精神疾患の経済損失は11.2兆円
不安やうつなどメンタルヘルスに悩む人が増えている。精神疾患を有する総患者数は、258万人(2002年)から419万人(2017年)と15年間で約1.6倍。うつ症状を有する日本人の割合はコロナ前の7.9%(2013年)から17.3%(2020年)と2.2倍に増加している。
精神疾患は長期の入院や療養が必要で、経済損失は年間11.2兆円、労働損失や社会的負担も大きい。メンタルヘルスのケアは、日本社会にとって重要な社会課題の1つといえる。
メンタルヘルス市場は2030年には5399億7000万米ドルの売上高に達すると推定されており、ChatGPTや音声を活用したソリューションが注目されている。※
今回は、そんなメンタルヘルスの改善に取り組むスタートアップを紹介する。
スタートアップ5選
株式会社マイシェルパ
オンラインで気軽にカウンセリングを受けられるサービス「マイシェルパ」を展開する。精神科専門医の監督のもと、臨床心理士や公認心理士などの資格を持つカウンセラーが相談者の悩みに答える。法人向けには従業員のストレスチェックや研修・セミナーの開催、メンタルヘルスの法務相談などを提供する。
CEOの松本良平氏は自身が経営するクリニックで診療を続ける現役の精神科医。2024年1月に能登半島地震の被災者支援としてオンラインカウンセリングを無料で提供。2024年6月には導入実績が300社を突破した。
株式会社Awarefy
心をケアするスキルが身につくアプリ「Awarefy」 を開発・運営する。「うつ気分に備える」「ぐっすり眠れる」などのスキルを学べ、マインドフルネス瞑想の音声ガイドや感情の見える化などの機能も備える。2024年4月には累計50万ダウンロードを突破した。
2023年8月には、シリーズAラウンドにてANRI、epiST Ventures、オールアバウトなどを引受先とした第三者割当増資による、2.2億円の資金調達を実施し、生成AIの長期記憶システムやコーチング機能の拡充などを行った。
Flora株式会社
企業HP:https://main.flora-tech.jp/ja
月経・妊活アプリを開発・運営する。アルゴリズムによる月経管理や体温記録、レポートなどの機能を持つ。メンタルや体の不調を含め、総合的な女性のセルフケアをサポートする。
法人向けにはSNSフォローへの調査・PRなどで女性向けプロダクト開発を支援する。女性従業員向けの健康サポートも手掛ける。
2023年3月に女性の健康課題に特化したチャットアシスタント「Flora AI」を発表。2023年12月には、シリーズAラウンドにてフェニクシー、豊田通商、SBIネオファイナンシャルサービシーズを引受先とした第三者割当増資と、みずほ銀行からの融資による累計1.5億円の資金調達を実施した。
emol株式会社
企業HP:https://emol.jp/
感情を記録してAIロボと対話するアプリ「emol」などを開発する。AI に日々の悩みや愚痴を話し、自分の感情と向き合うことで心をケアする気づきを得る。法人向けの従業員のメンタルセルフケアアプリや、産前・産後のメンタルヘルスケアアプリも手掛ける。
2023年1月、「みずほライフサイエンス」などを引受先とする第三者割当増資による資金調達を発表した。2024年7月に強迫症と社交不安症の疾患啓発を目的とした無料アプリ「フアシル」をリリースした。
株式会社Plusbase
企業HP:https://plusbase.studio.site/
LINEでゆるキャラに相談できる看護師特化型のメンタルヘルスサービス「ナースビー」を展開する。アプリのダウンロードが不要で、公式ラインに無料登録するだけで相談できる。より深い悩み事があれば、オンラインで心理士や看護師に相談できる。
創業者の一人、Wim. サクラ氏は名古屋生まれのスリランカ人女性。看護師になったが心と体のバランスを崩して休職したことが起業のきっかけ。2023年5月に株式会社ispecと共同開発したChatGPTを活用した新機能「AIねこぴー」を発表した。2024年1月には医療法人原会と業務提携を実施した。
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※三菱UFJリサーチ&コンサルティング「メンタルヘルス tech最前線」