Arrowsmithが3億円調達、耐性菌感染症に挑むファージ治療薬の開発を加速


創薬領域で活動するスタートアップ、株式会社applause Pharmaが、シードラウンドで第三者割当増資による7000万円の資金調達を実施した。引受先はUntroD Capital Japanのリアルテックファンド、およびASTRANS。バイオテクノロジー分野の資金調達環境が変化する中、大学発スタートアップによる新たな創薬アプローチに対して、ファンドが積極的に関与する動きが見られる。
applause Pharmaは、2021年5月に設立された企業である。医薬品原薬の研究開発、特に希少金属であるレアアースに注目している。創業者である川口恒隆氏らの長年にわたる基礎研究から、特定のレアアース化合物が酸化ストレスによる損傷に起因する疾患の治療や予防に有効な機能を持つことが明らかとなった。その応用先として、腎症など複数の疾患を対象に薬剤開発を進めている。
バイオ創薬業界では、米国を中心とした大規模バイオベンチャーの成長や、欧州・中国企業のグローバル展開が進行している。日本国内でも、アカデミア発のスタートアップが増加傾向にあり、研究成果の実用化を目指す動きが活発化している。特に腎疾患分野では、慢性腎臓病(CKD)患者が国内で1300万人以上存在すると推計されており、その進行による人工透析費用は多額であり、社会的負担が大きい。既存治療薬の限界や、透析依存からの脱却を目指した新規治療法の開発は、国内外で重要な課題となっている。
創薬ベンチャーによる新規モダリティ(従来と異なる作用機序を持つ医薬品)の実現には、長期間にわたる多額の研究開発投資と、アカデミアと産業界の連携が不可欠である。applause Pharmaは、無機化合物かつレアアースという独自の素材選定と、その実用化を目指す点で、既存のバイオ医薬品ベンチャーとの差別化を図っている。このような研究開発活動では、基礎科学に基づく実証と、臨床試験に至るまでの各段階で継続的な資金調達が重要視される。今回のシード資金は、非臨床試験推進のための基盤形成を目的としている。
資金調達の詳細としては、第三者割当増資による7000万円の調達であり、主な使途は腎疾患を対象としたパイプラインの非臨床(前臨床)試験の推進である。非臨床試験では、動物や細胞を用いて薬剤の安全性や有効性を評価し、臨床(ヒト試験)への移行には規制当局の認可が必要となる。
国内のバイオ市場では、バイオ医薬品や再生医療製品を手がけるスタートアップの新規設立が進む一方、初期段階での資金調達や、大企業・大学などとの連携体制構築には依然として課題が多い。腎疾患領域に関しては、大手製薬企業による研究開発も進行中だが、酸化ストレスや希土類元素の活用といったアプローチは現時点で競合が限定的である。applause Pharmaがこの領域でどのようにポジションを確立していくかは、今後の事業展開において重要なポイントとなる。また、バイオシミラー(後発バイオ医薬品)の導入がグローバルに進行しているため、独自技術の知的財産戦略も事業展開上不可欠である。
applause Pharmaは、学術的知見に基づく独自素材を活用した治療薬開発に取り組み、今回の資金調達によって腎疾患向け創薬パイプラインの非臨床試験を進める計画である。今後は、臨床試験段階への進展や追加資金の調達、競合との差別化、知的財産戦略の強化が求められる。バイオ創薬市場全体の資金調達状況や規制環境の動向も踏まえ、研究開発の進捗が業界内外から注視されている。
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