株式会社EEFULホールディングス

介護事業所のM&Aと統合後の経営改善を主軸に事業を展開する株式会社EEFULホールディングスは、グロービス・キャピタル・パートナーズ、Dual Bridge Capital、Identity Academy(Future Identity Capital)の計3社を引受先とし、総額4.1億円のプレシリーズA資金調達を実施した。調達資金は今後のM&A推進や経営体制の強化、AX(AIトランスフォーメーション)基盤の構築に充てる。
同社は在宅介護事業の運営と介護事業者向けクラウドサービスの提供、高齢者向け生活支援事業を展開しており、グループ全体で約350名の従業員を抱える。これまで、ハイレイヤー向けのデイサービス事業を展開するwellsui等、介護事業者のM&Aを実施し、経営改善を行ってきた。そのほか、介護事業所向けポータルサイト「EEFUL DB」や介護レクリエーション動画配信サービス「シニアカレッジ」を運営する。
代表取締役の森山穂貴氏は2002年生まれ。東京大学社会心理学研究室に在籍しながら2023年に同社(当時:株式会社emome)を創業した。2025年2月に開催されたICC FUKUOKA 2025 STARTUP CATAPULTでは優勝を果たし、同年11月には『未来をつくる介護』(クロスメディア・パブリッシング)を出版している。
起業の動機について同氏は、「幼少期を海外で過ごし、日本に帰ってきた時に、周りと自分とでは"未来"の捉え方に大きな差があると感じた。少しでもポジティブな未来から今を逆算して捉えられるような社会にしたいという思いから、帰国して東大に入り、在学中に会社を創業した」と語る。また実家が介護事業所を経営していることもあり、「(その介護事業所の)現場に入ったことがきっかけで、この産業で果たすべき役割があると感じた」という。
日本の介護需要は高齢化とともに拡大を続ける一方、東京商工リサーチの調査によれば2025年の介護事業者の休廃業・解散件数は653件と過去最多を記録。倒産企業の約8割を従業員10人未満の小規模事業者が占め、後継者不在や人手不足を背景とした廃業が増加しており、需要拡大と事業者退出が同時に進む構造的なねじれが生じている。
森山氏はその本質を介護業界の「経営力の不足」に見ており、技術・組織・財務・事業開発という4つの経営機能を多くの小規模事業者が十分に備えていないことが根本要因だと指摘する。「現場のサービス品質は高くても、多くの小規模事業者は組織運営や収益管理の経営基盤が整備されていない。介護業界に事業開発という概念があまりなく、サービスを少しでも安く提供することが美徳とされていることも要因としてあると思う。我々は介護事業所を承継し、経営品質を高めることでインフラとしての持続可能性を高めるという取り組みをしている」と説明する。
今回の調達資金は主に3つの用途に充てられる。
まずM&Aの加速だ。承継ニーズのある介護事業所の買収を推進する。「業績が思うように上がらないが、地域インフラとしての基盤が整っている事業所など、ポテンシャルはあるが満足のいく経営ができていない状態の事業所を再生していくことが自分たちの得意なところ」と森山氏は述べる。
次にPMI(統合後経営)の強化だ。業務・組織・収益構造の可視化、役割と責任の明確化、予算管理サイクルの整備を通じ、属人性を排した組織運営への移行を進める。
そしてM&A執行、コーポレートガバナンス、AX推進等を担う経営人材の採用強化と、介護現場における評価・人事制度の整備などを進め、組織体制を強化する。
これら3本柱を支えるため、同社はAX基盤の構築も並行して進めている。同社が完全内製化しているCRMでは、すでに利用者のケア上の注意事項等をスタッフ間で一元共有できる仕組みを構築しており、社内チャットから各種システムに横断アクセスできる機能も開発中だ。AIの現場活用について「介護業界ではSaaSの導入が進まなかった一方で、生成AIへの移行は比較的スムーズだった。直感的に対話できるAIは、デジタルに不慣れなスタッフにとってもバリアフリーな環境になっている」と森山氏は話す。M&Aで統合した事業所にこれらのシステムを展開し、グループ全体のAXを推進する計画だ。

森山氏は今回の調達について、「エクイティでの調達は是非がわかれる状況だが、非連続なアクションのためには、将来的にデット調達も視野に入れた財務基盤の整備が必要だった。そのため、今回はまずエクイティで資本を厚くし、バランスシートを整えた」と説明する。
同社は今後、介護保険外のサービス領域にも事業を広げる構えだ。今年中に、75〜85歳のアクティブシニアを対象としたサロンの展開を開始する見込み。この年齢層は介護保険の使用率が10〜15%程度にとどまる一方、大半がリタイア済みで生活コンテンツが最も不足している層だと森山氏は捉えており、他のシニアと交流できるカフェテリアとフィットネス・カルチャープログラムを組み合わせた空間を提供する構想だ。
こうした事業展開は、同社がCCRCC(Continuing Care Retirement Communal City)と呼ぶ中長期構想の一環でもある。

同社はCCRCCを「持続的なケア」「アクティブなコミュニティ」「生活支援サービス」の3つの側面で構成されるものと位置づけている。在宅介護などの既存事業で「持続的なケア」をカバーし、アクティブシニア向けサロンで「アクティブなコミュニティ」を担う方針だ。不動産支援や家族信託といった「生活支援サービス」については、専門プレイヤーには及ばないとして外部パートナーとの連携を軸に取り組む考えを示している。
「(日本では世界に先行して高齢化が進んでいることもあり)日本の質の高い介護産業は海外からの注目度が高い。一方で、デジタル対応やマネーフローの観点でまだ世界に誇れる水準にはない。2040年には中国の高齢化率が日本を抜き、介護へのフィジカルAIの活用においては先を越される可能性が高い。今後10年が勝負で、"日本の介護モデルは世界の先を行っている"と言えるような産業にしていきたい」と、森山氏は意気込む。










