広がるメンタルヘルスの需要
不安やうつなどメンタルヘルスに悩む人が増えている。厚生労働省※によると、精神疾患の総患者数は2000年代は200万人台だったが、2017年には419万人に増えた。OECD各国ではうつ状態の人の割合はコロナ前と比べて2~3倍に増えた※。
メンタルヘルスの改善・治療は、個人だけでなく企業の人材活用の面でも重要な課題になっている。調査統計サイト「statista」※によると、世界のメンタルヘルス市場は2023年に200憶9000万ドル(約2兆6000億円)と、3年前から7%増える見込み。AIやデータ分析を生かしたツールやサービスが続々誕生している。
スタートアップ5選
この領域の上場企業としては株式会社アドバンテッジリスクマネジメントが挙げられるが、今回は未上場のスタートアップ5社を紹介する。
株式会社マイシェルパ
オンラインで気軽にカウンセリングを受けられるサービス「マイシェルパ」を展開する。精神科専門医の監督のもと、臨床心理士や公認心理士などの資格を持つカウンセラーが相談者の悩みに答える。法人向けには従業員のストレスチェックや研修・セミナーの開催、メンタルヘルスの法務相談などを提供する。
CEOの松本良平氏は自身が経営するクリニックで診療を続ける現役の精神科医。2022年には福島県磐梯町と協定を結び、町民へのマイシェルパの提供を始めた。
株式会社マイシェルパ
設立:
2016年
企業HP:
株式会社Awarefy
心をケアするスキルが身につくアプリ「Awarefy」 を開発・運営する。「うつ気分に備える」「ぐっすり眠れる」などのスキルを学べ、マインドフルネス瞑想の音声ガイドや感情の見える化などの機能も備える。2022年にはGoogle選考によるベストアプリ「隠れた名作部門」で大賞を受賞した。
2023年2月には認知行動療法のメディア「コグラボ」を開設した。心理学の専門家インタビューなどで分かりやすく理解・実践できるコンテンツをそろえている。
株式会社Awarefy
設立:
2018年
企業HP:
emol株式会社
感情を記録してAIロボと対話するアプリ「emol」などを開発する。AI に日々の悩みや愚痴を話し、自分の感情と向き合うことで心をケアする気づきを得る。法人向けの従業員のメンタルセルフケアアプリや、産前・産後のメンタルヘルスケアアプリも手掛ける。
2023年1月、「みずほライフサイエンス」などを引受先とする第三者割当増資による資金調達を発表した。大学との共同研究により、強迫症の患者向けのアプリ開発を進める。
株式会社emol
設立:
2019年
企業HP:
株式会社Plusbase
LINEでゆるキャラに相談できる看護師特化型のメンタルヘルスサービスを展開する。アプリのダウンロードが不要で、公式ラインに無料登録するだけで相談できる。より深い悩み事があれば、オンラインで心理士や看護師に相談できる。
創業者の一人、Wim. サクラ氏は名古屋生まれのスリランカ人女性。看護師になったが心と体のバランスを崩して休職したことが起業のきっかけ。今後はマイクロソフトのスタートアップ支援を受け、AIチャットプログラムを構築する。
株式会社Plusbase
設立:
2022年
企業HP:
Flora株式会社
月経・妊活アプリを開発・運営する。アルゴリズムによる月経管理や体温記録、レポートなどの機能を持つ。メンタルや体の不調を含め、総合的な女性のセルフケアをサポートする。
法人向けにはSNSフォローへの調査・PRなどで女性向けプロダクト開発を支援する。女性従業員向けの健康サポートも手掛ける。
CEOのクレシェンコ・アンナ氏は従姉妹が妊娠中にうつ病になり、流産したことで起業を決意した。ウクライナの大学を卒業後、京都大学大学院を経て日本で創業した。
Flora株式会社
設立:
2020年
企業HP:
おわりに
今回紹介した企業は、個人・法人向けに多彩なサービスを展開している。女性や外国人の経営者が多いこともメンタルヘルス業界の特徴。今後も、関連のスタートアップの動向にさらに注目が集まりそうだ。
==========
参考:
厚生労働省「精神疾患を有する総患者数の推移」
OECD「Tackling the mental health impact of the COVID-19 crisis: An integrated, whole-of-society response」
statista「Mental Health - Worldwide」