精神不調にカウンセリングを、日本のメンタルヘルスケアを主導するマイシェルパ

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KEPPLE編集部


オンラインカウンセリングサービスを提供する株式会社マイシェルパが、アトラエとの資本業務提携に合意したことを明らかにした。

また、2023年8月には、シリーズAラウンドで総額1.2億円の資金調達実施を発表。KIBOW社会投資ファンド3号、イノベーションディスカバリー2号ファンド、京信イノベーションC2号ファンド、その他個人投資家を引受先とした資金調達により、サービスの導入数拡大、およびカウンセリングサービスとしての認知獲得を強化する。

精神科医が運営するオンラインカウンセリングサービス

同社が運営するオンラインカウンセリングサービス「マイシェルパ」は、予約からカウンセリングまでオンラインで完結するサービスだ。確かな経験を持つ、精神科専門医により運営されている。

カウンセリングは1回50分で、料金は8800円と明瞭価格(精神科・心療内科に通院中の場合は6600円で利用可能)である点も特徴だ。

2021年5月より、法人プランも提供開始している。従業員数に準拠した利用人数・回数フリーの完全定額制で提供し、累計150を超える法人・団体での導入実績がある。顧客企業の従業員に向けた施策に伴走して取り組むことや、カウンセラーの質の高さから、従業員のカウンセリング利用率向上に貢献する。

2022年9月には、福島県磐梯町の自治体サービスとしてマイシェルパの提供を開始した。専門家に気軽に相談できる環境の提供により、メンタルヘルスの不調について周りに知られたくない住民のカウンセリングへのアクセスを増やし、メンタルヘルス不調に陥ることを予防する。

代表取締役 松本 良平氏(医学博士・精神科専門医)に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。


日本への普及が不可欠なカウンセリングサービス

―― 日本のメンタルヘルスに関する現状や課題について教えてください。

松本氏:日本において精神疾患やメンタルに関する不調を抱える人を試算すると、約1300万人と、人口の10%強を占めています。一方で、実際に通院しているのは360万人程度に留まります。

治療を含めた何らかのケア・サポートが必要な約1300万人の内、精神科を受診する人は約360万人ですが、すでに受診予約が取れず、診察時間も短時間にせざるを得ない状況です。精神科専門医のシーリング施策により、今後も充足されることはありません。したがって、精神科「医療」のみでは、日本人口の10%強に必要なメンタルへの継続的なサポートを賄えるはずがありません。

―― 企業が行うメンタルヘルスへの取り組みは不十分なのでしょうか?

日本の企業では、一定の規模を超えると従業員のストレスの度合いを測るストレスチェックの実施が義務化されています。しかし、ストレスの度合いをチェックするだけでは効果を発揮しないことが、ストレスチェック制度の第一人者である東京大学の川上 憲人教授により、国際的な論文で報告されています。血圧を計れば血圧が下がるわけではないように、ストレスレベルを測定するだけでは不十分です。

メンタルヘルス対策をしていると言っていても、実際にはストレスチェックを行っているだけのこともあります。こうした中、米国では以前から多くの企業でカウンセリングサービスが利用されています。

日本では、そもそもカウンセリングがメンタルヘルスのソリューションであることを知らなかったり、専門医の目線からは品質に疑問を抱いてしまうようなサービスを導入していたりすることが多いのが実態です。メンタルヘルスの取り組みについて、日本は米国と比較して30年は遅れていると言えるのかもしれません。

スタートアップスカウト

―― メンタルヘルスに関する米国の現状や取り組みについて教えてください。

2022年の米国では、精神科医療やカウンセリングサービスを受けている人は、国民の12.6%というデータがあります。加えて全体の医療費の内、精神科医療が占める割合は、米国も日本も約6.2%です。医療で可能な範囲のメンタルヘルスケアは、日本も米国と同様にカバーしているという見方ができます。

大きく異なるのは、カウンセリングサービスの普及具合です。米国では、カウンセリングサービスを提供する企業が約12000社あるといわれており、年間3億数千万回ものカウンセリングが実施されています。

米国での従業員向けカウンセリングサービスの普及のきっかけは、アルコール依存症への対応が背景にあります。社員がアルコール依存症に苦しみ、パフォーマンスの低下や離職につながることを防ぐために、1960年代ごろから従業員向けカウンセリングサービスの導入が始まり、その後幅広く労働者のストレスを緩和するような支援が普及していきました。

働く人がストレスを感じる要因は、実は職場外の方が多い傾向にあります。また、職場でのストレスも社内では相談しにくいのも、多くの人が感じられている通りです。メンタルヘルスの課題を軽減し、社内でのパフォーマンスを向上させるためにも、職場外のカウンセラーに相談できるサービスは非常に合理的です。従業員数が500名以上の米国企業におけるカウンセリングサービスの導入率は84%、100名以上の企業でも70%と、ほとんどの企業で利用されています。

メンタルヘルスをより身近に

―― 資金調達の背景や使途について教えてください。

これまで、150社を超える企業や団体に当社サービスをご導入いただきました。今後さらにビジネスを拡大し、日本のメンタルヘルスに対してインパクトを与えるべく、サービスの普及とカウンセリングチームの強化・品質向上を大きな目的としています。

また、誰かがメンタルの課題を抱えた際は、マイシェルパが第一想起されるようにしていきたいと考えています。マーケティングを強化することで、信頼できるプラットフォームとしての認知を獲得していきます。そのためにサービスの使い勝手など、ユーザーの利便性向上にも取り組む予定です。

加えて、People Tech事業(人の可能性を拡げる事業)を創造するアトラエとの資本業務提携も発表しました。アトラエのサービスとマイシェルパを組み合わせることで、従業員のメンタルヘルス不調の予防や改善の実現に取り組んでいきます。

―― 今後の長期的な展望を教えてください。

今後1年から2年の間では成長のスピードを高めながら、足元のサービス導入法人数を現在の数倍まで引き上げていくことが目標です。また、当社サービスを通じたカウンセリング数として、年間100万回の達成を一つの指標として重視しています。

日本において、メンタルヘルスの課題はすでに顕在化している大きな問題です。にもかかわらず、残念ながら何か精神に異常を感じた際、カウンセリングという手段はまだ第一の手段として想起されていません。専門家のサポートを受けることが恥ずかしいという価値観もまだまだ根付いています。

米国では、約12000社のカウンセリングサービスによってメンタルヘルスケアが行われています。日本に置き換えれば、数千社の事業者が存在することになります。それほど大規模にメンタルヘルスの取り組みを進めるには、まずは品質の高いカウンセリングを提供する事業者が国内で数十社は必要です。当社が主導し、他の企業も巻き込みながら、誰もが気軽にメンタルヘルスに関する課題を相談できるような世の中を作っていきたいと思います。

株式会社マイシェルパ

株式会社マイシェルパは、メンタルヘルスの悩みに対応する法人向けサービスおよび個人向けサービスを運営している企業。 法人向けサービスでは、Webでのストレスチェック、産業医・顧問医紹介、従業員の健康増進支援のための研修やセミナーを実施。 個人向けサービスでは、医師・公認心理師・臨床心理士によるオンライン・対面によるカウンセリングが受けられる。

代表者名松本良平
設立日2016年7月1日
住所大阪府大阪市中央区高麗橋4丁目5番12号
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