメリカとは大きな差がある※7

しかし、日本人の歯科矯正に関する考え方が大きく変わろうとしている。2020年の1日当たりの歯科矯正の初診患者数は2,900人であり、2017年の800人から3.5倍以上増加した※5

患者数の増加は、スタートアップによる貢献が大きいと思われる。スタートアップが価格を抑えながら気軽に矯正治療を行えるようにしたことで、歯科矯正のターゲット層が広がったと思われる。これまで矯正治療には100万円程度かかるといわれていたが、後ほど取り上げるZenyumは、クリアアライナー(透明なマウスピース)による矯正治療を約32万円で提供している。

スタートアップが業界を変えることができているのは、この領域での技術革新が見られるからである。まず、3Dプリンター技術の発達により、歯科技工士による手作りの矯正歯科技工物から3Dプリンターによるマウスピース制作への移行を可能にした。熟練した歯科技工士の技術に頼らずとも、高い品質の製品が作れるようになった。

また、スマホアプリを活用しながら、スタートアップが歯科医と患者の間に入り、コミュニケーションを取っている。これまでの歯科矯正の場合、12回から36回通院する必要があったが、Zenyumの場合2回(最少のケース)で済む。患者だけでなく、歯科医の負担も軽減されるため、歯科医にとってもメリットが大きい。

今回は、歯科矯正の仕組みを大きく変えうるクリアアライナー矯正治療にフォーカスする。

海外の動向

米国がクリアアライナーのグローバル市場の57%を占めており※8、この領域で進んでいる。その中でもAlign Technologyは2020年時点で世界シェア85%を有しており※9、圧倒的な地位を築いている。

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出典
※1 GlobeNewswire「Oral Care Market Size & Share to Surpass $51.37 Billion by 2030
※2 株式会社松風「歯科業界の概況・松風の強み
※3 富士経済グループ「国内のオーラルケア関連製品市場を調査 市場は2018年に4,000億円超
※4 World Health Organization「Sugars and dental caries
※5 厚生労働省「患者調査
※6 ドリームニュース「「世界の歯科用アライナー市場2022年-2031年:製品別(歯列矯正、クリアアライナー)、材料別(金属、ポリウレタン樹脂)」調査資料(市場規模・動向・予測)を取り扱い開始しました
※7 ホームメイト・リサーチ「歯のトラブルが多い日本人
※8 Grand View Research「Clear Aligners Market Size, Share & Trends Analysis Report By Age (Adults, Teens), By End-Use (Hospitals, Standalone Practices, Group Practices, Others), By Region, And Segment Forecasts, 2023 - 2030
※9 Fortune Business Insights「Clear Aligners Markert Size,Share & COVID-19 Impact Analysis,By patient Age Group(Teenager,and Adult),By End-user(Dentist & Orthodonist Owned Practices and Others),and Regional Forecast,2023-2030


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Writer

谷口 毅

株式会社ケップル / Database Division Manager・アナリスト

新卒で資産運用会社のFirst Sentier Investorsに入社し、アナリストとしてアジア・日本の株式の分析を行う。その後、リクルートでプロダクトマネージャーを経験。2022年にケップル入社。現在はデータベース部門を管掌、および新規事業部門を兼務。スタートアップデータ拡充のためのプロダクト企画、分析、新規事業開発などを担う。

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